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「………あのぉ…すみません」

「うーん、よく言われるから気にしないでー?」

「神崎がこんな格好をしているのが悪いんですよ」

「いや、でもぉ……」


副会長が入れてくれた紅茶に口を付けながら、さっきの失言に頭を下げる。

もちろん風紀委員長さまに、だ。


見た目で判断するのは日本人の悪い癖だ。
自分もこんな感じなのに。


「いいって言ってくれてんだし、そんなへこむなって」

剛にそういって肩を叩かれた。
もちろんそのこともあったが、この人を怖いと思った自分が恥ずかしい。


副会長とも親しげで、俺と剛にも言い方は悪いが執拗と言っていいくらい話し掛けてくれる。


「俺、可愛い子好きなんだあー!」

「……はぁ」

まあこういうところは、どうも苦手なのだけれど。

俺と剛を見比べたうえで、「やっぱ俺は怜くんの方が好みだなあ」とか言われてしまった。


「神崎、ちょっと黙りなさい。秋野くんが困惑してるじゃないですか」

「えー?…あ、大丈夫だよぉー!和泉んの顔も好きだ、か、らっ」

「はあ……もういいです」


美山先輩だけに留まらず副会長にもこう言わしめてしまうこの人の感性は、多分俺には一生分からない。

でもなんとなく、天然でやってるんじゃなさそうなんだけどな…


そんなことを考えていると、風紀委員長が言った。


「そいえば、神谷は?俺書類持ってきたのにー」

そういってピラピラと紙を振る。


「そういえば遅いですね……」

「もうすこししたら、来るだろう……」


そうだ、俺がここでこんなにも寛げているのは修斗がいないからと言っても過言ではない。

このあいだ以来会っていないからどんな顔をすればいいかも分からないし、前のように皆を追い出されても困る。


二人が言うには普段なら来ている時間らしい。
……もしかしたら、修斗が来ないのは俺が来てるから、とか?





「まっいいやあ…これ書き終わったら出来るだけ早くこっち持ってくるよう言っといてぇ?」

「分かりました」

「俺も仕事消化してこなきゃっ」

そういって風紀委員長サマは書類を何枚か預かって生徒会室の扉を開いた。


「あっそーだ、怜くん怜くん」

「?なんですかあ?」

「ちょっときてえ」


なにか思い出したかのように手招きをされ、そちらへ向かう。

委員長の前まで行くと、急に委員長に引き寄せられた。


「……わっ…!!」

「さよならのハグっ」


びっくりして固まった俺を、「ぎゅー!」とか効果音を口で発しながら抱きしめる。



「ちょぉ……苦しっ」

先輩の締め付けに耐え切れず、押しくるめられたようになっていた腕で委員長の胸を押し返そうとした時、




「………オイコラ、…邪魔だ」


噂をすればなんとやら、か。
開けっ放しの扉の方から、修斗の声がした。



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