4
目にいっぱい涙を溜めてとーやを見つめる。
こっちを見たとーやは眉を下げてはぁ、と息を吐いた。
「……俺、違う奴と付き合うから、無理」
「…………!!」
もうだめだ、俺。
糸が切れたように目尻から涙が止まらない。
でもとーやは前みたいに拭ってくれないんだね……
「……っ、ふ…ひっく……分かっ、た…ッ…」
多分今俺、すごい汚い顔してるよね。
セーターの袖で目を擦っても擦っても、止まんない……
しゃくりあげながら、でもとーやを困らせたくないよ……
だから、ボロボロと泣きながらにっこり笑う。
ほんとは、付き合う子が誰だとか、友達としてでも仲良くしてほしいだとか、言いたいことはいーーっぱいある。
でも、俺はとーやに嫌われたくないから、言えないの。
情けないよね、はは……馬鹿みたいだねー……
「とーっ、や………おれ、いつでも…ッ、待ってる、から…もし……もしまたっ、………」
「……そりゃどーも。でも」
絶対ない。
そう言って、とーやは去って行ってしまった。
とーやが校舎に入った直後に授業開始のチャイムがなった。
多分授業遅れただろうな…俺が引き止めたせいだよね……怒ってるかな、怒ってるよね。
でも、
「へへ…もー関係ない、んだったぁ………」
玉砕。
あっけないなあ。
涙はもう乾いていて、その分雨が激しさを増したような気がした。
「あーーーっ!気持ちよさそぉー!!」
屋根の下を飛び出して、上靴のまま土を踏み締めた。
制服が水を含んで段々と重くなるのも気にしない。
髪のセットが乱れるのだけが気になったけど、そんなの今はどーでもいい。
「っあー……もー、終わった………」
とーやのいない学校なんて、来る意味あるのかなぁ。
止まった涙が溢れ出す感覚。
目頭が熱くなる。
でも、雨のせいで俺の涙なんてわかんなくなるから。
とーやも、ここにはいないから。
「……う、…わあぁあああんっ…!!!!」
地面にしゃがみ込んで、腕に目を押し付けて叫んだ。
俺には、俺にはとーやだけだったのに。
俺がとーやに依存しすぎてたんだよね。とーやは悪くないんだよ、ごめんねとーや………
雨は止むことなく俺を叩く。
ボトボトになったままその場にうずくまり続けた。
[ 5/21 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]