トモダチ思い3
キキ、と自転車の止まる音がして振り返ると、相変わらずのイケメンのトモくん。
見た目勉強もできそーなのに、俺らより馬鹿な学校に行ってる。意外だ。
「よ、久しぶり」
「いきなりごめんな?」
そういうと別にいいよ、と言って笑う。
それはそうと呼び出させた本人はどこ行ったかと思うと、さっき俺が雪宿りしてたとこのベンチに座ってる。
なにやってんだ、早く来い。
「で、なに?今日は」
「や、トモくんに用はアッチの奴なんだけども」
トモくんは多分一度しか見たことないカズヤを覚えてないとみて、呼び出す際に話に出さなかった。
バレンタイン当日だし本人もなんだかは分かってるだろうが、俺がトモくんにチョコレートなんてネタかホラーだ。
カズヤは全然俺達に近付いて来ようとしなくって、仕方なくトモくんにカズヤのとこまできてもらう。
しかもなんだか顔が強張っていて、怒ってるように見える。
しかしどーやらそうではないようで、単に緊張から来ているらしい。
「……ほら、お前渡すもんがあんじゃねーの?」
予定では今頃俺は空気の役割で二人を木の陰とかから見とく予定だったのに、とてもじゃないがこんなカズヤを置いていくのは無理だ。
カズヤはガチガチで一言も喋らない。
………気まずすぎる。
「あー………トモくん、ごめんねなんかコイツ緊張してるみた…い゙っ!?」
俺がそう苦笑いして言うと、後ろでズボンの上から尻を抓られた。
「なにすんだ!!」
「まあまあ……」
「………………」
俺が怒ってもカズヤは一寸も動かず、腕を取っても堅く力を入れていてびくともしない。
別にケンカするんじゃないんだから本気で引っ張ってはないものの、石のように動かずでは困る。
はあ、とため息をついてトモくんをちらりと見遣ると、目が合った。
そして、カズヤへと近付いてくる。
「ねえ、何かくれんの?」
「………っ!!」
びくり、とカズヤの体が奮え、そんなカズヤにトモくんは決して重圧的でなくじっとカズヤが動くのを待っている。
「あ、の…………………」
いつもより低い声。普通上擦って高くなるものじゃないのかと思うけれどカズヤにはそんなことを考える余裕すらないようで。証拠に、紙袋を持つ手は震えている。
「俺に?」
そうトモくんに聞かれると、一度だけ首を縦に降ってまた黙り込んでしまう。
そこでなんとか話を続けろよ!と俺は要らぬ世話をしそうになる気持ちを理性で抑える。
その時、ポンとトモくんの手がカズヤの肩を触れて、
「ありがとね」
その時俺は見たのだ。数年ずっと友達をやってきて、一番のカズヤの綻ぶ顔。
満面の笑みとは違う、安堵とときめきが心のそこから沸き上がってくるような……
「…よかったな」
俺は、トモくんに聞こえないようにカズヤにボソリと呟いた。
コクリ、と頷いた彼の視線は、ぶれずにずっとトモくんに注がれていた。
ああ、寒い。
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