忠告と始まり


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「んっ……」


「お、起きたか」


「……ラ……ビ…?」


「そうさ」




ラビが優しく微笑んで頭をまるで母親のように優しく撫でる。 寝起きでぼーっとしているのと気持ち良さを感じて猫のように撫でる手に擦り寄ると甘えんぼうさねーといつものニシシとした表情で笑われる。やっと頭が覚醒してきたのでラビの助けをかりながら上半身を起こしてラビを見た。




「私ミランダさんとの戦いで倒れて……リナリーとアレンは?」


「まだ眠ってる。イザベルが一番さ」


「そっか……なんでラビがここにいるの?」


「任務があってさ。ジジイも一緒」




なんの任務だろうかと疑問を浮かべていると病室の扉がノックされラビが答えるとコムイさんが入ってきた。コムイさんもこっちに来たんですかと驚きつつ質問すると、街が正常化したと探索部隊から聞いてと答えるけどそれだけのためにコムイさんが来るはずはない。何かあったのかな?と更に疑問が浮かぶ。




「イザベル、ミランダから伝言を預かっているよ」




コムイさんがミランダさんからの伝言話しはじめた。内容はざっくりこんな感じ。私達が目覚めるまでいられなくてごめんなさい。イノセンスを発動した日から奇怪が解け、今度はエクソシストととして会いましょうという内容だった。あのミランダさん……いや仲間になったのだからミランダかな。最初は言ってしまえば頼りなくて大丈夫かこの人なんて思ったりしたけどイノセンスと向き合いエクソシストになる決意もした。次会うときは立派なエクソシストとして仲間として成長した姿を見るのが楽しみになってきた。




「身体は大丈夫かい?」


「あ、はい!ばっちりです!」


「そうか良かった。念のためブックマンに見てもらいなさい。ラビ、ブックマンイザベルをお願いします」


「あいよ」


「了解した」




いつの間に!?この病室には私とコムイさんとラビしかいないと思っていたけどあたかも最初からいましたよという感じでラビの横にちょこんといてびっくりした……コムイさんはアレンを見てくるといって病室から出ていき私達3人だけになった。




「ブックマンいつからそこに…?」


「さっきじゃよ。イザベル嬢お主の身体を見せてみろ」


「なんかジジイが言うといやらぐふぉっ!」




ラビが言葉を発してからのブックマンの行動は光の速さだった……ラビの身体目掛けてブックマンお得意のジャンピングキック!病室だからかいつもなら壁は抉れるんだけどラビの身体は壁に衝突するだけで終わった。急所に入ったみたいでピクピクと四つん這いで悶えてる。すっかり慣れてしまった光景に苦笑いを浮かべた。




「────問題ないようだな。精神的なダメージも回復しておる」


「こう見えて丈夫なんで!ありがとうブックマン」


「礼には及ばぬ」




ラビがいつの間にか消えてる……一応気を使って外に出てくれたのかな?ちょっとお腹出すくらいだったから気にしなくて良かったのに。ブックマンから普通に動いても大丈夫との許可がおりたしアレンの様子を見に行こうかな?目が覚めたかな?覚めてるといいんだけど。アレンの病室をノックすると中からアレンの返事が聞こえてほっと安心してドアを開ける。




「アレン」


「イザベル!目が覚めてたんですね」


「うん。アレンより早く……あ、ここにいたんだ」


「おう」




私はいてもたってもいられずにアレンの身体をゆっくりと抱き締める。背中に腕を回しがっちりと。耳元で突然の事に驚いた声をあげているアレンなんて気にせずに存在を確かめるようにだきしめる。なんかアレンが初めて本部に来た時を思い出す。同じ事したなーそんなたってないんだけど。




「イザベル嬢……取り込み中悪いがアレン・ウォーカーの診察をさせてくれぬか」


「!あ、はい!」




こほんと咳払いでまたいつの間にかやってきたブックマンの声でハッとしてアレンから離れてラビの横に移動すると熱い熱いと連呼され憎たらしかったのでさっきブックマンにやられたところにまたパンチをお見舞いしといた。ラビが悶えてしゃがんでいる間アレンの診察を遠目で見学。抉られたらしい左眼が自分で再生してきているという奇妙な現象がアレンの身体に起きていた。それにしても左眼は元から痛々しかったが今はもっと痛々しい。診察と自己紹介を終えたブックマンはラビを連れて病室を後にした。




「痛そうだね……抉られても呪縛から簡単に抜けさせてくれない、か…あまり無茶しないでね?まだ全開じゃないんだから」


「イザベルの方が僕より重傷だって聞きましたけど……」


「私は身体的より精神的なあれだから。身体はアレンが一番傷ついてるよ」




ボロボロの左眼をシャツの上から両手で触れる。私はほとんどアレンとは入れ違いでアレンがクロスに弟子入りした辺りに私は教団に行くよう命令された。だから今回初めてアレンの戦いに触れたけど無茶ばっかり他人ばっかり。だから左腕もこんなにボロボロで儚い。




「僕は大丈夫です」


「…え?」


「不安そうな顔してたので。僕なら大丈夫ですから安心してください。それにイザベルのそんな顔はあまり見たくないです」




私に掴まれている左腕ではない自由に動かせる右腕を上げたかと思うと私の頬に包む込むように手を当てられる。アレンを見ると優しいけど儚げでちょっと困ったり照れくさい。色んな感情が見えた表情を向けられて胸がキュンと締め付けられる感覚に陥る。こくんと無言で頷くとその右手が頭にのぼり、ぽんぽんと撫でると立ち上がりこちらを見下ろす。




