第一輪

真実は、いつだって無常


××

カコーン、鹿威しの落ちる音が聞こえる

ゆっくりと目を開けると、日本庭園の綺麗な景色が目に入った


…ここはどこだろう?なんでこんな所に居るんだ?


どうやら私は縁側で寝ていたみたいだ

体を起こし、ゆっくりと周りの景色を見る

日本庭園…だよね、なんで私、ここに



「おや、起きたようですね」



声のする方へ顔を向けると、温和そうな男の人が立っていた

男の人は私が起きたのを確認すると、こっちに来なさいとを手招きをする

私はそれに従わないといけない気がして、ふらふらしながらそっちへ向かう

……ここ、どこだろ、私、どうなったんだっけ?



「ふむ、まだ完全には起きていないようですね」


頭の奥がチリチリと焼ける

そうだ、私はあの時エイリア学園の奴等に連れ去られて

たしか、あの時はるなんも…


「っ、はるなんは!!」


そうだ、はるなんはどこに?

エイリア学園の奴等に連れてこられたって事は、ここはエイリア学園?


「まずは座りなさい、話はそれからです」


そう言って座布団に指を指す

っ、それどころじゃないんだよ!!

はるなんに何かあったら、大切な友達になにかあったら

ザワザワと胸の奥が騒ぎ出す


「音無春奈さんなら大丈夫ですよ、ただ眠っているだけです…ですが」


―――あなたの行動しだいでそれも変わります


そう言って再び座布団に指を指す

それを聞き、私は胸の奥で騒ぐ感情を押さえつけ座布団に座った


「っ、それで用件はなんなんだ」


「まず、あなたはエイリア学園のことをどこまで知っていますか?」


エイリア学園?

どこまでってそりゃぁ…突然地球に攻めて来た宇宙人で、ジェミニストームやイプシロン、それにガイアとかってたくさんのサッカーチームがあって、負けると追放されて…


「あなたは疑問を感じた事はありませんか?なぜ宇宙人は他でもない日本を攻めにきたのか、ただ攻めるなら日本よりもアメリカを叩けば世界中に影響がでます、スイスを叩けば世界中の経済が大変なことになりますし、ロシアなどの大国を叩いても同じです…それなのになぜ日本を攻めたと思いますか?」


そりゃ…なんでだ?

そういえばなんでだろう、なんで日本なんだ?

確かに日本だって技術面では優れている

でもこんな小さな島国を征服した所でどうなる?

それならもっとデカイ国を攻めればいい


「他にも、なぜ宇宙人達はあそこまで地球人に酷似していると思いますか?なぜ子供ばかりなのか、なぜ宇宙人に賛同するものが現れたのか」


私は何も言い返せない

一番最悪な答えが頭に浮かんだからだ

ヒントはたくさんあった…それなのに、なんでわからなかったんだ


「なぜ宇宙人を倒すのに子供達が使われているのか、なぜ総理は何もしないのか、なぜ吉良瞳子はあそこまで宇宙人を止めるのに躍起になっているのか」


1つ1つパズルピースが繋ぎあわされていく

なんで気づけなかったんだ

こうやって疑問を並べていくと、徐々にパズルが完成していくではないか!!


「もう、おわかりになったでしょう?」


「っ、あんた、いやあんた達本当に正気かよ」


こんな事をするなんてまともとは思えない

なんで吉良って苗字で最初に気づけなかったんだ

吉良って言えば、吉良財閥と言えば、経済界ではめずらしく孤児院に力を入れている所じゃないか!!


「まさか、あの子供達は…」


「えぇ、私の『子供』ですよ」


最後のピースが、埋められた

そんな、こいつ等正気なのかよ

自分の子供達を戦わせるなんて


宇宙人達だと思っていたのが同じ地球人達だったなんて!!


××


真実はいつだって無常だ

それは何時だって、私たちが望む真実が優しすぎるから

望んでいた物はこんな物じゃなかった


ただ楽しくサッカーがしたかった、ただ楽しく仲間(家族)と笑いあっていたかった、ただ楽しく学校で過ごしたかった、ただ愛する人に愛されたかった、ただ普通に生きていたかった


……ただ、普通に生きていれば、それだけで幸せだった


別に波乱万丈な人生を望んだわけじゃない、普通に生きていたかった

破壊だけのサッカーなんてしたくない、仲間同士で争いたくない、学校が壊されるなんて嫌だ、父さんに愛されたい


当たり前の言葉が吐き出せない、そんな中で、アイツ等は確かに『助けて』と叫んでいたんだ





小菊


(真実)

(誰か助けて)

(それすら叫べなかった)




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