「あ、李一くん、出ちゃう、よ……」こんな汚いものを李一くんの口の中に出すなんて、絶対にダメだ。必死に引き抜こうとするのに、李一くんは離してくれなかった。こうなったら出すのを我慢するしかない、いやそれこそ絶対に無理だ。縺れる思考は性欲に呆気なく攫われて、俺はとうとう温かな口内に包まれたまま精を迸らせてしまった。「ダメ。李一くん、出して」慌てて口元に掌を差し出すけれど、李一くんはそれをガン無視して険しい顔をしたまま濡れた口元を指先で拭う。その後に続くのは、ごくりと喉が鳴る音。わあああー! どどどどうしよう!「なんで飲んじゃったの。お腹壊しちゃうよ」一瞬すごい顰めっ面になったのは、相当苦かったからに違いない。それでもすぐに涼しい顔に戻って、李一くんは吐き捨てるように言う。「壊すわけがない。ただのタンパク質だろ」ひええ、そういう問題?心臓がめちゃくちゃな速さで高鳴ってる。今まで李一くんから強いられてきたどんな羞恥プレイより今のが一番恥ずかしいよ。スッキリしたけど、ドキドキが止まらない。李一くん、一体どうしちゃったんだろう。「湊人。僕、カレーが好きだから。優勝しろよ」李一くんは上目遣いでそう命令して、腕時計を示してくる。ああ、もうミスコンの集合時間なんだ。「自信はないけど、頑張るね」優勝なんて無理だってわかってるけど、それが李一くんの望みならできる限りのことはしなくちゃいけない。俺は命令どおりノーパンのまま、空き教室を後にして集合場所へと向かう。*****グラウンドに設置された特設ステージの裏に行けば、ミスコンの参加者は既に集合していた。各学年10クラスあるから、参加者は30人になるはずだ。だいたいクラスに1人ぐらいは女装映えしそうなかわいい顔をした人はいるもので、各クラスの精鋭に囲まれた俺はもう居た堪れなくてすぐにでも回れ右をして帰りたい気分だった。そもそも俺はこんなふうに人前に出るようなキャラじゃなくて、しかもなんでかノーパンなんだけど。それでも、愛しい李一くんのためなんだから、ここを逃げ出すわけにはいかない。緊張しながら所在なく立っていると、遠くから真っ直ぐこっちに近づいてくる影が目に入った。どこの学校の子だろう? テレビの世界から飛び出してきたような美少女が、ふわふわの髪を揺らしながら歩いてくる。男子校にこんなかわいい女の子が1人でウロウロしてたら危ないよ。皆が目を丸くして見つめる中、その子はなぜだか俺に向かって素っ頓狂な声をあげた。「あれ? ミイくん?」「え? ええ?」真近で見れば、間違いなくその子は隣のクラスの七瀬くんだった。なんだこの殺傷能力を伴う愛らしさは。もはやこんなお遊びのミスコンなんて出ちゃいけないレベルじゃないか。 - 44 - bookmarkprev next ▼back