題名
─────---- - - - - - -
「あ…っ」
「ミランダ…?」
「ど、どうしたであるかミランダ?」
「今…この船のどこかで連続して時間回復が起きてます。甲板…?攻撃を受けてます!!」
みんなの頭の中にアクマからの攻撃が来たと浮かび急いで甲板へと向かう。甲板へと着くと船の帆にいたラビが見たことも無い形状のアクマに頭を攻撃をされようとしていた。いくらミランダのイノセンスが発動中だからといっても解除されたらその傷を負うわけで……ブックマンが素早くイノセンスを発動してアクマの全身を針で覆い尽くす。
「題名…「なぜトドメをささない?」」
「トドメを刺すその前に二、三質問があるのだ。 貴様どこから来た?」
「題名「エシは日本人絵師の魂から作られた」」
「海のド真ん中で人間を狩りに来たワケではあるまい。伯爵の命令か?」
「フ…クロス・マリアンの情報が聞きたいのか?」
クロスの名前が出た瞬間ピクリと反応する身体。こいつ……クロスが今どこにいるのか何をしているのか知っているの?なら、クロス部隊としてクロスの弟子としてその情報を絞り出してやるといき込んだそれとほぼ同時に針だらけのアクマがそのままブックマンの腕を歯で噛み上空まで高く飛ぶ。その後をラビがじじい!!と叫んで焦って追いかけた。
「ラビ…!ブックマン…!」
「イザベル任せて」
「リナリー!」
空を飛ぶことができない私は下から見上げることしか出来なかったけど、もう吹っ切ることが出来たのかいつもの顔でやってきたリナリーがイノセンスを発動して空を飛ぶ。私はリナリーにラビを託した。あの2人が太刀打ちできないつまりレベル2じゃない3だと思われるアクマに何もできない私は見上げることしか出来なかった。だから見上げてみんなの無事を祈っていたら少し離れた場所からキラリと雲の隙間から何かが光ったのが見えた。もしかして…!
「みんな逃げて!!!」
だけど、そう叫んだ時には時既に遅し。無数の弾丸が船へと落ちた。その弾丸が避けられずに周りの船員さん達が次々と当たっていく。その様子に胸がグサリと釘で打たれたような感覚になる。私がもう少し早く気付けたらもっとみんなを巻き込まずに行けたのに……私達のわがままに巻き込ませて死なせてしまう。だけど、今は過ぎたことを後悔するよりもまだ攻撃を受けてない人達や仲間を守らなくちゃいけない。だから私は寄生型ではないミランダが心配でミランダの元へと駆け寄る。
「ミランダ!」
「大丈夫です!エクソシストさんは無事です!」
「でもっ、あなたたちが!」
「わしら死亡決定組です」
「……そうですか。ミランダをお願いします」
ミランダは無数の弾丸が落ちる中大勢の船員さん達に守られていた。彼らは既に亡くなっている方達みたいで申し訳なさと悔しさを感じながらミランダを守ってくれた事のお礼とこれからも守ってくださいとお願いして頭上の雲を見る。他の船員さんを守りながらどうやってあの雲に隠れてるアクマを破壊するかを考える。あと、あそこまで行く方法もね。
「イザベル!」
「ラビ!ブックマン!リナリーは!?」
「1人であのアクマに」
「1人で戦わせてるの!?」
「後で追いつくって…それに船が攻撃されていたのを見てお前らだけじゃ無理だろ」
確かにラビの言う通りだがいくらリナリーとはいえ女の子1人で未知のレベル3と戦わせているラビに若干の怒りを覚えつつ私では加勢できないので文句は言えない。ラビのイノセンスに乗せてもらい船上空にあるミランダのイノセンスを守っているクロウリーと合流した。
「天針加護の針。東ノ罪!!! 盤は私にまかせろお前達は上空の敵を討て!」
そのお言葉に甘えてラビが天判を発動して、クロウリーがその威力を格上げさせる。それと同時に私もイノセンスの技を一緒に放ったけども、アクマからの攻撃は止むことがなかった。それに対してクロウリーがラビに怒りの矛先を向け、ラビも当てずっぽうだったからなと答える。いや、当てずっぽうだったのかい…私はちゃんと狙いがあるのかと思ったから任せたのに。雲の中で動き回られるのでラビも狙いが定めにくいと話した。それには同感し、どうしようかと考えていたんだけど。
「地震?」
「深海の上でなんで…!」
次から次へと何かが起きるんだから!突然の原因が不明の地震に不安を感じながらも揺れていては何も出来ないのでおさまるのを待つしかないと思った瞬間、船がぐらりと傾く。船が沈む!
