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「ヤスー!今日、聖女と合コンすんだけどお前くる?」

「わり、今日は聡んとこ行ってみっからパス!」



クラスメイトからの誘惑を断ち切り、鞄を持ち背に乗せる。
聖女は結構有名なお嬢サマ女子校で、俺らの通ってる高校なんかじゃ滅多に有り付けない上玉な訳で。

まあでも俺はいいやつだから、女と聡を天秤にかけるまでもなく。




「じゃーまた明日なー」

「おー」

連れが教室でたむろってる中一人でそこを後にする。
見舞いの品とか、いるか?気を遣う仲でもないけど、あいつんち共働きだしなー…んー………


そんなことを考えながら鼻歌交じりに階段を下りて、きったねえ名前がかかれた上靴を履きかえようと靴箱に向かう。


「……んー?」


なーんか嫌な予感。俺らの組の靴箱の前に、気に食わん顔を発見。

「…………」

シカトするか、と思い、そのまま横を通り過ぎる。


「おい」

「…………」

「呼んでんだけど」


んだよコイツ、ムカつくな。しれっとした顔で立ってんじゃねーよ。


「俺、おい…って名前じゃねーんだけどね」


振り向いてそう屁理屈のようなことを言ってやると、あからさまに顔をしかめられた。


「…高橋」

「なに?杉田。俺今から用事あるから早くして?」


用件は分かっている。どうせ聡のことだろ?


「…サト、休みか?」

ほら来た。

「ああ、そーだよ。でもお前は関係ないから安心して。カラオケでクーラー温度下げすぎちゃって」

にっこり笑ってそう言ってやる。お前が聡をフッたせいだ、なんて言ってやらねぇ。
聡の話によればこっぴどくあいつをフッたらしいのに、今更よく聡のことを聞いてくるな。


「お前、聡と別れたんだろ?それなのにあいつに何か用なわけ?」

「…別に」

「あっそ。じゃあもういい?」


靴箱にもたれ掛かって指先でトントンと突く。俺せっかちだから。



「大体さあ、お前あれだけ聡を独占してた癖になんの心変わり?」

「………」

「周りにバレないのが不思議なくらいべったりだったくせに」


そういうと、杉田がピクリと動いた。段々とゆっくりだが眉間にシワが増えていく。
コイツ俺のこと嫌いだもんね多分。

まあ俺も杉田は好きじゃないけど。



「お前には関係ねぇだろ」

そう言われて、はいプッツーンときた。
この俺様を引き留めておいてこっちが質問したら関係ねーだと?


「俺今から聡ん家行くから。お前二度と聡に関わんなよ」


そう言ってドスを飛ばしてみるが、杉田のほうが背が高いからあんま迫力でねぇ。




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