ノアの一族


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アクマとの戦闘で意識を失ったアレンが意識を浮上させた。アレンが目を開いたと同時に開いた世界は人形や可愛らしいぬいぐるみなどで埋め尽くされた部屋だった。弱々しく自分の名前を呼ぶ声が聞こえて主を見ると時計に手を杭のようなものでくっつけられたミランダの姿があった。ミランダの存在を認知したことにより痛覚も戻りイノセンスである左腕がミランダと同じ杭のようなもので壁に打ち付けられて、アクマにそれをやられているのを認識した。




「うんやっぱコイツには黒、ソイツには赤が似合うじゃ〜ん」


「ロード様こんな奴きれいにしてどうされるのですか?」


「お前らみたいな兵器きはわかんねェだろうねェ。エクソシストの人形なんてレアだろぉ」




そうアクマと話している少女はアレンが起きたことに気付いたのか向けていた背を振り返り軽く手をあげる。その口には風船ガムが大きく膨らんでいた。その少女の前には椅子に座り黒いドレスを身に纏いツインテールの髪も巻かれているリナリーと同じく椅子に座りリナリーとは色違いのような真っ赤なドレスを身に纏ってサイドテーブルの髪を巻かれているイザベルの姿があった。そして2人とも目は開いているものの焦点が定まっていなかった。




「リナリー!!!イザベル!!!」


「気安く呼ぶなよロード様のお人形だぞ」


「リナリーって言うんだぁかわいい名前ェ……で、やっぱりこっちはイザベルって名前かぁ」


「(やっぱり?)キミはさっきチケットを買いに来た…!?キミが「ロード」…?どうしてアクマと一緒にいる……?」




アレンはなぜイザベルの名前にそんな反応を示したのか気になったが、それよりも自分の左目が反応しない、つまりアクマではない人間である少女がなぜアクマと一緒にいるのかの方が気になってもう気になっていた事を忘れていた。アレンはアクマじゃない彼女は何者なのか問う。




「僕は人間だよぉ。何その顔?人間がアクマと仲良しじゃいけないぃ?」


「アクマは…人間を殺すために伯爵が作った兵器だ…人間を狙ってるんだよ……?」


「兵器は人間が人間を殺すためにあるものでしょ?
千年公は僕の兄弟僕達は選ばれた人間なの。何も知らないんだねエクソシスト。お前らは偽りの神に選ばれた人間なんだよ。僕達こそ神に選ばれた本当の使徒なのさ。僕達ノアの一族がね」




真っ白でとても綺麗な少女の肌の色がみるみる黒に染まり額にはいくつもの聖痕が浮かび上がる。それは彼女が人間であって人間ならざるものである証だった。それでもアレンは信じられずにいたがロードがアレンを抱き締め触れ合う感覚で人間だと自覚される。だが、新たな問題としてなぜ同じ人間なのにアクマ側千年伯爵側に付くのか。その問いにロードは否定をする。僕らは人類最古の使徒ノアの遺伝子を受け継ぐ超人であってお前らヘボとは違う、と。アレンの左目を杭で思いっきり貫きながら言った。その痛みに耐えながらアレンは無理矢理左腕の杭を抜きアクマと対峙した。










「んんっ…」


「イザベル!!」


「っ!?あ、れん?……あれここ……」


「イザベル……良かった」


「良かったわ……あとはリナリーちゃんだけね」


「リナリー……?あ、私アクマに捕まって……」




私が目を覚ますと最初にこちらを心配そうな表情で覗き込んでいるアレンとミランダさんが見えた。でも、視界に映る景色に見覚えがなくてここはどこなのかまだ覚醒しきっていない頭を頑張って回転させる。そうしてる間にリナリーも目を覚まして起き上がった。リナリーはどうやら砕けてしまったティムの欠片をずっと握っていたらしくて開いた瞬間にティムが勢いよく飛びアレンの顔面に衝突。あれ、私のキャンは?




「キャンならここですよ」


「あ、そこにいたんだ。ありがとう」




いつの間にアレンの服の中に入っていたんだろうかぴょこっとキャンがアレンの服から出てきてこちらにゆっくりやってきた。すりすりと心配するようにあえて嬉しそうに頬ずりしてくるのでよしよしと身体を撫でる。




「って私どうしたの?ここどこ?イザベルもそうだけどこのカッコなに?」


「あ、本当だ……」




よくよく自分の身体を見てみると教団の団服ではなくてゴシック調のドレス。私は真っ赤でリナリーが真っ黒。首にもドレスと同じ色のリボン状のチョーカー。可愛らしくドレスアップされている。何この可愛い格好……このドレス可愛いから欲しい。




「僕達ミランダさんのイノセンスに助けられたんですよ」


「え?わ、私…?私が…??」


「あなたが発動したこのイノセンスが攻撃を受けた僕らの時間を吸い出してくれたんです。ありがとうミランダさん!」


「ありがとうミランダさん」




アレンに続いて私もありがとうとお礼をいうとミランダさんが静かに涙を流した。私達は眠らされて、その間アレンが戦っていてくれたみたいだからそのお礼もかねてアクマを破壊しますか!どうやら、向こうからこちらの姿は見えないみたいなので結界のようなものの中からリナリーがアクマに攻撃をし風で視界が悪くなっている間に結界から出て不意打ちで1体アクマを破壊する。




