02
瓦をふきながら、仕事現場につくまでに見かけた張り紙を思い出す。電柱に貼っていたもので、「白髪の侍へ!!てめェコノヤロー すぐに真選組屯所に出頭してこいコラ!一族根絶やしにすんぞ 真選組」と書かれていた。銀時も白髪と言えるので気になるが、桂との一件以来警察のお世話になるようなことはしていない。自分ではないだろう。もし呼び出されてるのが自分でも孤児なため、一族根絶やしにされようがないので構わない。しかし嫌な予感はする。銀時のトラブル予兆器官が何かを知らせている。
そんなことを考えて気がそぞろになっていたに違いない。資材が屋根を転がり落ちていった。下には若い男がいる。

「おーい兄ちゃん、危ないよ」
「うぉわァアアアァ!!」

ギリギリで男は気付き、資材は男の足元に落ちた。怪我の有無を確認するため、梯子を伝い下へおりる。

「あっ……危ねーだろーがァァ!!」
「だから危ねーっつったろー」
「もっとテンションあげて言えや!わかるか!!」
「うるせーな。他人からテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」

一応謝るつもりでヘルメットをとると、「あ"あ"あ"あ"あ"!!」と叫ばれた。テンションの高い男だ。

「てめーは……池田屋の時の……そぉか、そういやてめーも銀髪だったな」
「……えーと、君誰?」

二人連れの男で、特に見覚えはない。もしや新手のナンパか勧誘か。怪我もしてないみたいだし、ここは知らない振りをしよう。

「あ……もしかして大串君か?アララすっかり立派になっちゃって。なに?まだあの金魚デカくなってんの?」
「オーイ!!銀さん早くこっち頼むって」
「はいよ。じゃ、多串くん俺仕事だから」

タイミングよく親方に呼ばれ、屋根の上へと戻る。続きの場所へ金槌を落とすと、ダメ出しされた。

「バカヤロー。金槌はもっと魂こめて打つんだよ」
「魂……魂ねぇ……?」

素人同然なのだから、魂と言われてもわからない。魂こめるって何?力入れるだけじゃ駄目なの?真剣に見つめたら魂こもんないの?ハゲるくらい念こめたらいいの?

「器用なんだからやりゃ出来んだろ。そこ、ちゃんとやっとけよ」
「オメーもな、ハゲ」

魂はこもってないが及第点を貰えたらしい。親方は違う場所の修理に行った。

「爆弾処理の次は屋根の修理か?節操のねェ野郎だ。一体何がしてーんだてめェは」

何って、種類多岐に渡るのが万事屋の仕事だ。爆弾処理はさすがに引き受けはしないが。しかし最近爆弾処理った記憶がある。

「爆弾?あ……お前あん時の」
「やっと思い出したか」

多串くんは爆弾処理事件の時の瞳孔カッ開き男だったらしい。名前は土方だった気がする。屋根の上なんて関係者以外立ち入り禁止の場所へ何しに来たのか。

「あれ以来どうにもお前のことがひっかかってた。あんな無茶する奴ァ、真選組にもいないんでね。近藤さんを負かすなんざ信じられなかったが、てめーならありえない話でもねェ」
「近藤さん?」
「女とり合った仲なんだろ。そんなにイイ女なのか?俺にも紹介してくれよ」
「お前あのゴリラの知り合いかよ」

土方は刀を一振り投げてきた。反射的に受けとる。
女をとり合う、と言われると昨日の出来事だろう。ゴリラが直接文句を言いには来なかったが、その知り合いが来るなんて予想していなかった。

「……にしても何の真似だこりゃ……、!!」

土方は手元の刀を素早く鞘から抜き、いきなり切りかかって来た。咄嗟に預けられた刀で鞘のまま受ける。姿勢も心構えも緩んだ状態で受けきれるはずもなく、後ろへ吹っ飛ばされる。

「ぬをっ!……あだっ!あだっ!あだっ!」

肩やら頭やらぶつけながら転がり、三回転ほどして止まった。何が何だがわからないが、やり合うには足場が悪い。しかし今は地下足袋を履いているので、革靴の土方よりマシだろう。

「何しやがんだてめェ」
「ゴリラだろーがなァ、真選組にとっちゃ大事な大将なんだよ。剣一本で一緒に真選組つくりあげてきた、俺の戦友なんだよ。
誰にも俺達の真選組は汚させねェ。その道を遮るものがあるならば剣で……叩き斬るのみよォォ!!」

土方の刀が、瓦を砕いた。砂煙が立ち、視界を狭める。
思う所はいくつかあるが、まずはその刀を止める。

「刃物プラプラふり回すんじゃねェェ!!」

銀時は土方の側頭部に蹴りを入れる。土方は体勢を崩し転がるが、下から刀を振り上げた。蹴りの体勢で宙に浮いた銀時は避けることが出来ない。辛うじて体を捻り、傷を浅くする。刀は左肩を切り裂いた。着地は上手くいかず、派手な音を立てて屋根に落ちる。

「銀さーん!てめっ、遊んでたらギャラ払わねーぞ!」
「うるせェハゲェェェ!!不審者だよ!退治すっからちょっと待ってろ!」
「不審者じゃなくて警察だよ」
「ああそういえば。……世も末だなオイ」
「ククク、そーだな」

切られた肩を押さえ立ち上がる。作業着がどんどん血に染まっていくので、長さは足りないがないよりはマシだろうと手拭いを巻いて止血する。やはり圧迫しきれないので、気休めだ。


prevnext

Back
bookmark
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -