七瀬くんが帰ってからもう一度2人でベッドに入ると、一段と大きな雷の音が鳴り響いた。さっきよりもこっちに近づいて来てるような気がする。空が光る度に、手を伸ばせば届く位置にいる李一くんの身体がピクリとわななく。 そんな李一くんがかわいそうで、俺はなけなしの勇気を出して少しずつ距離を詰めていった。 こちらに向けられた小さな背中は、華奢で頼りない。
「李一くん」
声を掛けて後ろからそっと包み込むように抱きしめれば、腕の中の身体がもぞりと動いた。あったかくて気持ちいい。
「何だよ」
「あの」
俺はただ、安心させてあげたくて抱きしめてしまっただけなんだけど。でも、李一くんの抱き心地は極上で、ずっとこの体勢でいられる理由を何とか探そうとする。
「あの、セックスしようか」
どうしようどうしようと考えているうちに、なぜだか口をついて出た言葉が、よりによってそれだった。
「李一くんは何もしなくていいから」
「………は?」
いや、そうだよね。この状況で、それはないって。自分で言っておいて何だけど、めちゃくちゃ引くよね。 言い訳にもならないけど、こうして李一くんのことを抱きしめてるだけで俺のあれはもうガチガチになって、思考が完全に性欲に持って行かれちゃって、口が勝手に動いただけなんだ。
「あああの、ほら、少しは気が紛れるかもしれないしなと思っただけ。いやに決まってるよね、ごめんなさい」
咄嗟に続けた苦し紛れの言い訳に、意外にも李一くんは文句を言わなかった。それどころか。
「好きにしろよ」
えええ ─── !マジですか?
振り向きもせずにぽそりと投げかけられた返事に、俺はすっかり舞い上がってしまう。 李一くんと、普通のセックスができる。いやあの、普段してるセックスがいやっていうわけじゃないんだけど。それでも何だか感慨深くて、じんとくる。
「おい、早くしろよ」
「ハイ、すみません」
怒った声で急かされて、恐る恐る李一くんの服の裾に手を差し入れる。つるりとした肌を撫で上げながら胸の突起に触れれば、肩が小さく動いた。 首筋に唇を押しあてて指先で優しく転がせば、押し殺した吐息が聴こえてくる。きちんと快感を拾ってくれてることが嬉しい。
「李一くん、前も触っていいですか」
「いちいち訊くなって」
その声にはさっきよりも勢いがなくて、少しずつ李一くんの意識が溶け始めてるのがわかった。
ハーフパンツの中に手を入れて、下着と一緒にずらして李一くんのそこに触れればもうちゃんと反応して勃ち上がってた。熱い昂ぶりを握りしめてゆっくりと動かすと、すぐに上擦った声がこぼれ出す。
「……あ、あ……っ」
李一くんのこの声が好きだ。我慢しようと何度も呑み込もうとして、それでも途切れ途切れに漏れてくる声が色っぽくて、背筋がゾクゾクする。首筋や肩にキスを降らせながら優しく扱いていくうちに、先端から溢れ出した蜜が俺の手を濡らしていく。
「 ─── あッ、も、ぁ……」
「うん、わかった」
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