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「…とる、聡!」
「……ふぇ…?」
聞き慣れた声が聞こえて、ゆっくりと目を開いた。
顔を上げると、そこには俺のお友達。
「ん……あん…ちゃ、ん?」
「お前な、こんなとこで座って寝てんな!心配しただろーが!」
ちょちょちょ、声が大きいよ安ちゃんー……
どうやら俺は、あのままここで眠ってしまってたらしいです。
ずっとしゃがんでたから足が怠いよう…
俺を上から見下ろして不機嫌な顔をしているのは、同じクラスの安ちゃん。俺と話が合う、だべり仲間なんだぁ。本当は『やす』って読むんだけど、俺は『あん』ちゃんって読んでる。
そっちのほーが可愛いでしょっ。
「安ちゃん、俺を探してくれてたの?」
「どっかの誰かさんがカバンもケータイも持たずに急に出てって、放課後になっても帰ってこないからな?」
ゆっくりと立ち上がると、貧血でくらくらと立ちくらみがした。
そーいえば、もう雨は晴れたんだぁ…でも空はちょっぴり暗い。
服はまだ吸い込んだ雨を蒸発していなくて、ビチョリと濡れてる…気持ち悪い。
「お前…びしょ濡れじゃん。もしかして、雨の中ずっとここに座ってた?」
安ちゃんが俺を見て目を見開いた。
俺はコクリ、と頷く。
「この…おバカ!風邪ひくだろっ」
「あたっ…!痛いよぅ安ちゃーん!!」
頭にゲンコツを落とされる。ゴツンって、音がしたよー!ちょっと強すぎるよぅ…
「今何時ー?」
「6時前くらい」
もうそんな時間なのか……
俺がここに来たのは1時過ぎくらいだったから、もう5時間くらいたってるみたい。
迷惑かけてごめんね、安ちゃん。
昼休みも、いっしょにいた時にとーやからメールが来て、安ちゃんを置き去りにしてしまったのに。
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