02
どちらから逃げようかと前後の確認をすると、前から来たいかにもなオッサンと目が合った。

「おっ、いたぞォォ。こっちだァァ!!」
「ああもう、完全に巻き込まれたよ……」

銀時はトラブルに好かれる人間なので、こういう時の対処法は心得ている。諦めてさっさと解決するべし。スクーターを放置して走り出した。

「ちょっ、なんなの!?アイツら。ロリコンヤクザ?」
「何?ポリゴン?」

ポリゴンヤクザなら可愛げもあるが、生憎三次元に生きるオッサンである。銀時は追っ手の足を緩めるため、脇にあったゴミ箱を蹴倒す。ゴミ箱は先頭のオッサンの膝に当たり、中身をオッサンの顔目掛けて吐き出した。ざまーみろ。

「私……江戸に来たらマネーつかめる聞いて遠い星からはるばる出稼ぎきたヨ。私のウチめっさビンボー。三食ふりかけご飯。せめて三食卵かけご飯食べたいアル」
「いや、あんま変わんないんじゃ」
「そんなとき奴ら誘われた『ウチで働いてくれたら三食鮭茶漬け食べれるよ』って。私それ聞いてとびついたネ」
「なんでだよ。せめて三食バラバラのもの食べようよ」

次のゴミ捨て場に辿り着き、銀時はゴミ箱を一つ空にする。子供二人をゴミ袋の間に隠れさせ、自分はゴミ箱の中に入った。

「私地球人に比べてちょっぴ頑丈。奴らの喧嘩ひき受けた。鮭茶漬け毎日サラサラ幸せだたヨ。でも最近仕事内容エスカレータ」
「いやエスカレートね」
「人のキンタマまでとってこい言われるようなったアル」
「いやキンタマじゃなくて命ね。命」
「私もう嫌だヨ。江戸とても恐い所。故郷帰りたい」

人が通りすぎて行ったのを確認し、静かになったところでゴミ箱から出る。空のゴミ箱でも湿気て生臭かった。

「バカだなオメー。この国じゃよォ、パンチパーマの奴と赤い服を着た女の言うことは信じちゃダメよ」

通りの確認をし、辺りに人がいないのを見ると二人に背を向ける。少しの間新八に任せても大丈夫だろう。

「まァ、てめーで入り込んだ世界だ。てめーでおとし前つけるこったな」
「オイ、ちょっと!」

新八の呼び止める声を無視して歩き出す。まずはスクーターを取りに戻る。次にまだ近くにいるであろうパンチパーマのオッサン達を探す。通り二つほど過ぎたところで発見し後をつけると、団子屋の前に出た。店先で一人のパンチパーマが団子を食べている。

「ちょっとちょっと、これは銀さんに団子を食べるべしというお告げか」

団子の誘惑にふらっとしたが、団子屋の看板を見て考えを改める。あれは甘すぎると評判の甘味処だ。銀時の口には合わない。甘味をよくくれる奴が甘さ控えめの風味良く上品でお高いものばかり寄越して来たので、銀時の口はそれが馴染み甘いだけのものはあまり美味いと感じない。あそこの甘味処を選ぶ辺り、あのパンチパーマは相当の甘党だ。

「バカですかァァお前ら!娘っこ一人連れ戻すのに何手こずってんの!?それでも極道かバカヤロォォ!それでもパンチパーマなのかコノヤロー!」

どうでもいいことかもしれないが、天パな銀時はパンチパーマにする人の気持ちが理解出来ない。何故わざわざチリチリにするのか。天パが敢えて天パを誤魔化すためパンチパーマにするのだろうか。それとも直毛に対する反抗期か。

「しかし兄貴ィ。相手はあの夜兎族ですぜ。俺らが束になったってどーにも……」
「バカですかァお前は!」

口答えしたパンチパーマがドン・パンチパーマ・アフロに殴られ、他の者がこれ以上暴れられないようドンを羽交い締めにする。

「だからこそだろーが!あの怪物娘、うまいこと使えば我ら班池組は天下とれっかもしれないんだぞ!?奴らの種族はもう絶滅しかけてんだ。どれだけ希少価値があると思ってる」

