7
「杉田が、お前と別れたいって言ったの?」
「…うん、そーだよ?他の子と付き合うんだってー!俺邪魔者だったみたいっ」
俺がずっと鈍くって、とーやの気持ちを悟ってあげられなかった。
とーやの後ろにひっついて、煩わしかったかもしれない。
考えれば考えるほど自虐の波に溺れてゆく。
明るい口調で、自分に刃を突き立てる。
「聡、お前…気付いてないかもだけど、………ここ、涙の跡」
「ふぇ……」
苦しそうな表情の安ちゃんにそう言われ、分かるはずもないけど指差された頬をなぞってみる。
「泣いたのかよ、あんな奴の為に」
安ちゃんの声はちょっと怒っていて、少し怖い。
俺のことを心配して言ってくれたのは分かってるんだよぉ。
けど、だって。
「だって、俺、っはぁ………とーゃが、好きなんだもんっ……!!」
さっきも嫌というほど泣いたのに、俺の涙は涸れることを知らないみたい。
ボロボロと流れる涙に、安ちゃんは一瞬ギョッとした。
「…聡……お前ほんっとバカ!」
安ちゃんは俺に優しい慰めの言葉なんてかけてくれない。
だって安ちゃんはいつも、俺に「あんなやつほっとけよ」って言ってたもんね。
安ちゃんの忠告も聞かないで、俺はほんっとーにバカ。
「……あ、あんちゃ、っん……ー!!!」
「あーもー、…仕方ねーな………よしよし、泣かないのよー聡ちゃん?」
安ちゃんにタックルするように抱き着くと、よろけながらもちゃんと俺を受け止めてくれる。
ちょっとふざけた口調も、安ちゃんなりの励まし方なの、分かってるよ。
「今日カラオケ行くって行ってたのに、行けなかったなー?」
「ごめ、んっねー…、っヒック……」
「今度奢ってくれたら許してやる。あとあんまり俺の服を濡らすな!恥ずかしいから!」
分かった?
そういって俺の背中を強く叩く安ちゃん。
ちょっぴり痛いくらいのそれが、安ちゃんらしい。
俺は、ほんっとぉーにいい友達を持ったよ、安ちゃん。
………ありがとぉね。
結局二人で帰路に着いたのはそれから20分後。
安ちゃんと二人の時も俺は、俺の半分でもとーやが俺を好きになってくれたらいいな、って。
考えてた。
[ 8/21 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]