Your Pleasure[2/6]

ここまで厳重だと、何だか恐ろしく感じられる。セキュリティが万全過ぎて、部外者で庶民の俺は足を踏み入れる度に後ろから撃たれそうな気がするんだ。

エレベーターホールから出てすぐの部屋が、李一くんの住むところだ。25階の広々とした3LDK。李一くんが1人でここに住む理由を、俺は知らない。怖くて訊けないというのもあるけど、そこには複雑な事情が絡んでいるんだろうし、あえてそれに触れるわけにはいかないと思ってる。

李一くんに続いて俺はおどおどしながら部屋に入る。扉を閉めるとカチリとオートロックが掛かる音と共に、振り返った李一くんが俺を真っ直ぐに見据えた。

ああ、来た。

グッと胸ぐらを掴まれて、顔が近づく。鼻先の距離で李一くんは、学校では絶対に見せない愉しそうな顔で、にたりと笑った。


「さあ。何して遊ぶ?」


何でもいいよ。どうぞお手柔らかに。




一体どうしてこうなっちゃったんだろう。

同じクラスになって俺を副委員長に指名してきたその日から、李一くんはなぜだかいろんなことを要求してきた。もう少し髪型を何とかしろと言われたから、今まで行っていた近所の床屋さんじゃなく、生まれて初めて美容院に行って伸びっぱなしでボサボサだった髪をお洒落なカットにしてもらった。コンタクトにしろと言われて、眼鏡をやめた。猫背を直せと言われて、意識してるうちに随分背筋が伸びた。
そしてある日ここへ連れて来られた。そういう要求と同じ口調でセックスしろと言われて、俺は李一くんとセックスした。
逆らうなんてとんでもなかったし、そもそもそんなことは考えもしなかった。
だって、李一くんの命令は俺にとって絶対だから。

そんなわけで、俺はこの2ヶ月、時々こうして放課後にこの部屋に来て、李一くんとセックスをしている。
だけど、何て言うか李一くんとするセックスは、変わってる。いや、俺の初めては李一くんに捧げてしまったので、つまり俺は李一くんとしかセックスしたことがなくて他の人がどうなのかも知らないんだけど、それでも多分変わってる、と思う。

もちろん普通にセックスするだけのときもあるんだけど、それだけじゃない。なぜだかスカートを履かされたこともあるし、変な薬を飲まされてぶっ倒れるまでセックスしてしまったこともある。尿道に細い棒を突っ込まれたこともあるし、実はその時にそれを後ろの孔にもちょっと挿れられてしまってる。だから、よくこんなところにいつも俺のを挿れちゃえるなと俺は密かに李一くんのことを心から尊敬している。

そうです。俺はこれでもバリタチです。


「……あの、李一くん」


「何」


上目遣いが艶かしい。とか、そんなことを言ってる場合じゃない。
クイーンサイズの大きなベッドの上で、俺はなぜだか素っ裸で壁に背を付けて座っている。無防備に曝け出されたそこはもう痛いぐらいに張り詰めていて、うっすらと先走りが滲み出てキラリと光る。苦しさのあまり、俺は思い切ってお願いしてみる。


「えっと……1回イかせてください」


「ダメ」


そう言われるとは思ってたけど、やっぱり即答だった。李一くんは制服のシャツ1枚だけを羽織ったまま、屈み込んで俺の乳首に息を吹きかける。そこからチリチリした快感が生まれて反射的にビクンと肩が動けば、こっちに向けられたふたつの瞳が俺を映し出した。


- 20 -

bookmark





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -