吸血鬼の城?


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「オレっすか」


「お願いラビ!アレンくんきっとさっきの駅で乗りそびれちゃったんだわ戻って探してきて!」


「行け。今ならお前の如意棒でひとっ飛びだろ」


「槌だよパンダ。いいけどさぁ〜なぁんかヤな予感すんなぁ〜〜〜〜〜」




あれから汽車は出発したんだけど……アレンが乗っていないことに気付いて汽車の中を手分けして探したんだけど見付からずもしかしたら駅に取り残されたのかもしれないというわけでラビに白羽の矢がたったわけなんだけど当の本人は乗り気ではないみたい。確かに私も嫌な予感は感じていた。




「……ラビ」




団服の袖をちょこっと摘んで軽く引っ張るとん?とこちらを振り向く。どう言っていいか分からなくて俯いているとどうした?と言って頭をぐしゃぐしゃと撫でる。




「……私も行きたい」




素直に行きたい趣旨をラビの目をしっかり見て伝えるとなぜか目を逸らされて頭を掻く。そして、数秒間が空いて大きくため息を吐いた。




「……分かったさ」


「ありがとう、行ってきますリナリー、ブックマン」


「いってらっしゃい。ラビになにもされないようにね!」


「リナリーそれどういう意味さ!?」


「うん!気をつける!」


「ちょイザベル!?」




ラビのイノセンスに跨り移動する。その間にラビが酷いさーと泣きながら文句を言ってくるのでごめんごめんラビはそういう事はしないって分かってるよ。と言ったらそれはそれで複雑だと言われどっちなんだよと内心で突っ込む。




「駅に着いたね。アレンはいない……近くの村に入ったのかな?」


「かもな。イザベル、俺が探してくるからここで待っててくんね?」


「え?なんで?私も行く」


「いいから」


「……分かった……寂しいから早く戻ってきてね」


「っ……本当今日のイザベル姫は破壊力抜群だな」




意味が分からなくてハテナを浮かべる。そう言ったラビは顔を真っ赤にして、目が合ってなぜか頭をぐちゃぐちゃかき乱される。うわあああと髪を戻している間にラビは歩き出していて後ろを向きながら手をひらひら振っていた。私は諦めて駅で大人しく待っている事にした。早く帰ってこないかなー。




「イザベルー!」


「あっ!アレン!ラビ!おか……えり?」




ん?ラビとアレンの後ろに怪しげな黒服の男性達がいて不気味な雰囲気にお帰りの言葉が途切れてしまう。うん、これは私とラビの嫌な予感が的中してしまった……それにリナリーとブックマンには悪いけど合流は遅れそうな新たな予感。



「アレン……無事で良かった。ラビお疲れ様」


「すみません心配かけて……」


「ご褒美はイザベルのチューでいいさ」


「「は?」」


「こ、怖いさ……」




ラビの冗談だろうだけどもいつものラビを見てしまうと冗談に聞こえなくて本域で言葉が出てしまったんだけど……なぜアレンも睨むようにラビを見ているんだろう?あ、それよりも後ろの人が気になるので、2人に聞いてみるとどうやらすぐ近くの村人たちらしく、その村人たちは吸血鬼に困っているらしくそれを退治してくれる黒の修道士様を待っていたらしい。なぜ黒の修道士様を待っていたかというとどうやらあのくそ馬鹿クロスがここに来たらしく俺と同じ十字架の服を着た奴が困った時に助けてくれるとかなんとか行ったらしい。……最悪だ。でも困っている人は見過ごせないのでリナリーとブックマンに連絡をし、その吸血鬼が住む城へと向かう。




「クロウリー男爵の城門です。この門をくぐると先はクロウリーの所有する魔物の庭が広がりそのさらに先の湖上の頂が奴の住む城です」


「すごいうめき声だね」




城門から、ギャアアアアアやらウギャアアアアアやら不気味な叫び声やら音が響いている。お、おお……雰囲気があるな。3人は無言で城門を見上げ村人に押されて無理矢理前を歩かされて中へと入っていく。中に入るとさらに不気味でミイラのようなもの首がないものなど沢山の巨大な像が段差脇にみっしり並べられ歩くのすら怖い。




