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「え…………いま、なんて…?」
「……だから、別れてって」
頭が真っ白になった。
だって、とーやと別れるなんてそんな、考えたことなかったよ…?
「……んじゃ、そーゆーことだから…」
呆然と立ち尽くす俺を放って、踵を返して帰ろうとするとーや。
俺は慌ててとーやの腕にしがみついた。
「ちょ…待ってよぉ!なんでそ、な……いきなり……」
「うるせぇな、俺の勝手だろ」
「勝手って……だって俺、とーやの恋人だよねぇ!?」
「……だ、か、ら、別れてって言ってんじゃん」
「とーや……………」
しがみついた俺の腕を引きはがし、とーやは俺に別れろという。
嫌だよ、どーして……?
俺はとーやがすきなんだよ?
雨がざあざあと音を立てて、沈黙を遮ってくれる。
俺がどんなにとーやを見つめても、目も合わせてもらえないよ……
「ね、俺がなんかした…?俺、謝るからぁ……別れるなんて」
「五月蝿いって。そーゆーの、……ウザい」
ウザい、だって。
ガン、と後頭部に殴られたみたいな衝撃を感じた。
「サト、しつこいよ。最近俺がお前遠ざけてたの分かってんだろ?直接言わなきゃわかんない?」
とーやは俺をグサリ、グサリと傷つける。
とーやにつけられた傷なら嬉しいよぉ、なんて言う心のゆとりがない。
やっぱり俺を避けてたんだ、とーや……
「…なんで?とーや俺のこと嫌いになっちゃったの…?」
「……さあ。そーかもな」
「そん、なあ………」
どーでもいい、というように遠くを見つめながら言われた言葉に思わず泣きそうになる。
泣くと絶対とーやが嫌がるから。
必死で目から零れないように我慢するんだ。
「おれ、とーやが好きだよぅ…、だからいままで通りでいいから…」
「………………」
「会ってくれるのもたまにでいいから、別れるなんて言わないでぇ……」
じいっととーやを見つめていると、とーやがゆらゆらと揺らいで、涙が頬に垂れた。
あーあ、泣かないでいよーと思ったのに。
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