秋の選抜


「……え?なんて言ったの?えりなちゃん」


「だから、あなたは「秋の選抜」に出場できないの」


「な、なんで……?」


「先日の議会であなたは十傑として裏方に回ると決まったのよ」


「アンナ姫泣かないでください!」




ゆうくんが隣で唸り始めて(うわあああ泣きそうな顔可愛いとか悶えていた)それが気になるけど、それよりもどうして出れないのかが疑問でしょうがない。みんなと戦えるの楽しみにしてたのに…!すっごく誰と同じブロックなのかな!とかワクワクして興奮していた昨日の夜はなんだったのっ!?




「人手が足りなくて運営を手伝って欲しいのよ。それにあなたの実力は充分に分かっているわ…だから今は緋紗子やゆうの実力を見せる時じゃないかしら」


「正論だけど秋の選抜でーたーいー!」


「わがまま言わないで!これは決定です!」


「本当に、だめ、なの……?」




涙目でえりなちゃんを見つめてみる。えりなちゃんはこれに弱いのを私は知っている。第十席であるえりなちゃんはともかく、十傑に在籍していないただの第一席の秘書、手伝いの私がその扱いを受けるのはおかしいもん。理不尽!意味わからない!




「っ……だめなものはだめなのよ!諦めなさい!」


「けち!えりなちゃんのばかー!」




えりなちゃんがだめなら先輩のところへ向かうしかない。きっとどうせそんな提案をしたのは彼だろうし。意味わからない!直訴!というわけで私は先輩の執務室へと走って向かう。




「瑛士先輩!!
秋の選抜出れないってどういうことですか!楽しみにしてたのに……!」


「やっぱり来たね……アンナ」


「はい」




バン!っと私と瑛士先輩を挟む机に手を叩きそうになるのを抑えて机の前に不満たっぷりの顔で瑛士先輩を見下ろし立った。そして瑛士先輩が立ち上がったと思ったら机に片手を起き体重を前方にかけて机越しに私の両頬を片手で優しくつぶされる。思わず声がもれる。




「そう拗ねる事はない。アンナにもちゃんと十傑としての仕事をわけてある」


「なんのでふかー……」


「試合実況をアンナに頼みたいんだ」




瑛士先輩がそう言うと手を離してくれた。でも、笑いを堪えているのが見えて無性に殴りたくなったのは秘密。先輩だけどそこは容赦しない。それよりも、




「試合実況って……いましたよねーたしか専属でやっていた子が…」


「……ああ、女子生徒からクレームが多くて…流石に全部とはいかないけど予選と本戦の一部を頼みたいんだ」


「クレームですかーわからなくもないですねー」


「…たまに毒はくよねアンナ」


「そういう性格なんですー」


「試合実況の件だが、叡山も納得しているし他の十傑もアンナの秋の選抜除外は賛成している」


「どうしてですかー!」




十傑が賛成してるー?なんで!絶対そういうの反対しそうな人私知ってるけど!?出たくて出たくてうずうずしてたのにー!納得いかない!




「お前の実力は全員が分かっている。もちろん、秋の選抜に出るには充分だ……だが、今回は裏方に回りまだ隠されている実力者がその実力を披露できる機会を増やして欲しい」


「……意地悪ですねー…そう言ったら私がひくのを分かってる」


「アンナは意外と負けず嫌いで上のものに褒められれば分かりやすく照れるからね」


「さり気なく自分が私より上だって言うのやめてもらいますかー?」


「事実だろ」


「いつか絶対勝ちますから」


「ふっそうか」




いつの間にか前かがみになっていて瑛士先輩が近い。そして頭を撫でられた。さっきからすごく上から目線。今も負けてたまるかみたいな顔をしてるもん。いつか絶対勝つ!




