the 4th day[2/14]

バランスを崩したところを突き飛ばされて、仰向けの体勢で脇のベッドに倒れ込む。
びっくりして言葉も出ない俺の上に馬乗りになって、アスカは巧みな手つきでベルトを外し、ファスナーを下ろした。あまりの速さに恐怖すら覚える。

「ア、アスカ……」

スルスルとズボンがボクサーパンツごと膝まで降ろされて、あっという間に俺のあそこは剥き出しになった。

「全然勃ってないね」

当たり前だ。この状況が怖くてむしろ萎えてる。
それでもアスカが俺のものを手にした途端、ひんやりとした手の感触に思わず身震いした。ゆっくりとその手が上下に動き出せば、背筋を堪え切れない感覚が伝っていく。

「……ふっ、ぁ……」

萎えていたものが次第に勃ち上がって、熱を帯び始める。丁寧にそれを扱く美しい手の動きに、俺は自分が置かれてる立場も忘れて見入ってしまう。
じわじわと湧き起こる快感に流されまいと、息を吐いて逃がす。
このペースなら、大丈夫だ。そう思った瞬間、アスカは腹に付きそうなぐらいすっかり勃ち上がってる俺のものに息を吹き掛けて、一気に最奥まで咥え込んだ。

「あ、あ……ッ」

上擦った声が漏れた。濡れた桜色の唇で俺のものを扱きながら、アスカは舌を絡ませて音を立てながら吸っていく。その顔が、どうしようもなくエロかった。
後から後から、強烈な快感が生まれては波のように身体の隅々まで広がって浸透していく。

「……ん、ン……ぁッ」

身体の中心にわけのわからない熱がこもって、どんどん息が上がってく。
最後に自分でしたのって、いつだっけ? 思い出せないぐらいだから、結構溜まってるかもしれない。
アスカは艶やかな唇をすぼませて、先端から奥まで舌を使いながら扱いていく。上目遣いで俺の様子を窺うその瞳が、なぜか笑ってるように見えた。

「あ、ぁ……ッ」

唇が急に離れて、名残惜しさについ喘いでしまう。アスカが俺のものを片手で扱くと、濡れて光る先端から粘度の高い蜜が溢れて伝い落ちた。
呼吸が苦しくて、酸素が足りない魚みたいに大きく口を開けて喘ぐ。頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。

「ヒナ、余裕ないね」

理性を全て絡み取るような艶やかな微笑みだった。込み上げる射精感に、掛時計を見上げる。まだ、二分しか経ってない。

「……ん、っく、ぁ……ッ」

ただ片手で扱かれてるだけなのに、逃がしきれない快楽に涙が滲み出す。

「いいよ、我慢しなくて。苦しいでしょ」

出したい。出したい。それしか考えられないのに、負けたくないっていうその一心で必死に自分を繋ぎとめる。
溢れる先走りが滴ってはリズミカルに動く手を濡らしていく。追い討ちを掛けるように、アスカは俺の耳元で囁いた。

「ねえ。ヒナの好きな人の名前、何て言うの……」

理性が完全に崩壊した頭の中に飛び込んできた問い掛けに、止める術もなく一瞬で顔が思い浮かんだ。

──雄理。

ぐらりと視界が揺らぐ。アスカがもう一度俺のものを咥えた瞬間、身体の中に燻ってたものが弾けて、全てを放ってしまった。

「あ、んっ、あぁ……ッ!」

我慢してた分、凄まじい快楽の余韻が全身に広がる。長い収縮の間、アスカは俺のものを搾り取るように咥え続けてた。
やっと収まって、身体がぐったりと弛緩していくのを感じながら目を開ければ、アスカが俺の出した熱を飲み下してるところだった。
酸欠になりそうなぐらいに乱れた呼吸の中、俺は呆然とその光景を見つめる。
アスカは嬉しそうに微笑みながら、顔を覗き込んでくる。
花のような甘い匂いが鼻を掠めた。

「僕の勝ちだ、ヒナ」





アスカと二人で歩いて出勤して、事務室に入るとちょうどユイが出て行くところだった。

「ヒナ、どうかした? 顔色が悪いけど」

そりゃそうだ。なんせ俺は、今から仕事を抜けようとしてるんだから。

「腹が痛いんだ。病院に行かせてもらおうと思って」

アスカに指示された通りに下手な芝居を打つ。緊張のあまり本当に具合が悪くなりそうだった。

「大丈夫? 昨日僕が付き合わせたから、身体が冷えちゃったかな。ごめん」

「ユイのせいじゃないよ」

本当に心配そうなユイの顔を見て、胸がチクリと痛んだ。

「ユイ。携帯の番号、教えて」

いつも会ってるから、俺は今までユイの連絡先を知らなかった。ユイは電話の横にあるメモに番号を走り書きして手渡してくれる。

「辛かったら、遠慮せずに連絡して。僕も休みをもらって看病に行くから」

ユイは本当に優しくて、何も疑わずに俺を安心させようとしてくれる。女の子みたいな可憐な笑顔を見てると胸が苦しくなって、堪らずユイを抱きしめた。

「ありがとう」

大切な友達だけど、ユイとはずっと一緒にいられるわけじゃないんだ。ふとそんなことを思って悲しくなった。

「ヒナ、大丈夫だからね」

ユイの天使みたいな優しい笑顔を、俺は脳裏に焼き付ける。





腹が痛いから、病院に行かせてほしい。
そう言って、俺は澤井さんの前で小さく呻きながら屈み込んでみた。冷ややかな瞳が猿芝居を見透かさないか不安で堪らない。心臓が痛いぐらいにドキドキして、本当に胃が痛くなってきた。

「それじゃあ仕事にならないな。行ってこい」

「僕が連れて行きます」

アスカが車のキーを手にして、澤井さんに申し出る。
よかった、ばれなかった。
俺はそのままアスカに抱えられるように事務所を出た。外に足を踏み出した途端、二人で足早に駐車場へと駆けだした。







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