第二輪
思いが届かないのは当たり前
××
ふざけるな、ふつふつと怒りが湧いてくる
自分の子供達を兵器のように扱うだなんて、絶対におかしい
私は怒りを抑えきれず、男の胸倉を掴んだ
「ふざけるな!!自分の子供をなんだと思っているんだ!!」
ふざけるなよ、孤児院の子供で、血が繋がっていないからこいつはこうも冷静でいれらるのか?
おかしいだろ、こんな事をする為に私たちを生まれてきたわけじゃない!!
相手が意にも介さず、澄ました顔をし続けるのを見て更に腹が立つ
「私も引くわけにはいかないのですよ、復讐する為に」
そう言って平然を湯のみに入ったお茶を飲む
『復讐』
その言葉の所為でどれほどの子供が犠牲になったと思っているんだ!!
しかも負ければ追放?ふざけるなよ!!
それじゃぁ、レーゼ達は全然報われないし、誰も報われないじゃないか!!
私が怒りにまかせて腕を振り上げ、男を叩こうとした瞬間、何者かによって私は畳に押さえつけられた
「悪いけど、父さんに手を出すなら君でも容赦しないよ」
この声……
上を見上げるとグランが私の体を押さえつけていた
なんで、お前はそんなに平気な顔していられるんだよ
「っ、グラン…お前は平気なのかよ、父親に復讐の駒として扱われても…実の子供の代わりでも!!」
そうやって、誰かの代わりに生きて、そうやって自分じゃない人物を見続けられて……それで本当に幸せ?
それで本当に、誰かが救われるのか?
「っ…構わないよ、どんな風に扱われたっていい…この人は、俺達の『父さん』なんだから」
ポロポロと涙がこぼれる
もちろん、グランだって私だって吉良星二郎だって泣いてなど無い
ただ、心が泣いていた
誰かの心が確かに泣いていたんだ
××
マークside
昔、ここら辺で日本人の子供が死んだらしい
昔の話だから俺もよくわからないけど、なんでも要人だかなんだか…偉い人の子供が関わっていたらしくその事件はもみ消されたそうだ
……といっても本当かどうかは謎だ
あくまでそういう話があるらしいと言うだけで、信憑性などはまったく無い
そう言えば、昔ここら辺で赤い髪をした子供の幽霊が出るって噂も流れたな
ディランやフィディオやアツヤ…それにアイツも加わって嫌がる俺を連れ出し、夜ここら辺を張った事もある
結果はまぁ…想像通り何もなかったが
そう言えば、今年にFFIが開催されるという話もあったな
こっちの話はまだ決定していないが、開催される確立の方が断然高い
アイツにも会えるだろうか…いや、会える筈だ
アイツは今でもサッカーをしている、根拠はないが、なぜだかそう思うのだ
今度アイツに会ったら、今度こそ守りきってみせよう
もう、守られるばかりは嫌だからな
××
グランに引きずれら、私は牢獄みたいな殺風景な部屋に連れてこられた
「今日からここが君の部屋だよ」
そう言って投げ捨てられる
部屋の中は埃が積もっていて、お世辞にも衛生的とは言えない
左手の部屋に名ばかりのトイレがあり、右手の部屋に一応カーテンで仕切られている風呂とは名ばかりのシャワーが付いている
更に部屋の奥の固そうなパイプベッドを見ると、そこには見慣れた黒髪の少女が横たわっていた
「っ、はるなん!!」
私は一目散にはるなんの所へ向かう
はるなん、はるなん、ごめんね
巻き込んじゃって、ごめんね
「ん、風丸…さん?」
「はるなん!!」
今度こそ、守って見せるから
みんなみんな守って見せるから
誰一人、悲しまないように
菫
(思い)
(今度こそ守って見せるよ)
(みんなが笑えるように)
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