14
2限目の終了のチャイムがなり、休み時間。
ガヤガヤと煩い教室に、一人席に着いていると周りにたかられるので教室の外に立ってみる。
剛になにかあったのだろうかと思うと、気が気ではない。
キョロキョロと辺りを見回していると、全く知らない生徒から挨拶されたりじっと見つめられたり。
慣れたと思っていたけれど、それは剛といっしょにいたから気が紛れていただけなのかも知れないと思った。
きっと俺一人より剛といたほうが目立っていたにも関わらず、そう感じるのだ。
「…!」
廊下の向こうの方から、剛が見えた気がした。
目が合うかと思ってその遠い姿を見つめてみたけれど、剛の視線はどこか分からないところにあり、考えごとをしているようだ。
(…変な顔してる)
ずっといっしょにいたから分かる、些細な表情の変化。
俺といっしょにいるときは大抵優しい顔をしてくれている剛。
今の顔は、周りに騒がれて少々イライラしているらしい時の表情に近いけれど。
「ごーおっ!」
「……怜?」
近づいてきても全く俺に気がついていない様だったので、俺から近づいてみる。
いつもなら、笑って返事をしてくれるのに、剛の顔は曇ったままで。
「おはよぉ!今朝はごめんねぇー…?」
「あぁ……」
俺の発言に対する返事も、聞いているのか分からないようなもの。
予想では、「遅刻してきたのかよ」とか、「待っててくれてたの」とか言ってくれるかと思っていた。
余りに余所余所しいその態度に、なにかしてしまったかと思わざるを得なかった。
「なんか、あった…?」
「別に?何もないよ」
「……嘘、だよぅ」
きっぱりとなにもないと言われてしまったが、その態度すら異様だった。
何時もの剛なら、俺相手でも少し気を遣うような態度を取るのだから。
明らかに、何もない訳がない。
「……俺が、なにかしたぁ?」
剛は普段人に当たったりあまりしない。
全く俺に関係のないことなら、きっと俺にこんな素っ気ない態度は取らない。
心がざわざわしていた。
剛は、俺をちらりと見て苦笑いを浮かべながら歯切れ悪く言う。
「怜がなんかした訳じゃない。けど、」
なんだか嫌な予感がした。
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