結晶と手がかり


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「放せよ放せっ」


「馬鹿野郎ボウズ!お前結構重傷だろ船から出たら危ねえって!!」


「今すぐ女の子んトコまで船戻すからっ」




ラビと船員さん達の必死な声が聞こえてクロウリーをひとまず置いてそこに急いで向かうとラビがイノセンスに跨りリナリーの所に行こうとしているのを本体に必死にしがみつき止めようとしている船員さん達が見えた。どうせラビの事だから帰ってくるのが遅いリナリーを心配してるんだろうな。確かに心配なのは分かるけども船員さんの言うことは聞こうよ。全く…しょうがない年上だなぁとため息を吐いて私はラビに近づこうとしたけど、




「ンなの待てるか!!オレがビュッと行った方が速ぇえんだよ
…のっ、は、な、せ、よぉぉぉぉぉお」


「ラビくんやめて!!」「やめてラビ!!」


「!ミランダ…イザベル」


「船員さんたちに乱暴しないであげで…この人たちはミランダや船を…」


「お、お願い…っ」




これはまずいと思ってラビを止めようと右腕に抱きついたらミランダも同じ事を思ったらしく反対の腕に抱きついた。それによって船員さん達を無理矢理吹き飛ばし引き剥がして進もうとしたラビが止まってこっちを見てくれたので必死にミランダを助けてくれた船員さん達を傷つけないでとお願いするとチラッ船員さんに目を向け謝って再び歩き出した。その手をミランダは咄嗟に掴んだ。




「ちちっ致命傷はホントに負ってない!?」


「ああいいから気にせんで…」


「しゅっ出血しそうなところ教えてぬ、ぬ、布で縛った方が…」




必死に追いかけながらラビに怪我の状態を聞く。リナリーがいる場所はミランダのイノセンスの能力の適応範囲外だから助けに行くには負った傷が戻ってしまう。だからミランダはあんなに必死になったんだと思うけど、その気持ちが伝わっていないのかラビはミランダの腕を無理矢理振り抜く。




「んな事今はどうだっていいだろがリナリーが心配じゃねェのか!!
アイツはお前らの仲間だろ!!!」


「ひっ」




ミランダがラビの迫力に悲鳴を漏らした。私はそのミランダに対する態度が気に食わなくて二人の様子を見守っていたけど我慢出来ずにラビの元へと大股で行きラビの前で立ち止まると平手打ちをした。ミランダがそれにまた悲鳴を漏らして、叩かれた本人は叩かれた頬を手で抑えてこちらを驚いた様子で見ている。そのラビの胸板に頭を置く。




「ラビも仲間じゃないの…?違うの?」




目頭が熱くなるのを感じながら顔を上げラビを見つめると動揺したような表情をした顔が私の目に写った。小さく拳を握るのが視界の端に見え、目線を逸らされてラビは何も言わずにリナリーの所へ行ってしまった。私は静かに涙を流しながらその後ろ姿を見送った。そして、ずっとさっきから私の団服の中で動いているキャンを出すとラビと同じ方角に生きたそうだったので行かせることにした。




「イザベルちゃん大丈夫…?」


「……ありがと。大丈夫だよミランダ」




それから数分後。ラビが想像していたものとだいぶ違ったリナリーを連れて帰ってきていた。水晶のようなものに閉じ込められたボロボロのリナリー…彼女の特徴だった綺麗で長いツインテールはなくショートカットになっていた。あの戦いでいったい何があったの…?リナリーは大丈夫だよね?




「これは…!?どうしたというのだ…」


「リナリーちゃん…っ」




アニタさんが一番にリナリーに近寄ると急に膝をつき頭を抱えて頭が痛いと訴える。顔は真っ青になってすごく苦しそう…ブックマンが言うにはイノセンスの気に当てられているようで適合者以外は近づくなと言われた。でも私は適合者なので遠慮なく結晶に近づきなんとかならないか探るけど全く分からない。後ろではブックマンがイノセンスが適合者を助けたのは異例だと言っている……異例か。リナリーはイノセンスにこんな風に助けられたんだね。




「「ハート」なんかねェ?」




あ、アクマがラビの後ろに空中に肘をつき寝転がっている。なんか飲んでるし…燃料?アクマに燃料ってあるのかな?それはさておきこのアクマ…ティムもキャンも頭に乗っかっているってことは普通のアクマじゃないってこと。それに攻撃してこないし。その2つの事柄で一致するアクマなんて1つしかない訳でそれはつまりアイツが生きている証拠。それに内心喜び、信用できないようでアクマにイノセンスで力強くつついてるラビを見る。うーんさっきのがあったせいで話しかけずらい。




「警戒を解けラビ。クロス・マリアンはアクマの改造が出来る唯一人物だ。
このことは黒の教団の誰も知らない。ワシだけが知っとることだがな…
ティムとイザベルが付いとれば確実だ。安心しろ」


「あ、その事なら私も知ってるよブックマン」


「!ほうイザベル嬢知っておったのか」


「まあ、ね。本人から聞いた…改造されたアクマは初めて見たけど」




おまえクロスの弟子のイザベルっちょか?と謎の口調で質問された。まあ、間違ってはいないのでうんと頷くと噂通りの美少女っちょね!と言われて戸惑う。いや、噂って誰から……クロス?ないない。だって全然会ってないからどうなったか知らないだろうし。まあでも、美少女と言われて嬉しくないわけはないのでありがとう?と疑問形で返しとく。その疑問形にあっちもはてなと首を傾げるもまあいっか!みたいな感じでラビに絡みにいった。




「時間が無いっちょ。マリアンから伝言を預かってんだ!
マリアンは死んでない。
日本に上陸して任務を遂行しようと江戸に向かってる」


「クロスもう江戸に着いたんじゃないの?」


「近くまで来てるでも近寄れない」


「………江戸に何があるんさ?」




クロスはやっぱり死んでない。君が来た時点でそんな事だろうとは思っていたけど改めて聞けた事でホッとする。後ろにいたアニタさんも嬉しくて涙ぐんでいたのが見えた。そして、あのクロスが近寄れないとまで言わせる日本の江戸。そこには一体何があるのだろうと一気に緊張と不安が船上を支配していた。思わず生唾を飲み込んだ。




「あそこには「箱」がある。とっても大きな「箱」
アクマの魔道式ボディ生成工場。
マリアンの任務はその破壊っちょ」




そんなものがこれから行く場所にあるのかとびっくりし緊張してくるのと同時にちゃんとクロス仕事してたんだねと思った。なんでだろう…みんなも同じ事を思っているような気がする。だって、ほら…あのクロスじゃん?仕事放棄して飲みまくり教団にも帰ってないし連絡してないしね?そう思うのはしょうがないよね!





「でも予想以上に障害が多くてマリアンは今動きにくくなってる。そこに自分に護衛が向かってる情報を手に入れてオイラを差し向けたっちょ」


「「ハート」の候補者としてノアとアクマに集中されてんだもんなオレらの助けを必要としてるってことさ?」


「ちがう。
オイラはお前達に警告するよう言われて来たんちょ!もし警告を聞いて…足でまといになるなら帰れとマリアンは言った」




だよねークロスが私達に助けを求めるなんて世界が滅亡するとしてもないくらい有り得ない!相変わらずの性格だこと。




「で、クロスからの警告って?」


「ちょっ!日本はもはや伯爵様の国。江戸帝都はその中枢――レベル3以上の高位アクマらの巣だ。生きて出られる確率は低い」




その言葉を改造アクマから聞いた瞬間、リナリーのイノセンスらしき結晶が不快な音をたて眩い光を放つ。あまりの眩さにリナリーが心配になってくるけど近寄っていいのか分からないくらいの激しさなのでミランダもラビも私も見上げる事しかできない。眩い光は徐々に細くなっていき、結晶の中に閉じ込められていたリナリーが光が消えるのと同時に船の床に静かに落ちたので慌ててラビがリナリーに駆け寄って抱き上げると必死に呼びかけて安否を確認する。リナリー大丈夫だよね…?




「ラビ…わたし…まだ…せかいのなかにいる…?」


「馬鹿ヤロ…」


「っリナリー……!」




リナリーが涙を流しながらも目を覚ました。その事に安堵して今まで気を張り過ぎていたみたいで一気に気が抜けてしまったのかバタりと床に座り込んでしまった。それに慌ててミランダが近寄ってきて大丈夫かと心配されたけどもリナリーが目覚めて安心しただけだと伝えるとミランダも安心したみたい。リナリーが目覚めた事によりラビとミランダがボロボロと泣き、私もポロっと涙が出てきた。船員さんやアニタさんたちもホッとした感動的な空気に包まれた。そして、落ち着いた所でリナリーに今までの事情を話す。




「進もう。
ここで戻るなんて出来ないよ。戻ったらここまで道となってくれた人達の命を踏み付けることになる」




リナリーが床から立ち上がろうと手を支えにするけども立ち上がれない様子のリナリー。それに気付いてラビと復活したクロウリーがリナリーに賛成と言いながら両脇を支えてリナリーを立ち上がらせる。それを後ろでニコニコ笑うミランダと私。ここにアレンもいたらきっともっと楽しくなってたんだろうなあ。…アレン絶対帰ってくるよね?




「オレらボロボロだけどさでもそこは曲げちゃイカンよな!
行こう江戸へ!」




クロスがそこまで言わせる江戸……きっと激しい戦いが待っているんだろうな。そして、伯爵もきっと……気を引き締めなくちゃ。



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