the Gate for God[5/7]

肌が合わさる感覚を愉しむようにゆらゆらと自ら腰を揺らし、中を締めつけてくる。

崇める神とひとつになりながら蕩けるような快楽を享受し、俺は自らの罪と向き合う。







私の犯した最も深き罪は、
貴方の冥護を存じぬことでした。






******



光の中に羊の民を放っている間、流伽は門の前へと来るようになった。

羊の民が誤って門を潜らないようにというのが、その名目だ。けれど、流伽が俺に興味を持っていることにはどことなく気づいていた。

羊飼いは羊の民を率いながら光のあるところを求めて流浪する。光から光へと世界を移ろうから、定住することがない。

だから流伽は、今までに渡り歩いてきた世界の話をよく聞かせてくれた。

極彩色の花が咲き乱れる世界。浄らかな水の流れる世界。緑で覆われた森の世界。

人々が行き交い暮らす三千世界の話は、この門の前と主のもとへしか行くことのない俺にとって、どれもこれも不思議で興味深いものだった。


『あなたは、門を守る前は何をしていたのですか』


『憶えていないのだ』


『 ─── え?』


『気がつけば、俺は主の前にいた。それ以来この門を任されている』


俺の最も古い記憶は、主に与えられたあの赤い実を口にしたときのものだ。

その次に与えられたのは、守門という役目。

目に見えるあらゆるものがこの門を通ることのないよう見張っていること。それが、主が俺に授けた命だった。


『そうなのですね』


流伽は俺の隣で小さく頷く。柔らかそうな髪がさらさらと靡いていた。羊の民が来てから、ここにはいい風が吹くようになった。


『あなたの神は、名はなんとおっしゃるのですか』


『主に名はない』


そう答えながら、俺は少し考える。


『いや、あるのかもしれない。けれどそれを聞いたことはない。主は主だ。名など必要がないからな』


『では、何の神なのですか』


『何の? 主は総てを司る神だ』


俺の言葉に、流伽は少し考え込む素振りを見せた。世界には多くの神が存在し、それぞれの事象を司っているという話を俺が流伽から聞くのは、もう少し先のことだ。

1人で門の前に立つ俺にとって、流伽と過ごす時間はいつしか掛け替えのないものになっていた。主への愛とは異なるが、俺は確かに流伽を愛していた。

ずっとこうして過ごすことができれば、どれだけ幸せだろうか。叶わぬ夢を見ながら、俺は近いうちに来る別れのことを考えまいとしていた。






季節は移ろい、世界に影が射す日が多くなってきた。日に日に陽の昇る時間が短くなっていく。


『珠利。私たちはそろそろ行かなければなりません』


そう切り出した流伽の表情は、これまでに見たこともないほど思い詰めたものだった。



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