巻き戻しの街


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任務があるよって呼び出された私とリナリーとアレン。室長室に入ってそうそう山積みになった資料の隙間から死にそうなコムイさんがたぶんばっかりはを連呼するものだからアレンと私はつい突っ込んでしまった。いつも確証がないやつでもこんなにたぶんを連呼したりしないんだけど……そんなに確証が低いのかな?コムイさんの話によると時間と空間がとある時間で巻き戻っていてその一日が延々と繰り返している街があるみたい。
コムイさんが弱々しくリーバー班長ーと呼ぶとやってきたリーバーさんもまた弱々しく資料を持ってやってきた。やばい……この人達本当に死にそうだ……だいぶ寝ていないんだろうその弱々しい姿を見ていたらさっき突っ込んでしまったのが申し訳なくなってきたよ…この任務終わったらなにかつくってあげよう。




「調査の発端はその街の酒屋と流通のある近隣の街の問屋の証言だ。
先月の10月9日に「10日までにロゼワイン10樽」との注文の電話を酒屋から受け翌日10日に配達。ところが何度街の城門をくぐっても中には入れず外に戻ってしまうので気味が悪くなり問屋は帰宅。
すぐに事情を話そうと酒屋に電話をしたが通じずそれから毎日同じ時間に酒屋から「10日までにロゼワイン10樽」との電話がかかってくるらしい」




その問屋はノイローゼになったらしい。とリーバーさんが続けた。私達が動くには十分の怪奇だ。で、探索部隊を派遣して調べようとしたけど入れない。というわけで推測を立てたらしい。@イノセンスの奇怪なら同じイノセンスを持つエクソシストなら中に入れるかもしれない。A街が本当に10月9日を保持し続けてるとしたら入れたとしても出てこれないかもしれない。そして調べて回収。エクソシスト単独の時間のかかる任務だと、そう言ったコムイさんは本で顔を隠して表情は見えないけれども、酷く苦しそうな顔を隠しているように見えた。そのコムイさんが気になったまま私達問題の巻き戻しの街に来ていた。でも、普通に入ることは出来た……イノセンスのおかげ?いや、まだそう判断するのは良くない。というわけでアレン、私とリナリーで分かれて調査を始めて、今はお店に入って休憩中。
どうやら分かれて探索した時に手がかりになるかもしれない人物をアレンが見つけたようで書いてくれた似顔絵らしきものをまじまじ見てみるけども、まず人なのかどうかも分からないレベル。そして、アレンの話によるとその人はアクマに襲われていたんだけど、そのアクマはその人の事をイノセンスって言っていたらしい。だからこの怪奇の中心人物だと見て、それも含めて3人で探すことにした。




「イザベルとリナリーの方はどうでした?」


「ん――…コムイ兄さんの推測はアタリみたい。イザベルとアレンくんとこの街に入った後、イザベルとすぐ城門に引き返して街の外に出ようとしたんだけどどういうワケか気づくと街の中に戻ってしまうの」


「ちなみに街を囲んでいる城壁も何か所か壊して出られないか確かめたけどダメだね。
穴から外に出たと思ったら街の中の元の場所に戻されたわ。だからやっぱり…」


「私達、この街に閉じ込められて出られないってことねイノセンスの奇怪を解かない限り」




つまりは、その人を探して原因を探すしかないってことだよね。だから途方がないかもしれないけど頑張ろっと。そして、話は怪奇の話から任務の話をしている最中のコムイさんの話になった。気になっていたのは私だけではなかったみたいでやっぱりみんなコムイさんの様子が気になっているよう。




「………なんか兄さん…色々心配してて働き詰めみたい」


「心配?リナリーの?」


「伯爵の!最近伯爵の動向がまったくつかめなくなったらしいの「なんだか嵐の前の静けさみたいで気持ち悪い」ってピリピリしてるのよ」


「伯爵が…」




私達は戦うだけでしかない。戦うしか役に立てないからコムイさん達には苦労をかけてばっかりだなと反省。頼んでいた紅茶に口をつけていたら目の前でケーキを食べていたアレンがくわえていたフォークが落ちる金属音が聞こえてびっくりしつつ、アレンを見ると何かに驚いている顔をしていた。どうしたの?と聞くと、この人ですと叫びながら後ろを指差すアレンに条件反射で後ろを振り返ると布のようなものを赤ずきんちゃんのように被る女性らしき人の姿。その女性らしき人はアレンの声にびっくりしたのか肩を上下させて窓から逃げ出そうとしたので慌てて捕まえる。そして、私はアレンの隣に移動してリナリーの隣に彼女を座らせてゆっくり話を聞くことにした。




