黒の教団
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「ふぁー…ねっむ…」
長期任務明けで爆睡していたようだ。昨日の夕方くらいに寝た気がするんだけど夜どころか部屋の窓から覗く景色には朝日が昇っている。半日くらい寝ちゃってたようだ。着替え始めようと思いクローゼットから制服を取り出し着替えていると窓を叩く音が聞こえて振り向くとクロスに作ってもらったキャンがいたので窓を開けて中に入れる。ふと、キャンの口元を見ると何かを咥えていてそれに気付いたかのようにキャンがあげると言わんばかりに私に差し出してきたのでそれを受け取ると手紙のようだったので中身を確認する。
「……はぁ!?アレンが来るの!?」
私の問いかけにキャンはぶんぶんと身体を縦に振って肯定を意味するような素振りをみせる。つまりは、イエスってことだろう。そう、キャンが持ってきた手紙の差出人は私の育ての親でありエクソシストとしての師匠である…一応なんだけど。クロス・マリアンからで内容は私の弟弟子であるアレン・ウォーカーが教団にやって来るそう。今日。そう、今日。急すぎて私は思わず大声を出してしまった。待てよ?もうすぐ来るんじゃない?あのクロスの事だからコムイさんに連絡してるかも不安だし…こうしちゃいられない!キャンを連れて私の部屋からダッシュで科学班の研究室に向かう。途中誰かにすれ違って声をかけられた気がしなくもないけど急いでいて周りの声なんて全く聞こえていなかった。
「コムイさん!誰か来てませんか!?」
「イザベル!誰かってよりアクマなら来てるが……」
ほら、と言ってリーバーさんが教団玄関のモニターを指差す。そこにはアレンと何故か神田。アレンの左手をよく見るとアクマなんかではない私が知っているアレンのイノセンスが見える。あれはアクマではない正真正銘の私の弟弟子であるアレン・ウォーカー。
「神田を止めてください!」
「イザベル?どうしたの?」
「……あの子は私の弟弟子です」
私の言葉にとどめを刺すかのように神田と戦っているアレンがコムイって人宛に手紙が届いているはずだと叫んだ。それによりモニターから視線が呑気にコーヒーを飲んでいるコムイさんへと注がれる。コムイさんは近くにいた部下に調べるように命じたけども、コムイさんの机は1人じゃ1日あっても足りるか分からない量の資料やらが積まれている。流石にそれは可哀想だという目でリナリー、リーバーさんに見られていたたまれなくなりコムイさんも参加。プラスその場にいた全員で馬鹿クロスからの手紙の捜索に取り掛かった。
「あった!ありましたぁ!!クロス元帥からの手紙です!」
「読んで!」
「"コムイへ近々、アレンというガキをそっちに送るのでヨロシクなBYクロス"です」
「はい!そーゆうことです。リーバー班長神田くん止めて!」
「たまには机整理してくださいよ!!神田攻撃を止めろ!」
とりあえず一件落着。というわけでほっ、と胸を撫で下ろす。そして、リナリーと一緒にアレンと神田を迎えに行くべく玄関へと足を運ぶとイノセンス同士の戦いは終わったけども、あまり歓迎できないようで神田はアレンに六幻を向けて敵対心を丸出し。それを止めようとリナリーが神田の頭を抱えていたバインダーで軽く叩く。
「も――――やめなさいって言ってるでしょ!」
さすがリナリー。神田の扱い方が慣れてるなって関心し、私は久しぶりの再会で嬉しくなってしまってアレンに抱きつくとびっくりしながらもちゃんと受け止めてお久しぶりですとアレンが耳元で懐かしそうに笑ったので私も久しぶり。会いたかったよと返した。すると、アレンの抱き締める力が強くなった。痛くはないので何も言わずに私も久しぶりのアレンの体温を感じていた。
「いつまでテメェらのいちゃいちゃ見せつけられなきゃいけねぇんだよ」
「あっ……ごめんごめん神田」
「もう!神田ったらイザベルも久しぶりに会えたんだからしょうがないでしょ!」
リナリーもしていたいちゃいちゃを否定しない限り どうやらそう見えてしまったらしい。本当に久しぶりで生きているかどうかも定かではないくらいだったからちゃんと再会できてほっとしたのもあるからだろうね。なんせ私達の師匠は色んな意味で凄い人…だから。リナリーにもごめんねと謝り、歩き出す。
「私は室長助手のリナリー。室長の所まで案内するわね」
「あ、カンダ……って名前でしたよね…?よろしく」
「呪われてる奴と握手なんかするかよ」
無言で立ち去ろうとしていた神田をアレンが呼び止めて握手を求めようと手を出すけどギロリと睨んでそれだけ言うと立ち去っていく。アレンも神田の睨みに若干怯んだ様子。私の中では神田の一番の理解者であるリナリーが、任務帰りで気が立ってるだけだから許してあげてとさり気なくフォロー。私は神田が気が立ってるのはいつもの事だと思ったけどそれは口に出さないでおこうっと。神田の話はこれでおしまい。私達はコムイさんの所に連れていく間に軽い案内をしながら進んでいく。
「他にも療養所や書室。各自の部屋もあるから後で案内するね」
「部屋が与えられるんですか!?」
「エクソシストはみんなここから任務へ向かうの。だから本部のことを「ホーム」って呼ぶ人もいるわ」
「出て行ったきりわざと帰ってこない人もいるけどねー誰とは言わないけど」
「あはは…」
名前は言わなかったけどみんなが同じ人物を思い浮かべた。まあ、そんな人うちにはあの馬鹿しかいないんだけどね。その後、コムイさんと無事に合流して話はアレンのイノセンスの修理の話に。イノセンスの修理は基本的にコムイさんのお仕事。その修理なんだけど、寄生型にとっては苦でしかない…らしい。装備型はイノセンスと適合者が離れている、身体的に繋がってはいないから痛みなんてもちろん感じないけど寄生型は違う。寄生型は身体の一部が武器であるが故に身体的にも繋がっている為に痛覚もある。だからめちゃくちゃ痛いらしい。まあ、私には関係ない話だから他人事。でも、自分のイノセンスの修理を見たことがあるけどあれを自分の身体にやられると思うとゾッとする。あ、寒気がしてきた。
「イザベルどうしたの?顔真っ青よ」
「大丈夫。なんでもない…」
「イザベルくん。もうそろそろ任務の時間だよー」
「あ、本当だ……アレン頑張れ」
これから起こるであろう。大変な思い……でも、まあそれはあの人の近くに長年いるからなんとかなるでしょう!男の子だし。でも、一応応援はしとこうと思い声をかけたら余計不安にさせてしまったみたいで何がですか!?と不安そうな顔。それ以上は私の口からは恐ろしくて言えそうにない。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいイザベル」
「行ってらっしゃーい」
何がですかー!?というアレンの悲痛な叫びを背に受けながら私はキャンと共に任務へと出発した。
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