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「ルヴァイド様、お話が、」
そう言いながらずかずかとルヴァイドの部屋に入って来たイオスの足が、不意にぴしりと石化したように停止した。
彼の瞳に飛び込んできたものは、椅子に腰かけるルヴァイドのすぐ傍に立ち、その両手で彼の頬を包み込み、目を細めて彼の顔を覗き込んでいる、名前の姿。
対するルヴァイドの片手は名前の腰に回っており、彼女を見上げているその瞳は普段戦闘で敵を威圧してまわっている彼からは想像もできないくらいに、儚い。
明らかに、いい展開の、ふたり。
イオスが言葉を失ったように口をぱくぱくさせていると、ようやくイオスの存在に気付いて彼を向いた名前の目とイオスの目がかちりと合った。
なんともいえない気まずい沈黙が流れる。
ほんの数秒だったその時間がもっと長くに感じられたのはおそらくイオスだけではなかっただろう。はっとしたように慌ててルヴァイドから両手を離したベルの顔にはみるみるうちに朱が差していた。
「イオス様、誤解です!これはルヴァイド様の目に塵が入ったからと…!」
「ごめん、名前…邪魔したね…。」
「イオス様!!」
そそくさと退散しようとするイオスの背中に名前が慌てて弁解を投げかける。だがその必死の試みも空しく、彼は足早に部屋から出て行ってしまった。
ばたんと大きな音を立てて閉まったドアを見つめながら先程のイオスのように口をぱくぱくさせている名前。その後ろでルヴァイドが笑いを噛み殺していたことを、きっとイオスは知らない。
いちゃいちゃもんもん
(彼女の後ろに確信犯がひとり。)