「どうして…!?時間回復はまだ正常に作動してるはずなのに…っ!?」
ミランダの叫びが聞こえてミランダを見下ろすと彼女のイノセンスに何か鎖のようなものが巻き付けられている。その鎖に触れると電気が走るようで取り外すことが出来ない…あれはあのリナリーと戦っているアクマの能力に間違いないのでリナリーがアクマを倒してくれるのを待つしかないって事か……ごめんねリナリー…任せっきりで申し訳ないけどお願いアクマを倒して。私もこの状況に耐えながら雲の上のアクマを倒すの頑張るよ。
「あへっ」
「その気合いのない顔は何さクロちゃん」
「血が足りなくなってきたであるぅ…力が…」
沈みそうになっている船に必死にしがみついていたらクロウリーが変な声を出したので見てみるとクロウリーが干からびていてまるでおじいちゃん…その姿にギョッとしラビが突っ込んだ。血が足りないのか…今アクマは雲の上か海上にいるのだけ。直ぐに調達はできない距離にいる。
「こんな状況でそんな疲れることやめてくれ!!!」
「エ、エリアーデが見える…」
「クロウリーしっかりしてよ!!!」
クロウリーは本当にこのメンバーの最年長なのかを疑いたくなる。まあ、仲間になったときからそれは感じてたんだけど?大変な状況だっていうのになんかギャグ展開になったんだけど…まあ最近ピリピリした戦いばっかりだったから癒し展開?って考えればいっか。
「くっそぉ!!しつこく撃ってきやが…っ」
「っラビ!!!」
私達がこんな状況だからこそアクマが見逃す訳がなく…ここぞとばかりに無数の弾丸を放ってくるアクマに対して攻撃をしかけようとしたラビの肩をアクマの弾丸が貫いた。そしてその反動で海へと落ちていく。その後をクロウリーが追って海へと落ちていく。ラビがアクマの弾丸に当たった…寄生型ではないラビが。私の顔は真っ青になっていく。ラビは死んじゃうの…?
「ゲホッゴホッ」
「!ラビ…」
ラビが死んじゃうかもしれないと思っていたら、クロウリーがラビを抱えて戻ってきた。ちゃんと呼吸をしているからホッとした。けど、アクマに撃たれた所は大丈夫なの…?
「あれ…?オレ撃たれ………っ?」
「ふぅ生き返った」
そういえばさっきまで干からびたおじいちゃんみたいになっていたクロウリーがイノセンス発動中のクロウリーに戻っている…!そして、撃たれたラビの首筋には2つの穴が空いていてそこから血が流れている。それで何をしたのか直ぐに分かってラビが死なない嬉しさに思わず泣いて抱きつく。
「良かった私は…!ラビが死ぬかと思った…」
「心配かけたさ」
よしよしと頭を撫でられあやされる。その間にクロウリーがラビにどうしたのかを説明している。その衝撃的な真実により私をあやしていた手が止まりガーンとショックを受けたみたい。……どんまい!今度は私がよしよしとあやすとラビは泣きついてきた。形勢逆転してどうするよ。
「馬鹿もんお前らいつまでグズグズやっとるか!!! さっさと敵を倒さんかボケ!!このグズが!!!」
「ブックマンお怒りだわ」
「なぜ「木判」を使わんのだラビ!!」
「そっか…その手があったさ。うわオレって何てバカなんかな」
うっわハズと頭をぽりぽりとかきながら言っているラビに追い打ちをかけるかの如くブックマンがド馬鹿と怒るのはもう見慣れた光景だよね。それに対して言い過ぎだぞパンダと返す仲良き師弟関係。その様子を微笑ましく見ていたらラビが私とクロウリーに耳を貸してと言われたので大人しく耳を貸すと作戦を伝えられる。おーなるほどなるほど。私はいい作戦だと思うけどクロウリーは不安定な足場ってことで躊躇しているみたい。
「できなきゃこのままポッチャンさ」
「はっそんな無様な死など! ああリナリーが戻ってきた時船が無いんじゃカッコつかねェ」
「ふんばろうぜっ」
「リナリーのためにね!」