「コムイさんの所に行きましょうか」


「うん」




エスコートするかのように手をこちらに差し伸べてきたので緊張しながらもその手の上に自分の手を乗せると優しく握られ病室のドアがある方へと引っ張られる。そのまま病室を出てコムイさんの部屋もといリナリーの病室まで繋がれたままでその途中は手に意識が行き過ぎついつ着いたのかも記憶がないくらいだった。




「コムイさん入りますよ」


「…リナリーが埋まってない?」


「そうですね…コムイさん起こしましょうか」




気持ちを切り替えてアレンの言葉に頷き怪我人であるリナリーを起こさないようにコムイさんを起こすけども起きない。私が試しても全く同じ。こうなったらあの手しかないね。アレンも同じ事を思ったらしくお互い目を合わせて頷くとアレンがコムイさんの耳元に近づき……




「リナリーが結婚しちゃいますよ」




すると、頭にヘルメット手にドリルの武装状態で眠っていたのが嘘のように起き上がった。あはは……やっぱり起こすのにはこの方法しかないのかとアレンと一緒に苦笑いしながらおはようございますと挨拶。




「アレンくんにイザベルか…何だい?」


「リナリーのお見舞いに…まだ目が覚めないみたいですね」


「長い夢でも見てるんだろう。ブックマンの治療を受けたから心配はいらないよ」




ベッドに横たわるリナリーは目を覚ます様子はない。私と一緒で精神的なダメージが大きい。その寝ている表情は穏やかだから魘されてはいないようなのでとりあえず安心した。直に目を覚ますだろう。




「…………コムイさん。忙しいのにどうしてわざわざ外に出てきたんですか?僕やイザベルやリナリーのため…じゃないですよね。ノアの一族って何ですか?」


「それをウチらに聞きに来たんさ。正確にはブックマンのジジイにだけど」




いつの間に。資料だらけのこの部屋に資料の山の隙間からなぜかみかんのダンボールに入ったラビがいた。拾ってくださいは書いてないみたい。なんだ、残念と思いつつ可愛いなぁとちょっとほんわかな気持ちになった。





「ノアは歴史の「裏」にしか語られない無痕の一族の名だ。歴史の分岐点に度々出現してんだがどの文献や書物にも記されてねェ。そんな不明が伯爵側に現れた。だからわざわざ来たんしょコムイは。この世で唯一裏歴史を記録してるブックマンのトゴえ゛…」


「しゃべりめが何度注意すればわかるのだ。ブックマンの情報はブックマンしかこうがいしてはならんつってんだろ」




またきた!?いつの間にブックマンが部屋に入ってまたラビに飛び蹴りをお見舞いする。このいつの間にかいたやつと飛び蹴りする光景今日いっぱい見たなぁ……次はもうないよね?多分。




「いーじゃんよ俺ももうすぐアンタの跡継ぐんだしさぁ」


「お前のようなジュクジュクの未熟者にはまだ継がせんわバァーカ」


「こンのパンダジジイ」




本当に仲良しだなぁこの2人。師弟の関係だけど最早親子みたい。見ていて微笑ましいけど、近くでリナリーが寝ているからもうちょっと静かにして欲しいかなーとも思ったり。だけど、リナリーだから起きた瞬間騒がしい方がいいかっ。




「アレン・ウォーカー、イザベル・アークライト」


「「は、はいっ!!」」


「今は休まれよリナ嬢が目覚めればまた動かねばならんのだ。急くではない」




そう言われラビも一緒に締め出される。ラビとアレンは歳が近いし男の子同士もあって2人でどっか行った。私はせっかくの男の子同士に水をさしたくはなかったので遠慮させてもらったんだけど……やることがなくて暇だなとぶらぶらと病院内を目的もなく歩く。




「!……遠くで爆発音…まさか…!」




しばらく歩いた所で爆発音が遠くから聞こえたのを僅かだったけど耳に届いたので来た道を引き返してリナリーの病室へと戻る。けれども、その途中で窓ガラスを割りレベル1が数体私の前に現れる。そこで初めて自分がイノセンスを所持していない事に気づいた。




「しょうがない……誰も見てないから使うか」




いつも使用している装備型イノセンス救済の女神ではなく危険な剣を発動させた。このイノセンスは髪を武器とし発動中は現在の髪の長さは関係なく伸縮自在でアクマを真っ二つにするのなんて容易いくらいに切れ味抜群な刃物になれたりもする。私が願えばできる限りはなんだってできる。そのイノセンスを使ってアクマ数体を全滅させる。すると、虫の息のアクマが言葉を発した。




「せ、千年伯爵サマからの伝言…だ…「時は満ちタ。7000年の序章は終わりついに戯曲は流れ出ス。開幕ベルを聞き逃すな役者は貴様等だエクソシスト!!!」」


「…くだらない」




アクマにトドメを刺す。そんな戯曲私がめちゃくちゃに壊してやる……それよりもリナリー達だ。私は急いで病室に戻るとやっぱりアクマが襲ってきたみたいだけどブックマンに目を覚ましたリナリーが片付けたみたいで一安心。




「リナリーおはよう」


「おはようイザベル」




ぎゅっとリナリーを抱き締めていたらラビとアレンが壁を壊して中に入ってきた。ラビのイノセンスの能力を使ったのだろう。ラビとアレンもアクマに攻撃されたらしく、伯爵からの伝言といいノアの一族も出てきたし戦いは激しくなる予感がした。



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