「のう参謀」
「なんだ?仁王、丸井」


放課後の部活中、こそこそと俺の元にやってきた2人の方へ顔を向けた。


「…最近幸村君機嫌悪くね?」
「ああ、恐らく…」


「ゆ、幸村…!」
「何だい真田、部活中に携帯なんて持ってふざけてんの?」
「ち、違うのだ。青学の不二がお前にと…!」
「…不二?」


幸村は眉を寄せながら弦一郎から携帯を受け取った。


「…もしもし」
『ああ、もしもし。幸村?僕青学の不二だけど』
「うん。わかるけど…どうしたんだい?」
『君に報告があってね。…っと、ちょっと待ってて?』


電話の向こうで何かが起こっているのだろう。無言で待っている幸村の表情は訝しいものだった。

気にはなるが練習を中断させる程のことではないと判断し、全員が練習を再開させようとした時のことだった。


「お前…っ!!何やってんの!?」


焦りや怒りが全て含まれたような叫び声に全員がぎょっとして幸村の方を向いた。


『もー、せー君うるさい』
「なんでお前が不二の電話で喋ってるわけ!?大体何も言わずにいなくなって、メールも電話も繋がらないってどういうことなんだよ!!」


電話の向こうの声は聞こえないが、幸村の言葉で大体のことは理解した。

最近の幸村の不機嫌さの原因が、青学不二の電話越しにいるらしい。


『だってせー君の番号もアドレスも消しちゃったし、携帯変えたから私の番号とかも変わったし』
「消し…っ!?なんで消す必要があるわけ!?」
『連絡いっぱいくるのが面倒だったんだもん。いいじゃん周君の携帯からこうやって連絡してるんだし』
「そういう問題じゃ…!!…周、君…?」


機嫌の悪さを隠すことのない幸村を観察していると、ぴたりと幸村が固まった。


『うん、報告ー。あのね、私周君の彼女になった』


右手に持っていたラケットがカランと音を立てて地面に落ち、左手に持っていた真田の携帯は握り締められすぎてミシミシと音を立てていた。

…真田が泣きそうだぞ、幸村。


はあ、と溜め息をついて俺は自分の携帯を弄る。
俺のデータが正しければ…


「柳!!青学と練習試合組めるよね!?」
「そう言うと思って今青学にメールしたところだ。多分実現は問題ないだろう」
「流石柳だよ。…ああもう、どうしてやろうか」


週末の練習は荒れそうだな。
最悪な空気の練習試合を予想して静かに溜め息をついた。




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