私達がラビが考えた作戦を決行しようといき込んだ時、突然沈みかけていた船が浮上した。なんで?どうして?疑問がみんなの頭に浮かんだけどもそれはそれで好都合。ブックマンが叩き堕とせと叫びそれに反応したラビが自然現象に影響を及ぼす木判を発動し雲をどかせる。その間にクロウリーがアクマの位置を確認してクロウリーと私は地面を蹴ってラビの元へ行き座標を伝えると行ってこいという言葉と共にアクマの元へと飛ばしてくれた。
「何か今来なかった?」
「はぁ〜〜? なぁ〜〜〜あっちのLv2が何か来てねってよ?」
「ん〜〜?「何か」ってナ〜ニ〜?」
何?そういったアクマの上に立つ私達。他のアクマは私達の存在に気付いて驚きの声をあげてそれによって踏み台にしているアクマも存在に気づいた。どんだけ鈍いんだよ……というより私達が悩まされていた雲の上からの攻撃はたった3体のアクマに翻弄されていたのかと思うと、その攻撃で沢山亡くなった船員さんたちに申し訳ない。
「なんだ…!?ボディが…おかしいぞ…っ」
お、効果が出てきたみたいね。アクマ3体のうち2体にクロウリーの血を残りの1体に私のイノセンスで切りつけた。私のイノセンスの技の中に私が刀を鞘に収めるまでじわじわと傷を負っていく技がある。ちなみに鞘に収めると一瞬で傷が侵食する。
「一気に体液を飲み干してやりたいところだが貴様らは私の連れを殺しすぎた。その代価同等の死をもって償え」
それは私も同じ気持ち。クロウリーはイノセンス発動中は気性荒いし口も悪いけど中身の優しい性格は変わっていないみたい。そしてクロウリーは話し出した。自分の血は神に侵されている。だからアクマにとっては毒だろうって。その証にアクマの体にはぶつぶつとアクマにウイルスを感染させられて表れるペンタクルのように棒線がいくつもの丸にくっついているような不思議な形のものが浮かび上がっていく。それは徐々に全身に浮き上がってきたのでもうじき終わりだろう。
「「苦しんで死ね」」
私達は船に戻るために下に落下する。クロウリーが空中で捕まれと言ってきたので素直に近くにあった腕の服を少し掴むとそれじゃあ守れないだろと言われて掴んでいた手を捕まれ引き寄せられ持ち上げられる……お姫様だっこをされた。え、ちょっとクロウリーさん?なんか男前すぎやしませんか?まさかクロウリーにお姫様だっこをされるなんて想像もしていなかったし思っていなかったので慌てるけどうるさいと一蹴されてしまった。いや、あなたさり気なく女の子が憧れる抱き方されたら興奮してしまうよ?された事がないわけ……じゃないけど!もう、まあ、いいや!クロウリーの事だからきっと何も考えてないだろうし。
「紅い…雪?」
「"紅(クリムゾン)"…"血なまぐさい"雪か…いいな」
「……ありがと」
クロウリーにお姫様だっこをされたまま船に無事に着地する。クロウリーの血がアクマを侵食したからだろう砕け散ったアクマの欠片が船に赤い雪のようにぱらぱらと落ちてきている。それに見とれて空を見上げているとバタッていう音とミランダや船員さんたちの悲鳴に近い叫び声に何事かと思って視線を下げるとクロウリーが倒れていてあわあわといつもの如く慌てているミランダの姿……あ、そういえばクロウリー血を貰うどころか逆に出してきたじゃん。貧血か……私もすっかり忘れてた!
「おいっ何だアレ!!」
「!どうしたんですか…?」
「ずっと向こうの海で爆発みてぇな光が…ほら!」
船員さんが遥か向こうの海を指さす。確かに船員さんの言う通り光の柱が立っていた。あれってリナリーが戦ってる方角じゃなかったっけ…?もしかしてリナリーの方も戦いが終わったのかな?希望と不安がせめぎ合う中その光の柱が消えていく。その後、ミランダのイノセンスに巻きついていた触れなかった鎖が弾け飛んだ。つまりそれはあのアクマが破壊された証で私はホッとした。 戦いが終わり、船もちゃんと元の位置に戻ったので船員さん達が慌ただしく動き出す。私はクロウリーの様子を見ながらその様子を耳で聞いていた。リナリー帰って来ないなぁ。
―――――――船は再び江戸へと向かい始めた。
─────---- - - - - - -
prev ◎ next
|