第五輪

追憶の彼方へと消えてしまえ

××

研崎side

実験開始3日目…早くもエイリア石の効果が彼女に現れ始めた

エイリア石による身体能力の向上は、元々身体能力の高かった彼女にとってプラスとなっている様だ

ただ1つあるとすれば、彼女の精神と体が突然の変化に耐えられるかどうかだ

今までのエイリア学園のチームでもここまで強化された人は居ない

あるとしてもそれはエイリア石によって強化された人間と戦う事での強化されたもの

つまり1から100までエイリア石の力によるものではない

だからこそ、彼女が壊れないかが心配だった

確かに彼女の体力精神は両方とも素晴らしい

だが壊れない保障がどこにある?

研崎にとって、ようやく手に入れた最高の実験体が壊れる…それが何よりも懸念すべき事だった


「ふぅ……どうしたものですかね」


吉良星次郎によって他のメンバーへの実験は禁止されている

だからこそ全ての実験を彼女で試すしかない

果たして、今だ第二次成長期に入っていない彼女の幼い体が耐え切れるかどうか…


「…まぁ、いざとなったらアレを使いましょう」


研崎竜一…彼にとって彼女はただの実験体に過ぎない

××

今日の実験はエイリア石による人体修復効果を試す物だった

わかりやすく言えば自己治癒力をどこまで高められるかを試す物

つまり、必然的に彼女の体を傷つけなければいけない

その結果、彼女の服はもはや服とは思えない状態になり、その素肌には無数の傷がついていた

ボロボロになった体に鞭を打ち、必死にはるなんが待つ部屋へと急ぐ


でもそれでも後少しだけ力が足りなくて、ゆっくりと体が傾いていく

衝撃が体全体に伝わるけど、でも痛みが麻痺していて全然わからない

床の冷たさが気持ちよくて、ゆっくりと目を閉じる


…思い出すのは、楽しかったあの頃の雷門

日常が壊れる事を知らなかったあの頃の私は、ただ隣に居るのが楽しかった


ゆっくりと息を吐いて、涙が出てくるのを必死で堪える

感傷に浸っている場合じゃない、早くはるなんの所に戻らないと

指が動くのを確認して、腕に力を入れて立とうとする

すると、いつの間にか影がもう1つあるのに気づく

上を向いた次の瞬間には、腹部に激しい痛みが走って、体が吹き飛ばされていた


「あ、がっ…っ」


「ねぇ、ゴミの分際で邪魔しないでくれる?」


突然の出来事で頭が追いつかない

上の方を見上げると、冷たい目でグランが私を見下ろしていた


「っ、グ、ラン…」


「っ…邪魔だって言ってるのが聞こえないの?」


そう言って再び私を蹴る

二度も腹部へ強い蹴りを入れられた所為で胃の方から何かが逆流してくる感覚がしてくる

酸っぱくて、レモンが腐ったような匂い…そんな匂いが口の中に広がってく

吐くと思って、必死に口を押さえて吐くのを防ぐ


っぅ、痛い、痛い、気持ち悪い


「生意気なんだよっ、あの子とっ、同じ顔してさっ」


一句区切られる事に腹部を蹴られる

その度に吐くまいと必死に口を押さえて痛みが治まるのを待つ

体を縮こまらせて、痛みが最小限になる様にして、ただただそれが終わるのをまった


…ここで反撃して、グランを押し倒して、殴ってしまえば、終わる話だった

だったのにね、なんでできないんだろう

しちゃいけないって、叫んでいるんだ

たった、たったそれだけの話、たった、たったそれだけで終わった話


ねぇ、グラン(ヒーちゃん)


「泣か、ない、で…」


私のその言葉を聞いて、一瞬だけ殴るのを止める

でも、やっぱり私の頭を思いっきり殴ってきた


それだけで私の意識は一瞬で闇に沈む

あ、でも、さっき一瞬脳裏に浮かんだ赤髪の男の子は誰だったんだろう





ローズマリー


(追憶)

(懐かしいあの頃の笑い声)

(ねぇ、君はもしかして私の―――)

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