椅子に腰かければ、向かい合わせに座った李一くんが俺の顔に下地を塗っていく。そのあとは、パウダーのファンデーション。慣れた手つきでメイクをされて、何だか不思議に思う。そういえばこの化粧品は全部使いかけだ。李一くん、てっきりT大の理Vを目指してるとばかり思ってたけど、もしかしてメイクアップアーティストになりたいのかもしれない。アイシャドウにアイライン、マスカラ、チーク。次から次へと繰り出される魔法の道具。こんなことを毎日してるなんて、女の人って本当にすごいなと思う。されるがままに身を委ねていると、顔全体に粒子の細かい粉をはたかれる。どうやらこれで終わりらしい。李一くんは最後に真新しい小さな箱からルージュを取り出した。こっくりとした紅色のそれを俺の唇に塗って、口を開く。「……できた」李一くんが心ここに在らずという顔をしているのは、きっと俺のクオリティの低さにガッカリしているからに違いなかった。「どう? やっぱり、おかしいよね」俺じゃなくて李一くんだったら、優勝が狙えるのに。いや、優勝したところで賞品のカレーチケットクラス人数分だなんて、別に欲しくないんだけど。じっと見つめて返事を待ってると、気まずそうに視線を逸らされる。心なしか頬が赤い。「いいと思うけど」えっ、本当に!?俯いてぽつりとそう呟く李一くんはめちゃくちゃかわいくて、俺は思わず腕を伸ばして抱きしめてしまっていた。ドクドクと伝わる鼓動はどちらのものともつかない。教室に2人きり。内側から鍵を掛けてるから、誰も入って来られない。「り、李一くん」やがてどういうわけか、李一くんがワンピースの裾からおもむろに手を挿し入れてきた。言い忘れてましたが。俺、パンツを履いてません。勿論李一くんのご所望です。もう勃ち上がりかけているそこに触れるひんやりとした感触に思わず引けていく腰を、ガッチリと抱え込まれてしまう。「え? あ、ちょ……ッ」俺の腕からすり抜けた李一くんは、屈み込んでワンピースの裾を捲り上げた。剥き出しになったそこがピクリと掌の中で跳ね上がる。何度か緩々と扱きあげられて、気持ちいいけどわけがわからなくて焦る俺を物ともせず、李一くんは口を大きく開けてずっぽりとそれを咥え込んだ。えええ ─── !!「え、えっ、李一くんっ」「うふはい」何を言ってるかはわからないけど叱られたのは確かで、パニックになった俺は呆然と立ち竦んだまま与えられる強烈な快感を拒むことなく受け入れてしまっていた。だって! 李一くんが、俺のを! 食べてるよ ─── !今夜は絶対、お赤飯にしよう。今日炊かないで、いつ炊くんだ。李一くんの絶妙な舌遣いにひとたまりもなく、俺は高みへと導かれていく。 - 43 - bookmarkprev next ▼back