そう言って恐る恐る抱きしめると、腕の中の身体が小さく身じろいだ。そのまま腰を突き上げれば、今までよりもずっと大きな声が耳元で聞こえてくる。 深く、浅く。李一くんを揺さぶりながら波のような抽送を繰り返すうちに、心臓に悪い艶やかな喘ぎ声が部屋に響き出す。
「あぁ、はっ、ん……ッ」
そんな声を聞いたらまたすぐにイっちゃいそうで、思わずその唇を自分のそれでそっと塞いでしまう。 舌を挿し込んで、李一くんの柔らかな舌に絡めていく。濡れた音と一緒になって熱い吐息が隙間からこぼれて、それを掬うようにまた唇を重ね直して。どこもかしこも繋がって、どっちがどっちだかわからなくなるこの瞬間が俺は好きだ。 唇を離して李一くんの中を優しく穿ちながら、俺は自分の想いを口にする。
「李一くん、大好きだよ」
そう言った途端、李一くんの中は反応して俺をぎゅっと締めつける。李一くんにとって、俺は単なる下僕。だけど、俺にとって李一くんは大事な人だ。そこをちゃんとわかってもらえればいいなと思ってる。
「ん、あ、湊人……ッ」
名前を呼ばれて、また俺は一段とのぼせてしまう。李一くんの理性が振り切れ掛けているんだろう。髪を撫でながら追い上げるように腰を上下させれば、もう一度名前を呼ばれた。限界が近い証拠だ。かわいい王子様を抱きしめながら、俺は耳元でお願いする。
「李一くん、イっていい?」
返事がないのは余裕がないからかもしれないけど、それを肯定と勝手に受け取って俺は頂上を目指していく。
「……ッ、あぁ、イく……ッ」
甘く上擦った声と共に李一くんの中が何度も収縮を繰り返す。それに堪え切れずに俺は1番奥へと熱を放ってしまっていた。 縺れ合う呼吸さえ、愛おしく感じる。 くたりと弛緩する身体を抱きしめて、そういえば李一くん、シャツを着たままだったなと気づく。汗でベッタリと張り付いてるから、こうなる前に脱がせてあげればよかったと思う。そこまで気が回らなかった自分が悲しいけど、この透けてる感じもエロくて好きだ。変態でごめんなさい。
「李一くん」
抱き合ったまま声を掛ければ、李一くんはゆっくりと顔を上げて俺を見る。長い睫毛の下から覗く瞳は焦点が定まらない。それが何とも色っぽくて、また胸がキュッと縮こまる。
「今日、晩ごはん作ってもいい?」
何でもできる王子様は、実は料理があまり得意じゃない。だから、こうして家にお呼ばれしたときは俺が作らせてもらってる。お呼ばれっていうより連れ込まれてるという表現の方が近いかもしれないけど。
「オムライス……ケチャップ多めで」
視線を落として小さな声でぶっきらぼうにそう言うのがかわいくて、つい頬が緩んでしまう。
「わかった。すぐ作るね」
かわいい李一くんが大好きだ。 俺は李一くんしか知らない。でも、李一くんだけでいい。 手錠なんかで繋がれなくても、俺はもうとっくに李一くんに囚われてしまってる。
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