1,此処で
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

現在高校一年生

高校生になって周りの雰囲気にも馴染めてきた今日この頃


「京、帰ろうぜ」

いつも通りの優しい声が聞こえてきた


「あー、今日用事あって無理かも知れない」

生憎、その日はとある用事があった

「OK。用事頑張れ」

なんの用事かわからんくせに

「おう」

「明日は一緒に帰れそう?」

「帰れると思うよ」

「"思う"じゃ不安で8時間しか眠れないよ」

十分すぎる

「大丈夫だ、明日は暇だからな」

「良かった」



「やべ、時間が」


急いで階段を駆け下りる

さっき俺と話していたのは
宮崎かける という

俺の彼氏だ

まだ誰にも2人が付き合っていることは言っていない

というか言えない

因みに俺の隠し事はこれじゃないからな

駆け足で
玄関で靴を履き替え


「うわ、」


わざとらしそうに、生徒玄関の目の前に
白い大きめの車が止めてあった



........周りの目が痛てぇ


そういえば、この車のせいで
お金持ちと思われてたんだっけか



実際は一般庶民なんだが


あ、やばい
急がないと


「戒さんすみません、遅れました」

車に乗っていた運転手に謝ってから、乗り込んだ

この運転手の特徴といえば
まさに、爽やか系男子という感じだ

「たった2,3分ぐらい、大丈夫だよ」

「すみません」

一呼吸を置いてから

「じゃあ、行こう」

「今日はどこなんですか?」

戒さんは俺がこの業界に足を踏み入れたきっかけの人だ


とある用事をする場所は、当日聞かされる

「ああ、えっとね此処だよ」

「........ん?」

此処...

此処は学校...?

「あ、カーセックs」

「違うぞ?」

目が怖い


「そしたら、車から降りてくれるかい」

「あ、はい」

未だに、『此処で撮影する』という言葉を受け止めきれずに

しぶしぶ降りた


まさか、本当に学校で撮影をするのかと確認するために
念のため

一応、戒さんに聞いてみた

「あの、今日って本当に学校なんですか」

「........」

聞こえなかったのか、無言だった

もう一回聞いてみようとしたところ

「...!!」

かけるが生徒玄関から出てきた
別の友達と話しながら

「やべ...」

そっと戒さんの影に隠れた

丁度車から降りたばかりで
生徒玄関と真正面になっていた

「どうした?今日は室内だが」

「そういうことではなく...」

いつもは外でやっているみたいな言い草はやめて欲しい

「友達が...」

「あらら、」

急ごうか
といって職員玄関まで行った

「どうやって入るんですか?」

「どうやてって、普通に入るよ?」

何を今更と言わんばかりだった

というか、やっぱり学校だった



この高校はそこそこ警備が厳しく
職員玄関から入るには専用のキーカード
がないと入室が出来ない

生徒玄関側にはそういうのは
ないけれど

誰かしらが、常に見張っている

誰もいない時もあるけどな


「え、ゲイビ撮影しに来ましたって言うんですか?」

「何も知らない人に言ったら、永久追放どころか逮捕されるよ」

その後、かっこつけた様に
見たことない色をしたカードを見せてきた

「...それ!」

「特別に貰ったんだ。カメラマン用のやつだよ」

よく、色んな行事にいる
一般のカメラマンに渡されるやつだ

「え、でもどっちにしても
こっそりやるってことでは...」

「心配性だなー」

「俺の今後の生活がかかってますからね」

ゲイビをやっている時点でどうなんだろう
という感じかも知れない

もし、仮に先生に見つかったとしたら...

「うわぁぁ...!!」

「どうした?やりたくてうずうずしてるのかい?」

「していたとしたら、こんな疼き方しませんよ」

「そうか、やりたくてしょうがないところは否定しないんだな」

もう、いいや

「その事に関しては安心して大丈夫だよ」

「もう許可が降りてるとか?」

「その通り!」

実はね...と話を続けた

「今回は学校で撮影したいなーと思っててね、いつものスタジオ用のやつじゃ新鮮味がないなって事で本物の学校を使うことにしたんだ」

「それでこの学校に?」

「そうそう」

別にスタジオ用でも変わらないような気がするが...



そんな話をしながら
持っていたカードをかざした



...開いちゃったよ


職員玄関から入ってすぐに、事務室がある


案の定、職員玄関には先生はいなかった
...よかった


「因みに校長先生には許可は降りていない」

「え」

いや、校長先生が許可降ろしたら色々やばい気がする

いや、それ以前に俺達がやばいことをしているんだった


「これ...俺がいるのバレたらやばいですよね...」

小声で言った

「まあそうだねー...」

ちょっと焦った表情を浮かべた

嘘でしょ、そんなこと考えてなかったのか

「これ、急いだ方がいいんじゃ...」

「そうなんだけどね、一体僕は何階に行けばいいか忘れてしまったよ」

もう駄目だ

/