10,夏休み(天羽戒編) 不安が募っても大丈夫
「色んな店があるねー」

「そ、そうですね」

あの黒歴史と言ってもいい、戒さんと俺の初対面の思い出に花を咲かせたあと

早速、地下にある駐車場に止めた後
ショッピングモールに向かった
そこまで遠くはなかったので、すぐに着いた

そこから暫くして、戒さんは「色んな店があるねー」と言った

突然、当たり障りのない言葉を言ってきた
俺は「そ、そうですね」と言った

らしくもなく、これが当たり障りのない会話か

と思っていた

何故そんならしくもない事を
言ったのだろうかと思った

...いや、戒さんってそう言うタイプだよな

ほのぼのとしていると言うか、
中身のない事を言ったり
「わあ、見て京くん、快晴だよ」とか、「この電動マッサージ、形がうさぎみたいだね」
とか、幼稚じみた例えで言ったり

でも、そこが可愛かったり........

おっと、何言ってるんだ俺

「...」

「...」

いつもより戒さんが静かだ

「........」

よーく、戒さんの顔を見ると

「......」

「大丈夫ですか」

「......」

なぜか魂が抜けたような顔をしていた

真顔なのか笑顔なのか分からない表情をしていた

「あの、」

「だいじょうぶ、だよー、」

「でも、顔真っ青ですよ」

「そんなー、ばかな...」

そう言うと、ふらっと自分の方に倒れてきた

「っと、」

ぎりぎりのところで受け止めた

とりあえず、座るところに...

結構人がいる
進むのも大変、という程でもないが

人が空いている方に行こう





「戒さん、座って下さい」

「あ、ありがとう」

人混みから少し外れた所に、
芸術品のような椅子が沢山ある場所があった

座りよさそうな長方形の椅子に座った

「飲み物買いましょうか、何がいいですか?」

「水...おねがいします」

「分かりました」

近くにある自動販売機に買いに行った

「はい、どうぞ」

「ありがとう...」

渡した後、隣に座った

ごくごく...

戒さんが一気に飲んでいく

「んっ!!」

「?!」

もしかして、吐いて...

「....ぷはっ」

「だ、大丈夫ですか」

「うん、少し落ち着いた...」

「よかったです」

良かった
もう少しで巻き散らかすところだった

「ごめんね、心配かけて...」

「いえ、大丈夫ですよ」

さっきよりは顔色が良くなった
もう大丈夫だろうか

「さっき、どうしたんですか?生気のない顔をしていましたけど」

「実は建物に入ってからの記憶がないんだ...」

「ショッピングモールに入ってからですか?」

「そうだね」

こんなこと聞いても、原因は分からないしな...

「でも、もう大丈夫だよ。行こう!」

「もう少し休んだ方がいいんじゃないですか?」

「大丈夫、大丈夫、京くんの水を飲んだら元気が出たよ」

本人の言う通り、気づいたら顔色も良くなっているし、元気そうだ

...でも不安だ
戒さんはこういう時、無理することが多い

イメージがある

「ほらほら、行くよ」

「おあ、」

ぐいっと腕を引っ張られた

その力に負け、そのまま文房具店へと向かった



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「よし、ペンは買ったから」

「帰りますか」

「あれ、玩具を忘れているよ?」

くそ

戒さんは忘れていなかったか

「ていうか、こんな所に売ってるんですか?」

「売ってるとも」

家族連れ多い中に
そんなアダルトショップみたいなのがあるのか

「別にその専門店とかに行くわけじゃないよ」

普通の店にも売っているのか...!!

世の中も破廉恥になったものだな...


エスカレーターで上の階へ上がった



「ここだよ」

「ほー」

なんか、雑貨店というのか
別にそういう店って感じではないが

ああいうタイプの店か

決して小綺麗な店というわけでもなく
色んな雑貨が並んでいた

客は学生や若い男女がいた

ここなら売ってそうな感じがした

あとは想像に任せる

「この奥にそういうグッズがあるんだよ」

「ほう」

「どう、楽しみになってきた?」

「どちらかと言えば不安が募ってきました」

「えっ」

あんなキラキラした顔で「楽しみになってきた?」なんて聞かれたら
バッサリと「楽しみじゃないですね」なんて言えない

まあ、実際どちらかと言えば楽しみになっている

ただ、楽しみなんて言ったら、嬉しさのあまり俺の分まで買ってくれそうだ


「こ、これは...」

1人でそんなことを考えている内に、例の場所へ来てしまった

そこにはピンク色ののれん
白い字で見覚えのあるマークがあった

「お、お、俺はこ、ここで待機していらす」

「いや、動揺し過ぎだよ。大丈夫、別にただ大人向けな商品があるだけだよ」

え、俺が行く前提なの?

「俺、未成年なんで、入っちゃ行けないんで」

「その歳でゲイビに出ているキミが何を言っているの」

「それは戒さんのせいです!!」

「いや、僕なにもしてない!!」

これは行く流れだ!

何かを察してしまった

「ば、バレたら戒さんの責任で...」

「勿論!!」

仕方がなく入ることにした

「ここでかけるに会うことないですよね...」

「かけるくんってそういうの買うの?」

「かけるは純粋だからそういう事はしない筈」

「それなら大丈夫さ」


不安が募るな.....

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