18
「なんだ、何も言わねぇのか」
床に視線を落としたまま微動だにしない俺に修斗の言葉が降ってくる。
俺の頭は剛のことで精一杯で、修斗の皮肉に返す言葉を考える余裕すらない。
そんな俺に、まるで興ざめだと言わんばかりに吐き捨てる。
「つまらねえな」
つまらない、ってどういう意味だった?
興味が沸かない?無意味で馬鹿馬鹿しい?
ふざけるなよ。
「…アンタは、俺になんて言ってほしかった訳?」
「…は?」
「激情して怒鳴り散らすと思ったか?それともアンタに必死に縋るとか?」
「……………」
言ってはいけない、と頭が訴えているのに、口は止まらない。
どうしてこの人は俺の神経を逆なでするようなことばかり言うんだ。
「ふざけんな、自意識過剰もいい加減にしろよ」
「…んだと……」
「いつ俺がアンタの『ネコ』になったんだよ?暇つぶしなら生徒会長の親衛隊様達でも呼べよ…」
修斗の機嫌が悪くなっていくのが分かる。
向こうからしたら、家来が上司に向かって暴言を吐いてるような感じなんだろうな。
「アンタとは……二度と会うことはねーと思ってたんだよ……なのに、」
一番の友人を失ったであろう今、俺はなにも怖くない。
剛がいないのなら、たとえ副会長や美山先輩が俺に優しくしてくれようとも、皆からどんな目で見られてもいい。
生徒会役員なんて辞めてやる。
目の前が潤み、でももう二度とこの人の前で涙を見せたくないと必死に踏ん張る。
瞬きをした瞬間に一粒だけ、下を向いていた顔から重量に沿って涙が絨毯敷きの床に落ちた。
「俺と、会いたくなかったか」
気まずい空気が流れる部屋には修斗の低い声はよく響いた。
「………あたりまえだろッ……俺がどんなに………!」
バッと顔を上げて修斗に訴えかけるように目が合ったけど、その続きを言うとまだ未練があるようで嫌だった。
「……どんなに………」
辛かったか。悲しかったか。それを遡ったずっと前、こんな風になるとは夢にも思わず、多分今よりも楽しかった時間があった。
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