16
***
「ヤスー!今日、聖女と合コンすんだけどお前くる?」
「わり、今日は聡んとこ行ってみっからパス!」
クラスメイトからの誘惑を断ち切り、鞄を持ち背に乗せる。
聖女は結構有名なお嬢サマ女子校で、俺らの通ってる高校なんかじゃ滅多に有り付けない上玉な訳で。
まあでも俺はいいやつだから、女と聡を天秤にかけるまでもなく。
「じゃーまた明日なー」
「おー」
連れが教室でたむろってる中一人でそこを後にする。
見舞いの品とか、いるか?気を遣う仲でもないけど、あいつんち共働きだしなー…んー………
そんなことを考えながら鼻歌交じりに階段を下りて、きったねえ名前がかかれた上靴を履きかえようと靴箱に向かう。
「……んー?」
なーんか嫌な予感。俺らの組の靴箱の前に、気に食わん顔を発見。
「…………」
シカトするか、と思い、そのまま横を通り過ぎる。
「おい」
「…………」
「呼んでんだけど」
んだよコイツ、ムカつくな。しれっとした顔で立ってんじゃねーよ。
「俺、おい…って名前じゃねーんだけどね」
振り向いてそう屁理屈のようなことを言ってやると、あからさまに顔をしかめられた。
「…高橋」
「なに?杉田。俺今から用事あるから早くして?」
用件は分かっている。どうせ聡のことだろ?
「…サト、休みか?」
ほら来た。
「ああ、そーだよ。でもお前は関係ないから安心して。カラオケでクーラー温度下げすぎちゃって」
にっこり笑ってそう言ってやる。お前が聡をフッたせいだ、なんて言ってやらねぇ。
聡の話によればこっぴどくあいつをフッたらしいのに、今更よく聡のことを聞いてくるな。
「お前、聡と別れたんだろ?それなのにあいつに何か用なわけ?」
「…別に」
「あっそ。じゃあもういい?」
靴箱にもたれ掛かって指先でトントンと突く。俺せっかちだから。
「大体さあ、お前あれだけ聡を独占してた癖になんの心変わり?」
「………」
「周りにバレないのが不思議なくらいべったりだったくせに」
そういうと、杉田がピクリと動いた。段々とゆっくりだが眉間にシワが増えていく。
コイツ俺のこと嫌いだもんね多分。
まあ俺も杉田は好きじゃないけど。
「お前には関係ねぇだろ」
そう言われて、はいプッツーンときた。
この俺様を引き留めておいてこっちが質問したら関係ねーだと?
「俺今から聡ん家行くから。お前二度と聡に関わんなよ」
そう言ってドスを飛ばしてみるが、杉田のほうが背が高いからあんま迫力でねぇ。
[ 17/21 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]