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「…っ、しゅ………」
修斗、と口走りそうになり、慌てて口を抑える。
開けっ放しの扉の前で委員長に捕まっていたから通れなかったのか。
俺は慌てて先輩を引きはがした。
「…お前なんでここにいんだ」
「えー?神谷を待ってたんじゃーん?」
「気色悪ぃんだよ」
おちゃらけた様子の委員長に、修斗は目も合わさずにそう吐き捨てた。
心なしか機嫌が悪そうだ。
「おい」
いきなり低い声で話し掛けられ、びくっとしてしまった。
恐る恐る修斗を見上げると、やはり大層ご機嫌ななめな様だ。
「お、俺です、かぁ…?」
「お前以外いねえだろーが」
蔑むような瞳。
今までに、向けられたことのないような……
怯えるおれを知ってか知らずか、修斗は俺を見据え冷たい声でこう吐き捨てた。
「ここは遊び場じゃねえ。イチャつくなら外でやれ」
その瞬間、部屋が静まり返った。
イチャつくだと?
あんたが、一体何を見てたんだよ。
「っ神谷!言い過ぎですよ!」
「うるせぇな、目の前で気持ちわりぃの見せんなっつってるだけだろーがっ」
副会長がとっさに俺を庇ってくれたが、そんな副会長を睨むように修斗が怒鳴る。
なんでそんなに怒ってんだよ。
俺がこの間突き飛ばしたから?
それとも、本当にキモかったからとか。
何も言わずに見ていた風紀委員長が、突然ニタリと笑って口を開いた。
「イチャついてなにがわるいのー?」
「うっぜえ、黙れ」
「神谷だって、腐るほどセフレがいたじゃない。ああ、親衛隊だっけー?」
ドキリ。
セフレ、親衛隊?
…そう言われて気づく、あの時の浮気相手たちも、そーゆー類の奴らだったのかも。
「………今関係ねえだろーが、その口塞いでろ」
そううろたえるそぶりもなく、何でもないように返事をするんだな、あんたは。
俺の方は、見るはずもない。
言いたくない、聞きたくないと心が訴えていた。
それでも、俺の口は動く。
「…へーっ!会長さんってセフレとかいるんだぁーっ。さすが会長ぉー!」
修斗の目は、見ない。
普通に振る舞ったつもりだった。
でも、剛と目が合うとなんだか悲しそうな顔をしていて。
なんでそんな顔すんの?
修斗は俺に、何も言わなかった。
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