15
「それ、ってどーゆー意味ぃ……?」
「分かんない?なら別にいいから」
剛の言葉の一つ一つに棘を感じる。
なに、なんで。
俺のせいじゃないって言ったけど。でもきっと、俺のせい。
周りがざわめいているのに気がつく。
ここは廊下だってことを忘れかけていた。
きっと周りも俺達の様子が変だというのに気がついたんだろう。
剛から詳しく話は聞きたい。
でも、ここでは聞けない。もちろん、教室でもだ。
「…次、サボれる?」
悩む俺に方法を与えたのは、剛だった。
***
選択教室ばかりがある階の踊り場。
屋上はサボるには定番すぎて人がいるかもしれないと思った結果、こういう場所の方が良いだろうという結論に至った。
お互いになにも喋らない。
なにから聞いたらいいのか、何を聞いたらいいのか分からなかったから。
「あ、の…そのぉ………」
しびれを切らして、咄嗟に口を開いた。
剛はなにも言わない。
「やっぱ、俺がなんかしたんでしょ…?ごめんねぇ………」
「なんで、そう思うんだ?心当たりないんだろ」
「……だって…」
剛の言葉は先程よりは優しいものだったが、いつもと違うのは変わらない。
だって、…そう言った次の言葉が出なかった。
剛らしくないから、と言おうとして思う。
俺は剛を知っているんだろうか。
剛らしい、なんて決めつけは余計に剛を苛立たせるかもしれない。
『俺らしい』が、この姿の俺なのか一人の時の俺なのか、自分でも分からないように。
いつまでも続きを言おうとしない俺を、まるで慰めるように剛が言う。
「…悪い、ほんとに怜が悪い訳じゃない。俺の中の怜が一人歩きしてただけだから」
そう言って剛は笑う。
困ったように笑う。
俺がこんなに気をつかわせている。
剛の物言いが、俺の何かを知ったというふうに思えた。
剛の中の俺を、壊してしまう何かを?
感づく。もしかしたら、と。
「さっきの時間、…どこにいたのぉ?」
「…生徒会室」
「誰かと、いた…………?」
俺がそういうと、ずっとどこか俺を避けていた剛の瞳が俺を写し、そして開いた口は俺が一番望まない展開を打ち明ける。
「…神谷生徒会長、といた」
走った。
目指すのは生徒会室。
もしかしたらもういないかもしれない。
それでも。
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