the Way You Are - side M -[1/6]

聞いてください。

俺は今、辱めを受けています。



一応我が桜朋高校は名だたる進学校で、旧帝国大学への高い進学率がウリだったりする。その文化祭ともなると、毎年各メディアで話題になるほど本気度が高い。
本気のジオラマ、本気のミュージカル、本気のパソコン製作。
それゆえ、クラスの委員長を務める李一くんと形ばかりの副委員長である俺はさぞかし準備に忙しかったかというと、実は全くそうでもなかった。各クラスから選出される実行委員や凝った趣味を持つ人たちが鮮やかに段取りを組んでくれて、難なく文化祭当日を迎えることができたからだ。
うちのクラスの出し物は、ドキュメンタリー風ドラマの製作だった。
つまり、撮影や編集はもう終わっていて、文化祭当日は上映の準備ぐらいしかすることがない。そのお陰で俺は、文化祭2日共を視察と称して大好きな李一くんと一緒に回ることができた。

校内は他校の生徒や保護者で賑わっていて、ちらほらと取材に来たマスメディアの人らしき姿も見える。男子校だから、ここぞとばかりに彼女らしき女の子を連れてる男子生徒もいる。
こうして李一くんと一緒に歩いていると皆が振り返ってこっちをまじまじと見つめてくる。だって、李一くんは本当にカッコよくて素敵なんだ。登下校の時に他校の女の子たちが李一くんを遠巻きに見ていることも知ってる。だからと言って、けっして調子に乗ったり浮かれたりはしない。うちの学校の王子様は、孤高の人。俺にとっても近くて遠い存在だ。

だから、いくら李一くんがきれいな顔をしていたって、今年度初めて開催されるクラス対抗ミス桜朋コンテストなんて俗っぽいイベントに、当然参加するわけなんかなくて。


『副委員長が、出たいらしい』


クラス会で発せられた王子様の一声で、俺は女装してミスコンに出ることになってしまった。

俺が、女装して、ミスコンとか!
ねえ。これ、何の罰ゲーム?






そんなわけで俺は今、李一くんの目の前で女装中です。
屈辱かと言われると全くそんなことはなくて、李一くんには今まで散々恥ずかしいところを見られてるから今更どうってことはないんだけど。
でも人前に出るのは、やっぱりかなり抵抗がある。
李一くんが調達してくれたのは、サテン生地でできた青色のワンピースに茶髪のロングヘアーのウィッグ。26センチのパンプスとか、ちゃんと売ってるんだね。きっとこれもいつも猥褻なグッズを買うのと同じように、ネットで買ってくれたんだろう。

空き教室でおっかなびっくりワンピースに着替えた俺は、李一くんと2人向かい合って立っている。なんとこれからメイクをしてくれるっていうんだ。
李一くんがカバンの中から高級ブランドのロゴが付いた化粧ポーチを取り出していく。そこから出てくるのは、ファンデーションにチーク、アイシャドウやらよくわからないメイク用品の一式。全部を机の上にきれいに並べてから、李くんは端的に命令する。


「座れ」



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