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「あー…昨日ぶりだね」
「は、い……」


(うーん…、気まずい)


昨日幸村君に会って、ひどいことを言ったのは十分理解している。

だからこそ気まずいし、喋りたいとも思わない。
多分向こうだってそうでしょ。


(大体あいつは何をやってるわけ?)


多少の苛立ちを感じながら幸村君を目に入れずに携帯を取り出す。
まず、なんで彼はここにいるんだろう?
気まずそうだし戸惑ってるし、嫌なら早く別の場所に行けばいいのに。


「……はあ?」


携帯の画面を見て思わず出た声に、視界の端にいる幸村君がビクッとなったのがわかる。

頭が痛くなるのを堪えながら幸村君の方を向くと、彼は涙目で目一杯俯いていた。


「……あのさ、幸村君」
「〜〜っ、は、いっ」
「君、もしかしてテニス部?」


私の疑問にパッと顔をあげて必死に頷く彼に、そっか。とだけ返す。


「悪いんだけどさ、テニスコートに案内してもらえないかな?」
「え?」
「私を呼び出した本人が抜けれなくなったって連絡がきたんだよね」
「よ、呼び…?知り合い、がいるんですか?」
「あー…、うん。お願いできる?」
「は、はいっ」



――――――――――


来たようじゃの。ほんとにあの幸村が女の隣を歩けるとはのう。


「…あれ、幸村君?」
「ってか、幸村部長が女の人といるッスよ!?」


異質な光景に目を丸くする部員達に思わず笑いがでる。


「なぜ、彼女が…?」


参謀が珍しく驚いた顔をした後、2人に近寄ろうと足を動かしたのが見えた。


(お前さんに先には行かせんぜよ)


「部活中にいなくなったと思ったら、どうしたんでしょう?……って、仁王君!?」


柳生の疑問の声を聞きながら、俺は走り出した。驚いた声とともに追いかけてくるのがわかる。


「仁王っ」


参謀の声と足音を聞く限り、レギュラー全員が疑問を持ちながらついてきているのがわかる。

………それでいいんじゃ。


「透っ」


幸村の隣に立つ女を思いっきり抱き寄せる。
幸村も、後ろについてきていたレギュラー達も、目を見開いて息を呑んだのがわかった。