「レロレロ〜あいつら何がどうしてピンピンしてるレロ〜!?」


「………ミランダって奴適合者だったんじゃん?どうやったかは知んないけどあの女あいつらを元気にしちゃったみたいィ」


「アレン…あの子劇場で見かけた子だよね…?」


「アクマ?」


「……………いえ人間です」


「…そう」




って事は……あの子はもしかしてノア?アクマでないし伯爵でもないのにアクマと一緒にいるってことはそれしかありえないよね。あれが……あの人への手がかりであるノアってやつ、か。そして、アレンにロードと呼ばれていた少女が空中にALLENとアレンの名前のアルファベットを指でかく。




「アレン・ウォーカー「アクマの魂が見える奴」」


「!」


「実は僕、お前のこと千年公から聞いてちょっと知ってるんだぁ。あんたアクマの魂救うためにエクソシストやってんでしょぉ?大好きな親に呪われちゃったから。だから僕ちょっかい出すならお前って決めてるんだぁ……まあ、イザベルも気になってるけどねェ」


「っ!」




ロードがこちらを見て意味深にニヤリと笑った。その笑みに思わずゾクリと背筋が走った。このノアはきっとあの事を知っている。だからあんな顔をこちらに向けてるんだと感じた。




「おいオマエ」


「ハイ」


「自爆しろ」


「エ?」


「傘ぁ10秒前カウントォ」




傘がカウントを始める。指名されたアクマは焦りロードに助けを求めるけどもその言葉は全て無視される。それによってアクマもロードの命令は本気なんだと思い知らせてさらに焦りがアクマを襲っていた。なぜ急にロードはそんな事を命令してきたのか私には意味が分からなかった。




「おい!?一体何を…」


「イノセンスに破壊されずに壊れるアクマってさぁ…たとえば自爆とか?そういう場合アクマの魂ってダークマターごと消滅するって知ってたぁ?」


「!!!」


「そしたら救済できないね――――!!」


「2レロ」


「やめろ!!」


「アレンくん!!」


「アレンダメ!間に合わないっ!!」




そして、カウントは非情にも1になる。アレンはカウントが0になる前に破壊しようとアクマに向かっていくが距離が遠くて間に合うわけが無い。0になった瞬間やけくそでアクマが自爆した瞬間、ギリギリリナリーが助けてくれ私も近くに駆け寄る。ロードの場違いな甲高い楽しそうな笑い声が空間に響く。アレンは自爆したアクマの魂を見たのか左目のペンタクルから血が溢れ痛みだしたようで唸り声をあげた。




「くっそ…何で止めた!!!」




アレンがリナリーに向かってそう怒鳴るものだからカッとなってしまって無理矢理こちらを向かせるとアレンの頬目がけてグーで思いっきり殴る。突然のことに驚いたアレンと少し涙ぐんでいるリナリーが視界にうつる。




「リナリーがアレンを助けたのは仲間だからに決まってるでしょ…!!なにを馬鹿な事言ってんの!?」


「スゴイスゴイ
爆発に飛び込もうとすんなんて、アンタ予想以上の反応!」


「お前…」


「でもいいのかなぁ?あっちの女の方は」




バッと振り返りミランダさんの方を振り向くと残っていたアクマが1体向かっていた。アレンとリナリーがそのアクマを破壊しようと動こうとするけど、私が止める。どうするつもりかと2人がこちらを見てくるので足元に置いてあったイノセンスを拾ってそれをダーツのように投げる。イノセンスは真っ直ぐとアクマの身体の真ん中に突き刺さり爆破する。それを見届けるとロードはアレンにちょっかいをだして帰っていった。ロードが帰った瞬間、大きな地震が起こった。




「崩れていく…!」


「「リナリー、ミランダ!!」」



床が崩れていく。ミランダさんに寄り添っていたリナリーの周りが崩れていき私とアレンが手を伸ばすけど私達がいた床も崩れて下へと落ちていく。可愛らしいラッピングがされたプレゼントボックスがいくつも浮いている空間を落ちていきいつの間にかミランダさんの部屋に戻っていた。




「あれ?ここは…?ミランダさんのアパート…どうして…」


「帰ってこれた…?さっきまでいたあの場所はどこだったの?」


「アレンくん!イザベル!ミランダの様子がおかしい」




リナリーの声が聞こえて部屋の角を曲がったところにアレンと向かうとリナリーとミランダさんの姿。2人の周りにはバラバラな時間を刺した時計と苦しいという言葉じゃ片付けられない程にガタガタと震えて何かに必死に耐えているミランダさんがいた。





「発動を停めて!これ以上はミランダさんの体力が限界だよ!!」


「…ダメよ…………停めようとしたら…吸い出した時間ももとに戻るみたいなの」




ミランダさんがイノセンスの発動を解こうとする。すると、彼女の周りにある時計がこちらの方に吸い込まれるように近づいてくる。発動を解除したら発動する前の怪我が戻るという意味。つまり完全なか回復したわけじゃなくてあくまで一時的みたい。




「また…あのキズを負ってしまうわ……………いやよぉ…初めてありがとうって言ってもらえたのに………………これじゃ意味ないじゃない……………」


「発動を停めて。停めましょミランダさん。あなたがいたから今僕らはここにいられる。それだけで十分ですよ。自分の傷は自分で負います。生きてれば傷は癒えるんですし」


「私達はこれまでいっぱい傷を負った……これくらいなんともないよ。だから発動を停めても大丈夫!」


「そうよミランダ。お願い停めて…」




私達の言葉はちゃんとミランダに届いたようで、リナリーのこの言葉の後の私の記憶はない。それはつまり彼女がイノセンスを解除して傷が戻ったのだろう。この傷はどれくらいで癒えるかな。



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