「もしもし?僕だけどわかるかな?」
『わかるよー、周君でしょ?どうしたの?』


部活から帰って夕食も済ませた夜9時頃、登録されたばかりの番号に電話をかけた。


「報告があってね」
『ん?ってことはせー君関係?』
「ふふ、正解。今度の土曜日に立海との練習試合が決まったよ」


僕の報告に、彼女はうわ、と声を漏らした後クスクスと笑った。


『せー君行動早すぎ。報告したの今日なのにね』
「僕も笑っちゃったよ。それだけ君のことが好きなんだね」


笑いながらそう言うと彼女は笑いながら、子供だよね、と呟いた。

あの幸村をそんな風に言えるのは君くらいだよ。


「試合、見に来る?」
『邪魔じゃない?』


別に彼女は練習の邪魔をするようなタイプじゃないと思うけどな。そう思っていると、また声が聞こえてきた。


『私ただの部外者でしょ?個人的には面白そうだけど、私が楽しむために練習がスムーズにいかなかったら嫌だし』


ああ、そういうことか。本当に自分の立場を弁えて行動できる子だよね。


「心配ないんじゃない?この練習試合だって幸村の私怨のみで決まったようなものだし」
『あ、そっか。純粋な練習試合じゃないんだね』
「それに、僕も個人的な楽しみのために手塚にお願いしちゃったんだよね」


僕の言葉に疑問の声を出した彼女にふふ、と笑って口を開く。


「練習試合のオーダー、幸村と試合させてもらうんだ」


一瞬黙り込んだ彼女はすぐに笑い声を零した。


『何それ、すっごく楽しそう!』
「でしょ?それに僕がそういう理由で楽しんでいることはみんな知ってるから君が来ても構わないと思うよ」
『あはは、周君流石!じゃあお邪魔しちゃおっかな』
「ふふ、楽しみだよ」


じゃあおやすみ、と電話を切ってベッドに横になる。

気をつかえて、距離感も弁えて、僕と同じ感覚で楽しいことが好き。

そんな子、滅多にいないよ。なんで幸村は彼女が立海にいるうちに自分のものにしなかったんだろう。

面白すぎて、本当に僕の物にしたくなるのも時間の問題かもしれないよ?





/