13

ピンポーン、と部屋のチャイムが鳴った。瞬間飛び起き、時計を確認。8時だ。


「ま、たやった……!」

慌ててベッドから飛び起き、鏡に走る。
バシャバシャと顔だけ洗い、扉の向こうで待っている剛に向かう。

ソロリと少しだけ扉を開けると、剛の姿が見えた。


「ごめん、寝坊したぁ…先に行っててぇ?」

「またかよ…ちゃんと目覚ましかけてんのか?」

「かけてるけど、鳴らないんだよー!」


「嘘つけ」と頭を小突かれ、わざわざ迎えにきてもらっているのに心底申し訳ないと思う。
さっさと着替えて遅れないように行くから、と言うと剛は仕方ないと言うふうに先に学校に行ってしまった。




「ほんと、朝だめだな俺……」

制服を頭から被りながら思う。
剛と朝一緒に行けるのは、3回に1回くらいの割合しかない。もちろん俺の寝坊のせいで、だ。
寝坊した時は大体ぎりぎり遅刻にはならないくらいに校舎に滑りこむのだけれど、剛が毎朝チャイムを鳴らしてくれなければきっと遅刻は免れない時間まで寝こけるだろう。


それでも懲りずに毎朝来てくれる剛にはほんとに感謝しきれない。


「なんか怠い……今日はもう遅刻していくか……」

昨日の晩になにも食べずに寝てしまったせいか、かなり空腹でもある。

それでも、めんどくさがりの俺が買い物に行っている訳もない。


「なんもないし………」



調味料しかない冷蔵庫である。マヨネーズはあっても野菜はないし、漬物があっても米はなく、ジャムがあってパンがない。
さすがに自分に引いてしまった。


「まあいっか」


この空腹を、まあいいかの一言で片付けてしまう自分に呆れつつ、それでも身なりを纏めることはめんどくさがらずこなしていることにびっくりだ。



とりあえず朝食は行きにどこかによって購入したらいいかと言う結論に至ったので、寝癖のついた髪を丁寧に梳かした。








***

「おはよぉー」

「おはよ、秋野くん!」

「なに重役出勤してんだよ秋野ー!」


ガラッと扉を開けると、1時間目を終え騒がしい休み時間の教室。
いつもと変わらぬ様子でクラスメイト達が声をかけてくれる。
生徒会入りをしてから、知らない人からも役員名や様付けで呼ばれることが増えた今、態度を翻さずいてくれるクラスメイトの存在は嬉しい。




「…あれ??剛知らないー?」

俺の隣の席に、いつもいるはずの剛の姿が見えない。
鞄はあるから、学校には来ているはず。


「鳴海ならさっき、お前と入れ違いくらいで出てったぜ?」


「そっかぁ…ありがとぉー」

近くにいたクラスメイトがそう教えてくれる。
席に腰を降ろすと周りに人が集まってくる。
嬉しいことではあるけれど、未だに生徒会のことやらを根掘り葉掘り聞かれることもあり、ちょっと面倒臭い。

剛がいたら、うまい具合に連れ出してくれるんだけど。




そう思っていたけれど、剛は休み時間はおろか、2限目に入っても帰ってこなかった。




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