トモダチ思い4
家に帰ってそのまま自分の部屋へ直行、ベッドへダイブ。
あの後も、カズヤがトモくんから電話番号とメアドを聞くのにどれだけ時間がかかり、俺が必死に時間を繋いだか。
なんだか大したこともしていないのに疲労困憊だ。
「……はぁー……」
心がすっきりしないのはどうしてだ。
俺がちょっとだけ寝ようかな、なんて思った時、ポケットのケータイが震える。
3回で切れたそれはメールのお知らせ。渋々確認すると、さっきまで顔を合わせていた奴からだ。
『今日はサンキュ』
たったそれだけのメール。返事はしなくてもいいか、と思ったけれど手は自然に返信ボタンを押していた。
『いーよ別に。頑張れよ』
そう打って、手を止めた。俺は何を頑張れっていってんだろ。
クリアボタンを長押しすると、また真っ白になったメール画面。
3分間じっくり考えて、一文だけ打って送った。
『お前、やっぱトモくんが好きなの?』
改めて聞くのはカズヤを傷つけるかもしれないとためらった。
顔を見て言うと気まずくなってしまいそうで、嫌で。
心のどこかで、そんな訳ねぇだろ馬鹿、という返信を期待してる。でも軽蔑してるんじゃない。
いつもならすぐ来る返事が遅くって、それだけで俺を不安にさせる。
10分くらい経って、俺の膝の上でそれが震えた。
『そうだよ』
簡素な返事。
もうちょっとなんかねえのか。
と思いつつ下ボタンを押すと、スクロールがあった。
対して長くない、ギリギリ隠れるくらいの行。
『気持ち悪い?』
その瞬間、俺は電話帳を開いた。
履歴の方が早かったかもしれない、でもそんなことはどーでもいい。
呼び出し音さえ煩わしかった。
『………もしもし』
「…この馬鹿ッ!!何年友達やってんだよ!俺を舐めてんのか」
『舐めねえよお前なんて汚ぇな』
「そーゆー意味じゃねえんだよッ」
コイツはなにを思って俺に気持ちが悪いかなんて尋ねたんだろう。
俺がそう感じると本気で思ったのだろうか。そう思うとコイツに腹が立って、自分にも腹が立つ。
俺は何があってもお前がどこでなにしてても、例えハゲデブのジジイとセックスしてたって気持ち悪いなんて思わねえんだよ。
そんなことを言うと逆にキモいと言われてしまうから言わないけど。
「お前にとって俺はどの格の友達かはしらねえけど、俺にとってはお前は一番の親友な訳!だからそーゆーこと言われるとムカつく!」
『…キモいんだよ』
「言ってろ、撤回はせん」
カズヤが黙り込んでしまったから電話を切ろうとした時、ボソリとカズヤの声がした。
『……でも今日は本当にお前に感謝してる。サンキュ……脈ナシでも頑張るから』
その言葉に、胸がピリッと痛んだ。
「おう、がんばれ」
俺は馬鹿だ。
カズヤに甘いのもなんだかんだいつも言うこと聞いてやるのも、全部理由は一つだったのに。
「まじに俺かわいそ………」
脈ナシでもがんばる、なんて俺には言えない。
あいつ他人には結構シビアだから、あいつ自身男に告白されたらキモいの一言でバッサリ斬るだろう。
だから友人のままでもいいと思っていたはずなのに。
「きっついの…………」
いつか笑ってトモくんの交際するだなんて言われたら、俺は友達を続けていけるんだろうか。
でも俺には、カズヤときっぱり縁を切るだなんて不可能。朝、おはようと言ってもらえるだけで気持ちはハイテンションだ。
それに、カズヤは2年も前に一度しか会ったことのない相手をずっと好きだったのかと思うと、応援してあげたい。
まあ俺はカズヤに約4年越しの片思いだったんだけどな。
それでも多分、俺は好きだからこそカズヤが許してくれるかぎり隣でカズヤの頑張りを見るだろう。
「幸せそうな顔の方が、泣いてるとこ見るよりずっといいよ……な」
だからせめてカズヤが幸せになって、願わくば俺にも誰かとの幸せな未来が来ますように。
おわり
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