「わ、私はミランダ・ロットー。うれしいわこの街の異常に気づいた人に会えて…誰に話してもバカにされるだけでホントもう自殺したいくらい辛かったの。あ、でもウンコはよけられるようになったんだけどね」




この人何回も同じ日を過ごしているせいかノイローゼではないだろうけどだいぶきているみたいだ。ふふふと凄く怪しく笑う彼女はきっと悪い人ではないんだろうけど、苦労してきたんだなーとちょっと同情に近い感情を抱いてしまう。悪い人ではないはずだよ!たぶん!リナリーが詳しく話を聞くとやっぱり彼女は街の異常に気づいているよう。
助けて助けて!私このままじゃノイローゼになっちゃう!と昨日助けてもらったアレンに物凄い勢いで近寄り懇願する姿にそれを正面から受けたアレンは怖い!と思わず声に出してしまっているし私達に助けを求めている。助けを求めている人から助けてってどういう状況…とは思ったけども私から見てもミランダさんは怖い。リナリーも迫力に驚いたようで苦笑いをしながらミランダさんに落ち着くように諭していた。しかし、アレンが急に立ち上がったので視線はそちらに行く。




「リナリー、ミランダさんを連れて一瞬で店を出て君の黒い靴ならアクマを撒いて彼女の家まで行けますよね?イザベルは援護をお願いできますか?」


「もちろん」


「どうやら彼らも街の人とは違うミランダさんの様子に目をつけ始めたようです。なぜミランダさんが他の人達と違い奇怪の影響を受けないのか。それはきっとミランダさんが原因のイノセンスに接触してる人物だからだ!」




お店にいた人達が腰掛けていた椅子からガタッと音をたてて立ち上がる。私とアレンはリナリーとミランダさんを守るように前に立ちイノセンスを発動すると街の人も人間の姿からアクマの姿へと換装する。その姿に驚いたミランダさんの声が背後から聞こえた。それと同時に始まる戦闘。リナリーはすぐにミランダさんを連れて行ってくれたので何も気にせずに戦うことが出来たけど、頭が割るように痛かったり鎌を武器にしたり炎より熱いらしいアイスファイアといった、アクマの能力に苦戦を強いられていていたんだけど、やられそうになる手前急にアクマ達が止まったかと思うと光のような速さでどこかに消えてしまった。突然のことに驚くがアクマが行ってしまったので戦う理由もなく、ミランんの家へと向った。そしてすぐにミランダさんの家に到着してボロボロな私とアレンはリナリーに手当てをしてもらいながらアクマとの戦闘の経緯を話していた。




「で、リナリー……ミランダさん何してるの?」


「私達とアクマのこと説明してからずっとあそこで動かなくなっちゃったの…」


「私、ホントに何も知らないのよ…この街が勝手におかしくなったの何で私が狙われなくちゃいけないの…?私が何したってのよぉぉ〜〜〜もう嫌もう何もかもイヤぁぁ〜」


「ずっとああなの」




顔が狂気の沙汰だ……!アレンが恐る恐る声をかけるとミランダさんが今度は大きな声を出し泣きながらこの街をたすけてよと叫ぶ。アレンははい。と答えると床に座り込んでいるミランダさんの目線似合わせるようにしゃがみこみ両手のひらを合わせて、街を助けるためにミランダさんの力を貸してください。明日に戻ろうと今度はアレンからお願いをしたんだけど、急にミランダさんが立ち上がったと思ったら布団へと入る。突然のその行動にいやいやどうしたとなるけど、次の瞬間ミランダさんの部屋は時計を中心にいくつもの様々な形をした時計盤で埋め尽くされ今日の時間らしきものを時計に吸い込んでいく。私達は吸い込まれそうになるのを必死に物に捕まり回避するけど、街の時間を全て吸い尽くすとなぜか朝になっていた。ミランダさんも何事もなかったように起床したので私達は唖然としていた。




「…スゴイ。イザベルーリナリー見てくださいよコレ!時計人間!」


「「「キャ―――!!」」」




ミランダさんが起きてからこれからどうするかなどを話していたんだけど、突然アレンが私とリナリーの名前を呼ぶので振り返ると、どうやったかは分からないがミランダさんの時計にアレンの身体が入り腕が時計の側面から出された状態になっていた。衝撃的な絵で3人でつい叫んでしまった。怖っ!え?どうなってるの?と聞いたらどうやら時計に触れないみたい。アレンが試しに手を時計に触ろうとしたら手は時計をすり抜けて手を入れた所の上からすり抜けた手が出てきた。うん、ホラーだ。アレンは他にも身体ごとすり抜けたりとかして見せるけど、何回見てもある意味ホラーでしかなかった。




「どうやらこの時計に触れるのは持ち主のミランダさんだけみたいです。さっきの「時間の巻き戻し」といいこれといいやっぱりイノセンスに間違いなさそうですね」


「ほ、本当なの?この時計が街をおかしくしてるだなんて…ま、まさか壊すとか…?私の友を………」


「「「落ち着いて」」」




包丁をどこから出したのか私達に向けるミランダさん。彼女なら本当に刺しそうで怖い。そんな私達の心が重なったのか3人で見事にハモってしまった。と、それは置いといてミランダさんにこうなった原因である本来の10月9日の事を聞いてみたら、ミランダさんは思い出したようにゆっくり話だした。その日は失業100回目だったらしくやけ酒をして酔った勢いで明日なんか来なくていいと言ってしまった事を。いや、それじゃないの?




