地獄のおしまい


合宿4日目の朝がきた。無事に課題のメニューも決定してたっぷり寝ることができた!集合場所に向かうと課題は抽選で複数の会場に分かれて行われるらしくて確認したら、私とゆうくんはA会場だった。そこには幸平くんとえりなちゃんが見えた。でも、私からは遠かった!残念だなー。




「各自料理を出す準備は出来たな?これより合格条件の説明に入る。まずは…審査員の紹介だ!!」




会場の入口から姿を現したのは、遠月リゾートが提携する食材の生産者とその家族。そして、遠月リゾートの調理部門とサービス部門のスタッフ。それが今回の審査員らしい。




「この課題の合格基準は二つ…生産者のプロと現場のプロ…彼らに認められる発想があるか否か。
そしてもう一つは今から2時間以内に「200食」達成する事!!以上を満たした者を合格とする!
それでは皆様朝食のひとときを存分にお楽しみ下さい。
審査開始!!!」




昨日、えりなちゃんに散々怒られた後にゆうくんに味見をしてもらいながら考えたこの料理。自信しかなくてどれ位の人に楽しんでもらえるか楽しみ!あ!さっそく可愛いお客様がやってきたよー!




「きれい……おねーちゃん!これなーに?」


「なんだと思うー?」


「んーゼリー?」


「ぶっぶー残念!茶碗蒸しだよ」


「えー!茶碗蒸し!?おねーちゃんちょうだい!」


「どうぞー」




可愛い女の子ありがとう!あなたのおかげで可愛らしい騒ぎを聞きつけた人が集まってきた。今のうちに追加分容器を入れて冷やさないと!それをやっているうちに私の前にはたくさんのギャラリーが集まっていた。この様子なら200食達成はすぐだねー。女の子に感謝しなくちゃ!




「薙切アンナ200食達成!」


「ありがとうございます」




じゃ、200食達成したので更なる挑戦を始めますか。まずは300食達成。でー?えりなちゃんと幸平くんはどうかなー?遠くだから分かりにくいけど…んー……幸平くん苦戦してる?オムレツか…なるほどね。それはちょっと難しいかもしれないね。さて、その状況をどう臨機応変に対応していくか。あー近くで見たいなー!




「蓮城ゆう200食達成」


「ふーありがとうございます」




あ、ゆうくんも200食達成した。よし、私もさらに頑張らなくっちゃ!さっきの大量に来てくれたお客様を見て興味を示してくれたみたいで私の品を食べに来てくれるお客様は絶えることなくやってきて、用意していた材料がきれてしまった。冷やしたのももう底をついた。これは続行不可能かな?先生に聞くと終了していいみたいなので後片付けを始める。先生がボソッと私が売った食数を呟いたのが聞こえた!やったー400食達成した!嬉しくてルンルンになりながらゆうくんの様子を見に行くとこちらも大盛況とまではいかないけどお客様は耐えることなくやってきていた。あと三分。幸平くんは追い上げてはきているけどもまだ200食を越えていない…どうなるかな。




「幸平創真200食達成!!」


「終了ー!そこまでだ!!」




おー乗り切ったー!十秒前のギリギリだけどね。お疲れ様を言うためにえりなちゃんに会いに行こうと歩きだしたらなんと!アリスちゃんとばったり遭遇した。従姉妹同士の何かを感じて一緒に行くことになった。(きっと同じ場所に行くのが会話をしなくても分かったのはその何かのせい)




「びっくりだわ!!私てっきり8食くらいで止まってると思ってた!…なのにあんな曲芸で乗り切っちゃうなんてね」


「……あ?」


「でもあんな曲芸頼りの料理じゃ到底てっぺんなんて穫れないわ。必要なのは最先端の理論に基づいたアプローチで構築された仕事例えば…私の料理みたいに、ね――まだ名乗っていなかったわね。私は薙切アリス君たちの頂点に立つ者の名前よ覚えておいて」


「…なきりアリス……薙切ぃ?」


「そう。私とえりなとアンナは従姉妹どうし5歳まで一緒のお屋敷で過ごしていたの」


「やっほー幸平くん。この間ぶり」


「うお!いつのまに!?」


「同じA会場にいたもん」


「そうなのか!」




と、ここでアリスちゃんの側近のリョウくんが走って登場。そこにアリスちゃんはアリスちゃんの生い立ちを話すように言うけどマイペースリョウくんがマイペースに喋っていたらアリスちゃんは怒って結局自分で話してる。なんか私とえりなちゃんを打ち負かして遠月の頂点取るとか言ったけどえりなちゃんと私はばっさり切り捨ていつものプチ口論会が始まる。結局最後は一方的にアリスちゃんが怒ってどっか行った。




「200食を達成した者へ連絡だ!次の課題開始は4時間後それまで休憩時間とする」




アナウンスが終わると一斉に生徒が動き出す。私ものんびりと片付けやら色々していたらいつの間にか4時間を経っていた。その後、また新しい課題を出されてそれもクリアをする。それからも終わっても終わってもやってくる課題をクリアしていく。あっという間に4日目は終わって5日目に突入し、その夕方に突然、ロビー集合とアナウンスがきたのでロビーに向かった。しばらくすると堂島さんがやってくる。




「本題に入る前に一言…現時点で352名の学生が脱落し残る人数は628名…過酷な様だがこれは料理人という食の縮図だ。料理人として生き残るにはありとあらゆる能力・心構えが必要となる――
未知の状況で冷静さを失わず常に食材と対話する。シェフとなれば重圧は尚のこと…不安と逡巡に苛まれる夜を耐えぬき多様な事態に対応し立ち向かっていかなければならない」




途中から思ったけど、意外と生き残ってる子が多い事に驚き。結構ハードだしついていけない子いっぱいみたからもっといるのかと思ったけど…それなりに実力がある子が揃ってるってわけかなー?




「だが忘れないでいてほしいこの遠月という場所で同じ荒野に足跡を刻む仲間と共に在ったことを。その事実こそがやがて一人征く君を励ますだろう。君らの武運を心より祈っている!では…この合宿の最後のプログラムを始めよう」




さっきまで堂島さんの言葉でキラキラと輝いていた夢に満ちていた顔が一気に絶望に変わっていく生徒たち。だけど、扉が開くと煌びやかな光があらわれた。




「ようこそ!!」


「ここまで生き残った628名の諸君に告ぐ…宿泊研修の全課題クリアおめでとう!!最後のプログラムとは合宿終了を祝うささやかな宴の席だ。存分に楽しんでくれ…!」




その言葉で生徒が嬉しさのあまりやったああと叫びはじめる。ふーなんとか終わったー!しかも、最後が豪華な食事の席!楽しみだー!




「今から君らには卒業生達の料理で組んだフルコースを味わって頂く!」




これは、最高に幸せだね…!卒業生の料理が食べられるなんて。珍しくゆうくんも瞳を輝かせていて嬉しそう。卒業生の方の料理で組んだフルコースなんてタダで食べれないもんね!私達は幸せな気持ちでそれを堪能し、次の日の朝に無事に遠月学園へと帰宅した。これで、宿泊研修全ての課題が終了した。


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