「あ、しゅう、ご……さ……、あぁ……っ」
顔の見えないこの体位が嫌いで、振り返りうっすらと目を開けてそれを訴えれば、ずるりと一気に引き抜かれて喪失感に身を震わす。
失う感覚さえ気持ちいいだなんて、この身体はどうかしている。
「夏巳」
身体を反転させられて仰向けになれば、僕の瞳を覗き込む顔が見えた。
「柊悟、さん……」
僕を見つめるその双眸は情欲に濡れて妖しく煌めく。
ああ、なんて美しいのだろう。
葉月がこの人を愛した理由がよくわかる。
ゆっくりと顔が近づいて、伸びた髪が僕の頬に触れる。
「夏巳、綺麗だよ」
ねえ、僕にはわかるよ。
葉月が死んだあの日から、あなたは僕に葉月を重ねている。
僕を抱くことで、あなたは葉月と交わっている。
触れる唇の隙間からぬるりとした舌が挿し込まれ、僕は飢えた雛鳥のようにそれを受け容れる。
唇を離せば起き上がった柊悟さんが僕の両脚を掲げて肩に乗せる。
宙に浮いた腰を両手で掴まれて、そのまま一気に奥まで貫かれた。
「─── ああ、あ……ッ!」
熟れた果実が地面に落ちるような音を立てて、求めていた熱が最奥まで到達した途端、僕の半身からは白濁が迸り身体を濡らしていた。
胸に飛び散ったものを中指で掬って、柊悟さんは僕の口元まで持ってくる。快楽に融けた僕はその指を咥えて丹念に舐めていく。
この人はこうして形を失うほどドロドロに蕩けた僕を見るのが好きなのだ。
「ああ、あッ、柊悟、さ……っ」
再び始まった抽送に意識を揺さぶられながら、僕は本能のままに喘ぎ求める。
いっそのことずっとこうしていたいだなんて、下らない欲が湧き起こっては頭の中を忙しなく廻っている。
肌を打ち付ける音に混じり、ぐちゅぐちゅと泡立つような水音が響く。
苦しいぐらいの快楽は、もはや罰に近い。
一度囚われれば、離れられない。まるで麻薬のようだ。
「ああ、は……っ、も……、イかせて……ッ」
限界まで追い上げられて必死に訴えれば、柊悟さんは律動の速度を上げていく。
繋がる部分から生まれる快楽が全身まで行き渡って、受け止め切れないところまで達した瞬間弾け飛んだ。
「─── ああ、ア、あぁ……ッ!」
強く収縮する奥の深いところに熱い飛沫が放たれたのを感じて、僕は歓喜の声をあげる。
最後の一滴までをも搾り取るかのように、内壁はうねりながら何度もこの人を締めつけていく。
快楽がもたらす余韻の中、荒く呼吸しながら前に倒れこんでくる身体を受け止めて強く抱きしめる。
こうして肌を合わせれば湧き起こる、この醜く蠢くおぞましい感情。
甘美な郷愁にも似たそれに、僕は名前を付けたくはない。
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