回り出す  [ 7/17 ]


--柳side--

「仁王」
「お?なんじゃ参謀」


飄々と振り返る仁王に眉を寄せながら、俺は口を開いた。


「…お前は、彼女を知っているのか」
「なんのことじゃ?」
「真崎透を知っているのかと聞いている」


名前を出した瞬間に、一瞬だけ目が据わった仁王に若干驚きながらも視線を送り続けた。


「…さあの」
「仁王」
「参謀らしくなか。お前さんは、直接聞かんでも情報くらい集めれるじゃろ?こんな詐欺師に聞いたところで信憑性もなかろうに」
「……」


思わず黙ってしまった俺を見ながら、仁王は喉の奥を鳴らす独特な笑い方をしながら背中を向けた。


「一個だけ、教えちゃる」
「…なんだ?」
「調べんでもすぐにわかる」


にやり、と冷たい笑みを残して仁王は去って行った。



――――――――


「幸村」
「仁王、何?」
「お前さんに頼みがあるんじゃが」


仁王が俺に?珍しいな、と思いつつ仁王の側に寄る。


「知り合いに届け物を持ってきてもらうように頼んだんじゃが、急用で取りに行けんでのう。悪いんじゃが、代わりに預かってきてくれんか?」
「え?で、でも部活中だし…、部長がいないわけには」
「おまん以外はみんな試合中じゃろ?頼める奴がおらんのじゃ。校門に行ったらわかるから、頼んだぜよ」
「え、あっ、仁王!?」


返事を聞かずに去って行った仁王にため息をつきながら、仕方なく俺は校門に向かった。


(部長なのに、情けないなあ…)


そんなことを考えながら歩き着いた校門で辺りを見渡す。


(…行ったらわかる………って、え………?)


自分が目を見開いているのがわかる。身体が震える。


「………真崎さ、ん…?」


思わず発してしまった声に慌てて口を押さえたが遅かったみたいだ。

校門の壁に寄り掛かっていた彼女がゆっくりと顔をあげて、カッチリと目があった。


「…あ、幸村君?だっけ?」
「は、はい……っ」


やばい、なんで?
いろんなことが頭を巡ったけど、何一つとして声に出ることはなかった。