17

震える声で尋ねる。
会長、と呼んだのは、過去のことをほじくり出してくるような語り口の修斗への、ささやかな抵抗だった。


「生徒会長、ねえ…」


修斗の呟きに身を固くする。

(びくびくしすぎだって、俺)

わかっているけれど。


過剰に反応する俺を尻目に、修斗はなんの変わりもなく話しだす。

「さっきたまたま会ったら、俺に物凄い敵意を向けやがるから」

敵意、って剛が?修斗に……?
訝しく思った。
剛が修斗を嫌う理由などあったのだろうか。
俺が知ってるかぎりでは、ここで仕事をする以外での接点は見つからない。

でも修斗がこんな意味のない嘘を吐くとも思えない。
…庇ってる訳じゃない。
自信家のこの人は、物事を円滑に進めるための嘘なんて考えない。思ったことはすぐ言う、それで揉め事になってもケンカでは負けない。


修斗は眉を寄せる俺を一瞥し、鼻で笑った。

「お前となんかあったのか、って聞いてきたぜ?」

「は……剛、が?」


てっきり、修斗が軽い気持ちでなにかほっかけたのかと思っていた。

なんで剛が、なんて考えるには至らなかった。
この前の俺と修斗は端からみても明らかに普通の態度じゃなかっただろう。
修斗がドスを効かせて剛たちを追い出したとき、俺は泣きそうな目で剛を見たような気がする。

いつか話そうと思って、帰ってもなにも言わない俺に剛はなにも聞かなかった。
友達思いの剛のことだ、きっと心配してくれていたのに。



「……剛には、なんて…………」

聞くのが怖い。
こんなはずじゃなかった。
本当ならここにきて身なりも言動も変えて一から始めるつもりだったのに。
せっかく出来た一番の友人を、またコイツとの関わりのせいでなくすのか?






「『アイツは俺のネコだ』ってな」

「……………っ…」

「間違ってねぇだろ、一つも」


やっぱり、そういうこと。

剛が俺にあんな態度をとったのは、会長と寝てたから?
剛は聡いから、一言でなにもかも悟っただろうな。
もしかしたら、男が無理なのかもしれない。男と付き合ってたっつー時点で引かれてたのかも。



「………はは…」

乾いた笑いが漏れた。
いずれはばれることだった。仕方のないことだろ?

でもせめてやっぱり、俺からちゃんと話すべきだったのかな。




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