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「ッ………!!」
バンッ、と大きな音を立てて生徒会室の扉を開いた。
今が授業中だとか、そんなことはどうでもよかった。ここにくるのに、きっと中学の体育祭よりも早く走ったと思う。
ハアハアと肩で息をしながら、正面奥に見える後ろ姿を睨んだ。
「…………修、斗……ッ!!」
この男は、なんなんだ一体。
俺の嫌がることばかり、復讐のつもりか?
「来たか」
まあ来ると思ってたけど、なんて言う修斗の顔はここからは見えないが、きっとニヤリと笑ってるんだろ。
俺は真っ直ぐ修斗の元にズカズカと向かい、前に回り込んで胸倉を掴んだ。
「……ったんだよ………」
「…あ?聞こえねえな」
「……っ剛になに言ったんだっつってんだよ!!」
シャツを掴んでいる手が震える。
椅子に腰掛ける修斗を立ち上がらせる勢いで引き付けたつもりだったが、如何せん元から備わっている力が違う。
修斗はびくともしなかった。
「随分とアイツに御執心だな?」
「んなこと聞いてんじゃねーんだよ……!」
俺が本気で怒っているのはわかっているはずなのに、茶化すように的外れな答えしか返してこない。
「なに言ったかって聞いて…」
「おい」
今まで釣り上がっていた修斗の口もとが下がった。
俺の剣幕をもろともしない低い声がした。
「………っ」
「誰に口きいてんのか…分かってんのか?」
修斗の鋭い目に打ち抜かれて、思わず胸倉を掴んでいた右手を離した。
条件反射で一歩後退る自分が情けない。
ここには修斗と俺の二人だけ。授業中だ、他に誰もこないだろう。
どうする、また逃げるのか?俺。
「やっぱ中身は変わってねーな」
「………」
「なあ、ビビり?」
俺を挑発する言葉ばかりを口にする修斗。
なにがいいたい?
椅子から立ち上がり、俺に近づいてくる。
この前とまるで同じ、一歩近づけば俺が一歩下がる。
「なんで逃げる?」
「………っ来んな」
「俺に聞きたいことがあるんだろ?」
そういわれ、自然と後ろへ後ろへと下がる足を踏み止まらせた。
この前のように突然床に押し倒されるかもしれない。そんな恐怖はあった。
痛いのは、好きじゃない。嫌いだ。
それでも、剛とちゃんと話をするには他に方法がない。
「剛、と……なにを話したんですか、生徒会長」
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