「不二君って、せー君に似てるけど似てないね」


隣に座る女の子から言われた一言に思わず首を傾げる。


「せー君って、幸村のこと?」
「うん」


にこにこしながらこちらを見つめるのは、最近立海から転校してきた幸村の幼なじみ。
テニス部の練習に一緒にいることが多かったからお互い存在は知っていた。


「どうしてそう思ったの?」
「綺麗なとこも、テニスが上手なとこも、腹黒そうなとこも似てるんだけど」


腹黒って。よく言われるけど、直球だなあ…。


「不二君は頭良いし、何考えてるのか読ませないでしょ?」
「…幸村こそそういうタイプに見えるんだけど?」


そう尋ねると、目の前の彼女は思いっきり笑いだした。


「せー君ほど単純な人もいないでしょ」
「…幸村を単純なんて言う人初めて見たよ」


そう言うと彼女はにやりと笑いながら口を開いた。


「子供みたいないたずら好きで、何かで負けたら機嫌悪くなって、自分の好きなものは一番近くに置いておきたくて、そういうの全部顔と言動に出ちゃう」


彼女の話を聞きながら、確かに…と思う。冷静に見えて、全部抱え込むタイプの僕と違い彼は全部表に出す。

考えていると、彼女はそれにね、と口を開いた。


「せー君私大好きでしょ」


あはは、と笑う彼女に思わず目を見開いた。
そして先程の彼女の言葉を思い出す。

“自分の好きなものは一番近くに置いておきたくて”


「…もしかして、わざと転校してきたの?」
「いや、引越しで立海に通うのが大変になったのはほんと。でもその中でせー君が嫉妬しそうな青学を選んだのはわざと。せー君いい加減私離れしないと、私に彼氏もできない」


にっこりと笑う彼女に、俺は思わず吹き出した。

幸村、君の幼なじみ面白すぎるよ。


「…じゃあさ、僕と協力してみない?」


僕と付き合ってみれば、君は彼氏ができるし幸村に君離れをさせるチャンスになる。僕は自分が楽しければそれでいい。


そう提案した瞬間、彼女の目が輝いた。

どうやらこれから、退屈することはなさそうだ。





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