「今回は、しょうがないので試合実況引き受けます!十傑のみんな絶対許しませんから!ゆうくん行くよ」




勢いで瑛士先輩の部屋から出て校舎の外へと出てきた。先輩をおることができなかったのが悔しい!でもそれよりも、ショック。あーあ暇になりそうだな。秋の選抜中は。





「あー参加できないのか……」


「私は賛成です。はっきり言って誰も姫の足元にも及んでいない。姫の優勝は決まったも同然……姫が望むワクワクした試合をするにはまだ実力が伴っていないかと。私もですが」


「……はあ決まったものはしょうがないかーゆうくんの応援に専念するよ」


「ありがとうございます!!」


「と、なればゆうくんがどっちのブロックか見に行かないとね」


「はい!」




私達は、もう張り出されているであろう「秋の選抜」の出場者が発表されている広場へと向かう。到着すると既に喜んでいるもの、悲しんでいるもの両方が叫びあっていた。




「えーと蓮城ゆうは……」


「……ありました。Bブロックです」


「あら、アリスちゃんいる!あ、緋沙子ちゃんも!……でも、その前におめでとうゆうくん」


「ありがとうございます。姫の側近に恥じぬような結果を残します」




ゆうくんが私の前で跪いて手の甲を取るとキスを落とす。これはゆうくんが食戟などの大事な時の前に私にしてくれること。曰く忠誠、私は絶対君主を誓うものらしい。




「別に私を気にしなくていいよーゆうくんは充分、いい料理人なんだから」


「!ありがとうございます」


「あらアンナじゃない!それにゆうも」


「……うす」


「アリスちゃん!リョウくんもやっほー!」


「アリス姫、どうも」


「ゆう!同じBブロックみたいね」


「はいよろしくお願いします」


「ええよろしく」




アリスちゃんとゆうくんが微笑みあってる。仲が良くて嬉しい。でも、相変わらずリョウくんを1回も見ないし話しかけない。一方的に嫌悪してるよねー。同じ側近同士緋沙子ちゃんとみたく仲良くなってほしいんだけどなー。




「おっ!薙切の従姉妹の…」


「アラ…幸平創真クン!ごきげんよう」


「アンナだよ!幸平くんやっほー!」


「みなさぁーん」




薙切が3人いるから大変なんだよ!名前を覚えて欲しいなと思っていたら、なんか聞こえてきた。




「こんにちはぁーっ秋の選抜にて司会実況を務めさせていただく…川島麗で――すぅ
選抜入りした方々!本当におめでとうございまぁす!正式な通知は後日送られますが私の方からざぁっと対戦形式を説明させていただきまぁーす!」




秋の選抜に選ばれたのは計60名。それをさらに半分としま30人をAとBに分けてそれぞれで予選を行う。その各ブロックの上位入賞者が本戦トーナメントの出場権を得る。と彼女は言った。




「えーとではここで運営実行委員の叡山先輩から伝言ですぅ
「選抜には多くのVIP…料理界の重鎮がゲストとして訪れる。自分の腕を示す絶好の機会だ。だが、無様な品を晒せばその時点で料理人として成り上がる未来が消滅する事もある。ま、せいぜい頑張れや」
…以上でぇす」




彼女は去っていった。それにしても叡山先輩は相変わらずだなあ。憎たらしい。おっと、口が滑った。いけないいけない。




「薙切が選抜に出ない?」


「そう「秋の選抜」は毎年遠月十傑によって取り仕切られる…つまりえりなは祭典を運営する立場にあるの。それは納得できるわ…でもどうしてアンナが出ないのよ!!」


「!そうなのか?」


「え!?あ、ああ……私もなぜか十傑扱いになっててねー不本意ながら出られないの…これでも掛け合ったからね!」


「おまえ十傑なのか?」


「アンナだよ!幸平くん。違うよ?私は十傑の第一席の補佐役をやってるの。まあー秘書みたいなもの。だから十傑じゃないよ」


「へー」


「もう!せっかくアンナと勝負できると思ったのに!」


「ごめんね。アリスちゃん……勝負はおあずけ」




幸平くんもだけどね。さーてこれから裏方として頑張りますか。もう、こうなったら諦めて自分の仕事を全うするよ。


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