「ん、夏巳……、ここ?」
この身体のことはもう僕よりも知り尽くしているくせに、わざとそんな風に言って内側を蹂躙していく。ガクガクと力の抜ける身体を両腕で支えながら、僕は額をシーツに押し付けて何度も頷く。
身体が燃えるように熱くてたまらない。
「ああ、イきそ……っ、あ、あッ」
一度熱を放ったはずのものはまた勃ち上がっていて、先端からダラダラと涎を零している。
あと少しのところでわざと動きを止められて、僕は苦しさに喘ぎながら後ろを振り返る。
『葉月にもこんな意地悪をしてたの』
いつだったか、冗談のようにそんなことを訊いたことがあるけれど、この人は笑って否定するだけだった。
それを見て、僕はひどく安堵したものだ。
葉月が僕のように我を忘れ快楽に呑まれて喘いでいるところを、どうしても想像できなかったから。
葉月が愛されたベッドで、葉月の愛した人に抱かれ、淫らな声をあげて善がっている。
自分の置かれたこの状況を自覚する度に、僕は悦びに震える。
「─── 夏巳、イきたい?」
無理な体勢のまま頷けば、柊悟さんは指の動きを激しいものへと変えていく。
濡れた音の細やかに跳ね上がるような抽送を繰り返しながら、弱い部分を集中して攻められれば、僕はひとたまりもなく高いところへと押し上げられてしまう。
「ふ、あ……あァ……ッ!」
奥でバラバラと指を動かされたその刺激で、呆気ないぐらい簡単に果ててしまう。うねる中は何度も収縮を繰り返しながら、指を咥え込んだまま締めつける。
「ああ、あ……ッ」
ずるりと引き抜かれれば、失ってしまった感覚に身体の力が抜けていく。
甘やかな余韻を味わううちに、自分の中から何かがじわりじわりと融け出していく。それがえも言われぬほどに強い情動であることは、今更否定しようもない。
酸素が足りなくて喘ぐ魚のように、口をパクパクと開けて呼吸しながら、僕は懇願する。
「柊悟さんのが、欲しい……」
その言葉を待ち受けていたかのように、柊悟さんは僕の腰を抱えて自分の方へと引き寄せる。
濡れた後孔に熱をあてがわれれば、無意識にそれを呑み込もうと僕の腰は押しつけるように動いてしまう。
最初にこの人に近づいたのは、僕だ。
けれど、葉月と結婚してすぐに僕とも関係を持つようになった柊悟さんが何を考えているかなんて、僕には到底わからない。
この人が僕に執着する理由も。
僕がこの人に執着する理由も。
そして、この執着を何と呼ぶのかも。
僕は何ひとつ、知らないのだ。
「─── ああ、ん、は……ッ」
解されて果てたばかりのそこはいとも容易くその質量を呑み込んだ。
熱い昂ぶりが奥深くまで僕を穿ち、引き抜かれていく。
閉じることなど忘れてしまった唇からは、律動に合わせてとめどなく声が零れる。
嬲り殺されようとしている虫がもがくように、僕は身体をしならせてシーツを掴み這いつくばる。
与えられる快楽を貪欲に追い掛けていくうちに、意識は曖昧に揺れていく。
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