「あれ?アレンお前なんでもう手袋はずしてんの?まさか怖いの?」


「まさか。そういうラビこそ右手がずっと武器をつかえてますけど?」


「2人とも男の子なんだからちゃんとしてよ…」


「イザベルだって僕達の服掴んで離さないじゃないですか」


「……女の子だから怖くて同然だもん」


「ま、可愛いからいいけどな」


「……そうですね」




なんか2人だけ納得したようだけど私は納得してない。可愛いと言われて嬉しくないわけがないので突っ込まずにスルーすることにしたけど……それにしても2人ともびびって情けないなあと背中を見ながら思った訳なんだけど……何か気配を感じで足を止める。それは2人も感じたみたいで村人に静かにするように人差し指を唇に当てた。




「近付いてくる」




アレンが呟いた瞬間、私達の真横を反応するのも間に合わないくらいの早いスピードで何かが横切る。何かが横切った…!と振り向いたら既に遅く村人の悲鳴が聞こえた。




「フランツが殺られたぁぁぁ」


「出た…アレイスター・クロウリーだ!!!」




村人の首を噛みこちらを無言で見ているクロウリー男爵。そしてこちらを見たままじゅるるると音をわざとなのか分からないが嫌なくらい響かせて血を吸っている。その様子に本当に吸血鬼なんだと思い知らされた。村人は血を吸われたくないと逃げ私達はイノセンスを発動し、臨戦態勢に入る。




「どうします?」


「どうってなぁ…噛まれたらリナリーに絶交されるぜ」


「とりあえず吸血鬼にとっては大事な食事でも村人を殺させるわけにはいかない!」


「そうだね!リナリーにも嫌われたくないから頑張りますか」




クロウリー城に入る前にリナリーと話をした時に吸血鬼に噛まれると吸血鬼になってしまうから噛まれないでね!と言われていた。その時は半信半疑だったけど……本物を見てしまった以上そうは言ってられない。クロウリーに向かっていきイノセンスで切りかかろうとするけど歯でイノセンスを止められ驚きイノセンスを取り戻し距離をとる。ラビもイノセンスで攻撃するけどやっぱり歯で止められる。苦労し、やっとアレンがクロウリー男爵を捕まえることができた。




「捕まえた。おとなしくしてください」


「ぐふっ
ぎはははははははあーはははははは
奇怪な童共だ。私にムダな時間をつかわせるとはなあ。お前らも化物か!ああ?」


「エクソシストです」


「こんばんは。私は忙しいんだ
放せや」




クロウリー男爵がアレンのイノセンスの指にかぶりつく。そして血を吸う。あまりの衝撃に口をあんぐりと開け黙って見てしまう。アレンの血を吸ったクロウリー男爵は急に顔色を悪くし苦いと叫ぶ。そして瞬く間に逃げていった。……あらま。




「絶交されるなアレン…」




純情なリナリーの事だ。絶対にバレたら絶交される……合掌。




「黒の修道士さまがクロウリーめを退散させたー!!今宵勝利は我らにありー!!!その調子でクロウリーめを退治してくださいまし!黒の修道士さま!!」


「あの…なーんで皆そんなに離れてるんですか?」


「お気になさらずー!!」




気になるわ。木の影からかなりの距離離れてお互い叫ぶくらいにしないと聞こえないくらい。これは地味にアレンの心を抉られる。




「クロウリーに噛まれたお前が吸血鬼になると思ってるんさ」


「ラビ」


「気にすんなアレン」




こっちも気にするわ。ラビはイノセンス片手にニンニクのネックレスに杭を持っている。これはアレンの心を抉るより怒りを覚えたよう。




「大丈夫。私はアレンの味方だよ…?」


「イザベル……ありがとうございます」




よしよしとなぜかこちらがあやされてるように撫でられる。いや、逆。と思いながらも嫌な気はしないので言わないでおこう。




「さあさっさと城に行きますよ!」


「はーい」


「あれ何?急にやる気満々?」


「村人がひとり連れて行かれたじゃないですか。あの状況じゃ死んだかわからないし、もしまだ生きてるなら助けないと」


「クロウリーは獲物を城へ持ち帰ってゆっくり喰うのです!犠牲者の8人もみんなはそうでしたー!」


「う゛ええ――?」


「村長さん達はここで待っていてください。城へは僕とラビとイザベルで行ってきます」


「もちろんです!!あんな化物同士の戦いの中にいたら人間の我々は死んじゃいますからー!」


「オレらも化物!?」


「あれ?なんか虚しい気分…………」


「そうだね……」




やっぱり寂しい。私達だって神様に魅入られただけの普通の人間なのに、なあ。暗い気分になってしまった。気を取り直して館の中へと足を踏み入れた。



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