5

「…とる、聡!」


「……ふぇ…?」



聞き慣れた声が聞こえて、ゆっくりと目を開いた。

顔を上げると、そこには俺のお友達。


「ん……あん…ちゃ、ん?」


「お前な、こんなとこで座って寝てんな!心配しただろーが!」


ちょちょちょ、声が大きいよ安ちゃんー……
どうやら俺は、あのままここで眠ってしまってたらしいです。

ずっとしゃがんでたから足が怠いよう…



俺を上から見下ろして不機嫌な顔をしているのは、同じクラスの安ちゃん。俺と話が合う、だべり仲間なんだぁ。本当は『やす』って読むんだけど、俺は『あん』ちゃんって読んでる。
そっちのほーが可愛いでしょっ。


「安ちゃん、俺を探してくれてたの?」


「どっかの誰かさんがカバンもケータイも持たずに急に出てって、放課後になっても帰ってこないからな?」



ゆっくりと立ち上がると、貧血でくらくらと立ちくらみがした。

そーいえば、もう雨は晴れたんだぁ…でも空はちょっぴり暗い。


服はまだ吸い込んだ雨を蒸発していなくて、ビチョリと濡れてる…気持ち悪い。



「お前…びしょ濡れじゃん。もしかして、雨の中ずっとここに座ってた?」


安ちゃんが俺を見て目を見開いた。
俺はコクリ、と頷く。



「この…おバカ!風邪ひくだろっ」


「あたっ…!痛いよぅ安ちゃーん!!」



頭にゲンコツを落とされる。ゴツンって、音がしたよー!ちょっと強すぎるよぅ…



「今何時ー?」


「6時前くらい」


もうそんな時間なのか……
俺がここに来たのは1時過ぎくらいだったから、もう5時間くらいたってるみたい。


迷惑かけてごめんね、安ちゃん。

昼休みも、いっしょにいた時にとーやからメールが来て、安ちゃんを置き去りにしてしまったのに。





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