「イノセンスがミランダさんの願望を叶えちゃったんですよ」


「そ、そんな私はただ愚痴ってただけで…大体何で時計がそんなことするの!?」


「ミランダあなたまさか………………この時計の適合者…?」


「なるほど…ミランダさんの願いに反応して奇怪を起こしてるならシンクロしてるのかもしれないってことか」




私達が話を進める中、ミランダさんだけがてきごうしゃって?とハテナを浮かべる。まだ私達も確証があるわけじゃないのであえて説明はせず、確証を得るためにミランダさんに時計に向かって怪奇を止めてみるように頼んでやってみる。元に戻ったか新聞をダッシュで取りに行くが10月9日のままだった。





「もう一度初めから考え直してみよっか…」




というわけで、考えた。あれから3日後考えに考えた結果、ミランダの強い絶望感にイノセンスは反応したのだと推測をたて、ならば逆に就職で失敗したなら就職でまた立て直す。気持ちが前向きになれたら怪奇はおさまるんじゃないかと考えたので私達で協力してミランダさんのお手伝いをしていた。ちなみに今やっているのは劇場のお手伝い。




「は――いいらっしゃいいらっしゃーいピーテル劇場のホラー演劇「カボチャと魔女」は本日公演〜んチケットいかがですか〜?」




しばらく働いていると支配人さんに褒められ休憩をとってきてもいいよーと言われたのでちょうど別行動していたリナリーも来たことだし、ありがたくもらうことにした。うー慣れない魔女の格好をしているせいか疲れた。




「どう?仕事の方は」


「うまくいったら正社員にしてくれるそうですよ」


「ホント!?」


「アクマもあれから音沙汰ないし…今のうちに決めたいですね」


「そうだね…この三日間ですでに5件もクビになってるしね……」




そう、これ以外にも実は就職していたんだけどどれも失敗してクビになってしまっている。逆に凄いともはや関心してしまうほど。アレンが言っていた通り最近アクマから襲撃されることは無く平和だったんだけどそれもいつまで続くか分からないから早く就職を決めてミランダを幸せな気分にさせてイノセンスによる怪奇を終わらせたい。





「それにしてもアレンくんって大道芸上手だね」


「僕小さい頃ピエロやってたんですよ。育て親が旅芸人だったんで食べるために色んな芸を叩き込まれました。エクソシストになってそれが活かせるとは思ってませんでしたけど」


「…そうだったね」


「じゃあ色んな国で生活してたんだ。いいなあ」


「聞こえはいいけどジリ貧生活でしたよ〜」




まあ、それはクロスの元に来ても変わらなかった……いやむしろ悪化しただろうけどね。でも、ある意味クロスとアレンの育ての親、マナは似ていることがある。アレンに色んな技を教えたこと……マナは旅芸人としての芸を、クロスはギャンブルでのイカサマの技。どちらも当時のアレンにとって生きる為に必要なものだったこと。クロスの場合教えたっていうかそうするしかなかっただけなんだけどねー…。




「あっ!ね―――そこの魔女とカボチャァ―――――「カボチャと魔女」のチケットどこで買えばいーのぉー?」


「いらっしゃいませーチケットはこちらでーす」


「ご案内しまーす!じゃ、リナリー後半頑張ってくるね!」


「がんばって」




大きな声ペロペロキャンディーと傘を持った女の子が話しかけてきたので私達は仕事モードに入り優しく女の子を誘導していると支配人の売り上げ金をスリ盗まれただと!?とミランダさんに怒鳴り声をあげている姿を見つけ、女の子に待っているよう伝えるとミランダさんに近付きミランダさんに事情を聞くと犯人が屋根を走っている姿を発見し、リナリーとアレンと共に犯人を追い、壁際まで追い詰めた。




「しまった…罠だ!!」


「あのメスいただいたお前らが守ってたメスいただいたロード様がいただいた」


「ロード…?」




犯人はアクマだった。そしてアクマが言った言葉が気がかりだったけど、この間なぜか逃げていったアクマたちがこの間よりも連携を強めて迫ってきて窮地に追い込まれ3人は意識を失った。



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