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あれから1週間が経ったけど、名前も知らないあの人にお礼を言いたい気持ちだけが募るばかりで、会うことはなかった。

今日は真田に部活を任せて、柳と2人で他校との練習試合の打ち合わせに出かけていた。


「これで終わりだな。幸村、他に用事はないか?」
「えーっと、うん、大丈夫」
「では戻るか」
「うん。……っ、」


用事を済ませ、学校へ戻ろうとした時だった。
前方から近隣の女子中の生徒が集団でこちら側に歩いてくるのを見つけ、俺は固まった。


「…幸村、端に寄って俺の後ろにいれば問題ないだろう?」


溜め息をつきながら俺を隠してくれた柳に感謝と申し訳なさを感じつつ、集団が通り過ぎるのを待った。


(俺、だめだなあ…)


何かされるわけでもなく、ただ横を女の人が通るだけで固まってしまう。
誰にも害がないならいいけど、こうやって柳達に迷惑をかけてる。

自分が情けなくなって、普段なら完璧にすれ違うまで上げないのに、なぜか俯いていた顔を上げた。

その瞬間目に飛び込んできた光景に、自分でもどうしようもなく胸が高鳴るのがわかった。


「〜〜〜っ、」


思わず柳の袖をギュッと掴み、それに対して柳は首を傾げてこちらを振り返った。


「どうした?」
「………る、」
「なんだ?」
「い、る。彼女が、いるっ」


俺の訴えに柳は目を見開いて俺の視線の先を見た。

集団の一番後ろ。
1週間ずっとお礼が言いたかった彼女がそこにはいた。

一番後ろで携帯を弄りながら歩く彼女は、こちらに気付く様子もない。

どうしよう、と呟いた瞬間、柳が俺の腕を掴んで集団にずんずんと向かった。


「や、やな」
「すみません、失礼ですが少しいいですか?」


俺の声を遮って柳が言葉を発した。
それに反応するように、彼女はゆっくりと顔を上げた。


ああ、やっぱりあの時の彼女だ。