Stay with Me[3/9]

あの、それは別にいいんだけど。

ただ俺今ちょっと、完勃ちなんですけど。

案の定、恐る恐るバスルームから出てきた俺の身体に視線を滑らせた李一くんは、「変態」と一言冷たく吐き捨てた。なのに俺の半身ときたら、見られてることに反応して一段と大きくなってしまう。
だって、お風呂上がりの李一くんは最高にエロい。ほんのりと上気した頬がかわいくて、さっきから俺の心臓は壊れたように早鐘を打ってる。

李一くんはTシャツとハーフパンツという格好だった。王子様だからシルクのパジャマを着てるイメージだったんだけど、まあこれが普通だよね。
でも何の変哲もない部屋着でも李一くんに掛かれば高貴な服に見えるんだから、本当に不思議だ。

ドライヤーでざっくりと髪を乾かして、コンタクトを取ってしまえば途端に視界がぼんやりと霞んでしまう。すぐ近くにいる李一くんの顔さえ、頼りない感じにぼやけてる。視力が悪いのってすごく不便なんだけど、この視界が俺は嫌いじゃない。裸眼の世界はいつだって淡くて優しいから。

寝る支度ができたところで、李一くんの後に続いて寝室に入る。灯りを消していつもセックスをするベッドで隣り合わせに寝転ぶと、何だか不思議な心地がした。
李一くんとこうして一晩を過ごすことになるなんて、思ってもみなかった。このまま眠ってしまうのがもったいなくて、今夜は寝付けないかもしれない。
時折雷の音が鳴る度に、李一くんがビクビクと身じろぐ。本当に苦手なんだ。かわいそうで見てられない。
でも勝手に抱きしめたら怒られそうだし、何とかして李一くんのプライドを傷つけずに少しでも安心させてあげることができればいいのに。


「李一くん」


どうにか不安を取り除いてあげたくて声を掛けたその時、ピンポンとインターフォンが鳴った。
壁の掛け時計を見れば、9時半を指してる。こんな時間に、一体誰だろう。

李一くんは手を伸ばして枕元にあるインターフォン用の子機を取った。その小さなモニターに映し出される姿をこっそり横から覗き見て、俺は仰天する。なぜならそれは、紛れもなく隣のクラスのめちゃくちゃかわいい男の子だったからだ。
普段見る制服姿とは違うラフな格好をしてるけど、間違いない。


「七瀬、おいで」


一言そう応答して、李一くんはエントランスの解錠ボタンを押した。
しばらく間をおいて、インターフォンが鳴る度に解錠ボタンを押すことを繰り返す。3ヶ所のオートロックを通過した七瀬くんは、まもなくここにやって来る。
李一くんは身体を起こしてベッドから立ち上がり、寝室の扉を少し開けたまま部屋を出て行く。やがて、玄関のインターフォンが鳴って、デッドボルトが回る音が続いた。李一くんが鍵を開けてるんだろう。


「リイくん!」


扉が開く音と共に聞こえてくるのは弾けるように元気な声。寝室から玄関の距離は近いから、何となく隠れなければいけない気がして、俺は身動きもせずに息を潜めていた。


「よかったあ。何回か携帯に電話したけど、通じなかったから、心配して来ちゃった」


「ごめん。手元に置いてなかったんだ。多分、電源が切れてる」


「それならいいんだ。顔見たら安心したし。ふふ」


同じ中学出身の2人は、随分仲がいい。少なくとも、こうして李一くんが心を許しているのは俺が知る限り七瀬くんだけだ。


「 ─── あれ? お客さん?」


声のトーンが変わった。そうだ、隠れても意味がない。玄関に靴を置きっ放しだったんだ。


「ああ。そうだ、紹介しようか」


いやいやいや。李一くん、嘘でしょ? だって俺、真っ裸だよ? ちょっと七瀬くん、断って!



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