(馬鹿はお前だろ。そんな戦力を従えるだけの器量がてめーにあると思ってんのか。下剋上されてしめーだろうよ)

夜兎がどれほど強いと言われているかは知っている。最強最悪だと言われ、驚異的な戦闘力を持つ戦闘民族らしい。戦ったことはないためどれほどの戦力かはわからないが、パンチパーマ畑からパンチパーマを抜けるだけ抜き、畑を荒らすだけ荒らして終了だろう。三食鮭茶漬けごときで飼い慣らせていたことが幸運だ。

「こっちの手に戻ってこねーようならよォ、もう構わねェ。殺せ。アレが他の組織に渡りゃとんでもねェ脅威になる。利用価値のねェ大きな道具は処分した方がいい」

話はまとまりターミナルへ向かう電車に乗るだろうと当たりをつけ、駅に向かうことにしたようだ。車を回すのを見て、銀時も駅へ向かう。途中でコンビニを見掛け、ついでなのでジャンプを買い遅くなった。改札を通る暇があるかわからないので、踏切から線路に入り駅を目指す。銀時の前に電車が見え、その前に線路に落ちたゴミ箱……に詰まった新八と神楽を見つけてスピードを上げる。

「ったく手間かけさせんじゃねーよ」
「銀さん!!」
「歯ァくいしばれっ!」
「え!?ちょっ……待ってェェ!!」
「てめーら、電車止めたらいくら賠償金かかると思ってんだァァアア!!」

待てと言われて待つ暇があるわけない。木刀でゴミ箱を掬うようにして上へ打ち上げる。銀時はそのままスクーターを走らせ駅を抜けると、横に逸れて止まった。

「っつー……痛ェ」

全力で振るった筋肉が痛い。右腕を揉みつつ駅へ戻ると、神楽が事態を収束させていた。倒れている新八を引きずりベンチに座らせ、銀時もその隣に腰を下ろす。神楽は気絶したドン・パンチパーマ・アフロを前のベンチに座らせると、ドン・ハゲ・不毛へと変身させていた。何気に後頭部に顔らしきものを表してるっぽい毛が残っている。

「助けにくるならハナから付いてくればいいのに。わけのわからない奴ネ……シャイボーイか?」
「いや、ジャンプ買いに行くついでに気になったからよ。死ななくてよかったね〜」
「僕らの命は二百二十円にも及ばないんですか」

正直言って、今一番気になるのはスクーターに積んだままのすき焼きの材料が腐ってないかだ。
ターミナルへ向かう電車がホームに入って来た。

「おっ、電車きたぜ。早く行け。そして二度と戻ってくるな災厄娘」
「うん。そうしたいのはやまやまアルが、よくよく考えたら故郷に帰るためのお金もってないネ。だからも少し地球残って金ためたいアル。ということでお前の所でバイトさせてくれアル」

ここが銀魂の世界で、彼女が銀魂のヒロインという時点で簡単にはいかないとわかっていた。けど一応抵抗はしてみる。

「冗談じゃねーよ。なんでお前みたいなバイオレンスな小娘を……」

ドゴッと、本当に素手なのか疑いたくなる音をたてて拳が銀時と新八の間に叩きつけられる。蜘蛛の巣のように壁にヒビが広がる。

「なんか言ったアルか?」
「言ってません」

それ以外何を言えばいいのか。本気で拒否しようと思えば出来るだろうが、そこまでして中学生くらいの少女を見捨てるのも心が痛い気がする。雇うとなると新八と違い住み込みになるだろう。一つ屋根の下に年の差はあれど男女が共に住むのはどうかと思うが、まあ少女一人くらい面倒見れるだろう。……そう、思っていた時期もありました。




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