罪のない嘘
さよならを、しよう
口に出すまでは緊張していたけれど、言ってしまえばそれはすらすらと口から出ていった。
「俺のこと、嫌いになったのか?」
領の声は、聞いてて心地良い。
優しく、でも音を立てて入ってきて弾けて消えていく。
でも今回は、ゆっくりと静かに僕の中に落ちてきた。
「…嫌いじゃないよ、」
ただ好きでもなくなっただけ。
そう言うと、領は少し顔を俯かせた。
領は、僕と違って僕がいなくても大丈夫だし、逆に僕が領のそばにいると領のこれから先の色んな可能性をつぶしてしまうから。
嘘の罪は、相手を傷つけてしまうこと。
でもこの嘘は、これ以上、領を傷つけないための嘘だから。
「…そっか」
そういって、笑った領の顔は、今にも泣きそうだった。
(この嘘に、ほんとに罪はなかったのかな、領)
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